ソノマの暮らしブログ

カリフォルニア州ソノマに住んで25年。第二の故郷と決めた美しいワインカントリーで、ワインを追いかけて暮らしています。

古い樹と私の手

最近のアメリカはカリフォルニアも例外なく、そしてソノマもコロナの感染率が急増、一向に減る様子がありません。カリフォルニアは夜の10時から朝の5時まで外出禁止令が出てしまいました。

11月26日は感謝祭。何十年も親友のカップル宅で13人ほどで感謝祭を祝っていたのですが、今年は家族だけで食事をしました

私の暮らしは3月と同じ。外出を控えて、知り合いのカップルと庭で2メートリ離れて「ハピーアワー」と称してワイン飲みながらだべるのが2週間に一度くらい。

最近の楽しみは街に作られている散歩道をミュジックを聞きながら1時間ほど歩くことくらいです(ため息)

散歩道の入り口に大きなカシの木があります。

葉が落ちた裸木に関心が向いたのは昨年の冬。年輪を重ねて優雅に曲がっている枝を眺めて、葉が落ちた木って美しいものだなって思いました。

今まで、葉が覆っている木の形を見て、木々の美しさを楽しんでいたのですが、裸の木々の美しさを発見してその美しさを楽しみながら散歩をしたものです。

古い木の凜とした姿になんか惹かれるものがあります。

年を重ねてきたごつごつとして曲がっている枝に見とれていて、ふと私の手に思いが行きました。なんせ考える時間がたっぷりあるので(苦笑)

ある夏に札幌で先輩とランチをしてました。

「その手どうしたの?」突然、先輩が聞きました。

「どうしたのって言われても、、、」

私の手の指は関節が太くなって、両手の人差し指と中指がちょっと曲がっているのです。

色々と理由を考えました。

「よく働いた人の手だね」と他の友人が言ったのを思い出しました。

アメリカの器具は、掃除機とか鍋など、全て大きいので、力が必要で日本人の手(私の手)には扱いにくくて、手がごつごつになってしまったのかもしれないと思いました。

娘に話したら、「そうじゃなくて、関節炎でしょう」と言われました。

速記官時代に速記タイプを打つときに、キーを叩いて打ってました。それが癖になって、コンピューターのキーボードも気がつくと叩いています。その上、早く打つために人差し指と中指だけを使って叩くので、指が曲がってしまったのかと思います。

関節炎だというのが正しいでしょう。正確には変形性指関節症(自己診断)だと思います。

ボトルをオープンするのが苦痛なのも関節炎のせいなのでしょう、幸いにもこの国は男性がさっとボトルをオープンしてくれるので、不自由はありません(笑)

父親に指が曲がってしまった話をしたら、「完全に曲がったら痛みが取れる」」と教えてくれました。父も指が曲がってたんだと気がつきました。もしかして遺伝?

関節が大きくなって指輪が似合わない手になってしまいました。

でも指輪が似合わなくなってしまったと嘆くのじゃなくて、好きな指輪をはめて(小指にしか入らない指輪もあるけれど)、シワシワでごつごつとした手をいとしむことにしました。

速記タイプ、原稿を書くときに叩くように打つコンピューターのキー、、、。

本当に頑張ってくれた手です。

長い間よく働いてくれてありがとう。これからも酷使するけどよろしくね。

古樹の曲がった枝、歴史を刻んで凜とした枝のように、ごっつくなってしまった手を誇りにしましょう。

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投票に11時間並びますか?

選挙の投票に11時間並んだというのは極端な例ですが、アメリカの激戦地(共和党が強い州)では、期日前投票に投票者たちは数時間並んでると報道されています。

日本の選挙で、長時間並んだというケースはないですよね。私は、あまりに長い列だったら、投票しないで帰ってしまうかもしれません。

長い列を辛抱強く待っている投票者の多くがアフリカ系アメリカ人です。

アフリカ系アメリカ人差別で有名なジョージア州では投票会場がオープンになる前に、多くの人が並んでいたそうです。有権者抑圧の長い歴史があるジョージア州では、長ーい列を作って何時間も待っても投票をするというのは、この選挙だけではありません。中西部、南部の共和党が強い州、例えばオハイオ州とかヴァージニア州も同じです。

共和党が主導権を握ってきた州は、有権者の抑圧(アフリカ系アメリカ人)を様々な形で行ってきた長い歴史があります。その抑圧を跳ね返して何時間かかっても投票するという決意に心打たれます。

「投票に魂を」のスローガンがブラックコミュニティのスローガンとしてツイートされています。

ジョージア州アトランタ市の黒人女性市長は、黒人差別反対に一生をささげた議員、今年の7月にがんで亡くなってしまったジョン・ルイス議員の言葉「投票は我々が持っている最もパワフルな非暴力の道具だ」という言葉をツイートしています。

今回の選挙では、アフリカ系アメリカ人に加えて低所得者層の人たちが、例年よりもずうっと多く、期日前投票に長い列を作って投票しています。コロナ感染を避けるために、11月3日の選挙日の混乱を避けて、なるべく混んでいないときに投票しようという意思です。

今回の選挙の期日前投票の長い列は、有権者の熱意を示しているということに加えて、投票を抑圧するために意図的に複雑に設置されたプロセスの結果でもあります。

私は10月20日に郵便局に予め郵送されていた投票用紙を投函してきました。

アメリカの投票日は11月3日ですが、オーソドックスに投票日に投票するのに加えて、期日前に投票する方法を選ぶことができます。

1.投票日前に郵便で送る。

2.期日前に設置されている投票用紙投函ボックスに入れる。

3.期日前投票をする。(州によって設定された日が違いますが、選挙当日と同じように投票場へ行って投票します)。

ちなみにアメリカでは投票用紙を受け取るためには登録しなければなりません。カリフォルニア州は民主党支持か、共和党支持か、独立か、を記載しなければなりません。これも州によって違うのです。細かい選挙システムは、州、さらに管轄地区が決めるという、本当に複雑な国です。

コロナウイルスの感染を避けるために特にカリフォルニアは郵便で投票することを進めています。これも州によって違うんですよね。

大統領とか議員候補者に印をつけるのは簡単なんだけど、カリフォルニアのproposition(私訳:規則の提案)が12,私が住むソノマの地区では local ballot measure(私訳:地方の投票による法案)が3あって、賛成か不賛成かを表記しなければなりません。TVで賛成派、反対派のCMが流れるのですが、判断が難しいです。法案の説明をした小冊子が送られてきます。カリフォルニアはとっても親切で、英語のほかに私の場合は日本語の小冊子も送られてきました。でも日本語のほうが難しいのです(苦笑)。英語も、娘曰く「弁護士でなきゃわかりにくいよね」というくらい、完全に読み込もうとすると難しいです。新聞の意見、「規則のサポートはどんな組織がしているのかを見るように」という娘のアドバイスで、なんとか理解できたかと思います。日本語はpropositionは州民発案法案と訳されていて、言い回しがややこしくて油が切れ始めている私の脳みそには、ピンと入ってこなくて、読むのを諦めました(涙)。

今年はコロナウイルス感染を避けるために郵便による投票を民主党は奨励しました。郵便による投票だと投票場まで行く車がない人や働いていて時間が取れない人などの多くは民主党に投票します。すると裕福な白人が対象の共和党は不利になります。歴史上、いろんな形で選挙の抑圧をして共和党支持州(レッドステート)として守ってきたのが、危うくなります。郵便による投票だと投票抑圧が困難です。いろんな方法で投票するのをくじけさせようとしていますが、例えばテキサス州では投函ボックスを民主党支持者が多い広大な管理地区に一個しか設置しないと州知事が決めたり、他州では郵便箱を年除いてしまったりと、あまりにもあからさまなので啞然としてしまいました。

レッドステートの様々な投票抑圧対策に反対して民主党が裁判所に訴える、民主党の選挙権を守る提案に共和党が反対して裁判所に訴える、そして控訴と、訴訟合戦が繰り広げられています。

日本も選挙汚染がありますが、こんなに複雑ではないですよね。

日本でも報道されてるかと思いますが、トランプ大統領が選挙制度の正当性を疑わせようと、いろんな発言や策略をしてます。アメリカの有権者は何とかして自分の一票が有効になる投票方法を模索していて、その現象の一つとしてコロナ感染を覚悟で期日前投票を選んでいるのだと思います。

すごい決意ですが、決して暗いムードではなくて、ボランティアが「デモクラシーをおいしくするピザ」と銘打って、並んでいる人たちにフリーで、ピザを配達している地区もあります。

今回の選挙では期日前投票者が圧倒的に多くて、5000万人がすでに投票したと報道されています。

11月3日前後に異常事態が起こらずに、選挙が無事に終わることを祈るばかりです。

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ナパの星付きレストラン繁盛,二つのカリフォルニア物語

カリフォルニアは外出禁止令、外出自粛令が出てから6ヶ月。

カウンティの感染率によってビジネス関係の禁止令が緩和されつつあるという状況です。

コロナ、猛暑、大規模な山火事、そして煙で太陽がオレンジ色に見える日々が続きました。

ようやく青空が見えて、空気汚染も最悪を乗り切りました。

と書いたのですが、9月28日、現在、またしてもナパのセントヘレナの東にある山が火事になって、避難命令が出ている地区があります。火がソノマまでやってきて、ソノマの一定の地区も燃えています(溜息)。

山火事、異常高温で停電、煙汚染がコロナに重なったのだから、どこかへ逃げたーい!の強い欲求は無理もないですよね。

この状況から少しの時間でも逃れたいと、サンフランシスコ近辺のお金持ちがナパへやってきます。

ナパのセントヘレナ市のハウエルマウンテンの麓にひっそりと立っている豪華なリゾートホテルとレストラン、メドウッド(ミシェラン3星)は9月半ばの土曜日(猛暑、停電、煙汚染真っ最中)のウエイティングリストはなんと140人だったとのことです。室内のテーブルは12席、テイスティングメニューはお一人様$360。(*9月28日現在、山火事発生のためメッドウッドは避難命令が出ていますが、焼けてしまうことは避けることができたようです)。

ナパは感染率が低くなったので、室内での飲食が許可されています。でも収容可能人数の25%のみで営業しなければなりません。それでも高級レストランはオープンするメリットがあるということです。

よく知られているレストラン、フレンチランドリーでは、室内で食事ができるのは15席(通常は60席)です。お一人様$850のスペシャルテイスティングメニューは以前よりももっと早くに売り切れるそうです。ちなみにテラスでのディナーはお一人様$350。

ナパのウエスティン ホテルにあるラ・トーク(La Toque)も大繁盛。ベイエリア(基本的にサンフランシスコ周辺)の住民はミニヴァケーションだとして、ホテルにチェックインしてディナーを楽しむ人が結構いるとのこと。

サンフランシスコにはたくさんのミシェランの星付きレストランがありますが、ナパのように大繁盛ということはなさそうです。まず室内での飲食がまだ許可されていません(もうじき許可になるようです)。それにサンフランシスコの夏は涼しい日が多くて、外でのディナーは難しいため、高級レストランは閉店しているところが多いです。「今年はミシェランの星をもらってもねー、お客さんは来ないんだから、、、」という声も聞きますが、無理もないですよね。

サンフランシスコの高級レストランによっては特別のプラスチックのバブルを作って、オープンして、コース$200といったディナーを出しているレストラン、Hashiri とかQuinceといったレストランがありますが、営業状態はどんなものか、わかりません。

お金があれば、ナパで空は真っ青じゃなくても、手入れの行き届いた庭の緑に囲まれて、素晴らしいサービスを受けて美味しい食事を楽しんでストレス発散ができますね。

自分で稼いだお金なんだから、どのように使おうが自由です。

ゆったりとディナーを楽しんでいる場面に、フードバンク(連邦政府の補助金と寄付金で食料品を保管して受け取りに来た人たちやコミュニティに食料品を渡す組織)から食料品を受け取るために並んでいる長〜い車の列のテレビの映像が重なります。食料を受け取るのは初めてだという人も多いと報道されています。

カリフォルニアの調査会社の発表によると、コロナウイルスに対する心配度は貧困層とカラード(非白人)層は高く、白人層はすごく心配しているという率は低いと報告されています。

コロナが発生した初期からカリフォルニアだけではなく、全米でアフリカ系アメリカ人とラテン系のコミュニティに多くの感染者が出てます。

カラード(非白人)のコミュニティの人達と低所得層の人たちは、人と接触する仕事の多くを担っていることから、感染するかもしれないという危機感が、当然、非常に高いです。

カリフォルニアの全体では感染して入院する危険を強く感じている率は28%ですが、細かく見ると年間所得が4万ドル(約422万円)以下の層で危機感を感じる率は34%と高くなっています。さらにアフリカンアメリカンでは48%、ラテン系の人たちは39%と高くなっています。

それに対して年間所得が8万ドル(約844万円)以上の裕福層はたったの17%が危機感を感じると答えています。裕福層の多くの人たちはオンラインで自宅勤務で仕事を続けているので収入には影響がありません。自宅で仕事ができるので、ソノマやタホ(スキーと湖がある別荘が多い町)に家を買って住み始めた人が増えて、家の価格が高騰しているため、貸していた家を売る家屋所有者が多くなって、借りていた人たちは安い賃貸家屋を探すのに苦労しているという現象が起きています。ソノマに住む女友達の地区では現金で家を買っている人があちこちにいると話してました。

コロナが発生して経済活動が制限されて6カ月が経った時点で、個人としての経済状況が良くなったと答えている人は全体的には46%という数字ですが、年間所得が4万ドル(約422万円)以下の層は良くなったと答えている人は22%,アフリカ系アメリカ人は32%、ラテン系の人たちは29%と少ないです。

年間所得が8万ドル(約844万円)以上の富裕層の70%が経済状況は非常い良いと答えています。

私が住むソノマも例外ではありません。メキシコ人の女性はコロナ前は数家庭の掃除をする仕事をしていたのですが、コロナの影響で仕事を失ってしまいました。知人からサンフランシスコに住む女性がソノマの別荘の掃除をする人を探しているというのを聞いて応募しました。採用されて早速仕事を始めたのですが、そのサンフランシスコの女性からコロナを感染してしまいました。健康保険も持っていなくて、もしかしたら違法移民かもしれないメキシコの女性は、コロナに感染したと伝えたら、もう来なくてもいいといわれて、1日40ドル(約4220円)の支払いもされなかったということです。

彼女が住むラテン系の人が多い地区では、コロナに感染して仕事を失うと生活できなくなることから、感染を隠して仕事を続けている人も少なくないと話しています。

所得と人種が絡んで二つのカリフォルニアが存在しています。コロナの感染率は貧困層と富裕層の所得の格差と人種に深く関係していることが浮き彫りになりました。

カリフォルニアには二つの物語があるということですね。

それにしても、またしても太陽がお月さまのように丸くてオレンジ色になっています。

カリフォルニアの新しいノーマル!気が休まりません。

*各サイトの写真を使わせていただきました。

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