ソノマの暮らしブログ

カリフォルニア州ソノマに住んで25年。第二の故郷と決めた美しいワインカントリーで、ワインを追いかけて暮らしています。

ルーマニア

 

 

5月中旬に1週間ほどルーマニアに行ってきました。

友人たち全員に「なぜルーマニア?」って聞かれました。

答えは「知らない国だから」

ルーマニアは悪くなかったです。それに物価が安い。ワイン1本が12ドル以下(120ドルじゃない!)。私が住んでいるサンフランシスコ周辺の異常な物価高の土地からやってきたら、物価がものすごく安くてショック。タクシーも15分ほど走っても2ドルほど。渋滞がすさまじいので、歩くと10分ほどの距離に20分はかかってました。空港まで40分が10ドルほど。あまりの安さに夫は感激して、チップを大判振る舞い。

街はとっても清潔でした。もっともブカレストの中心地だけを歩き回ったので、街のはずれの様子はわかりませんが。

街行く人々、ホテルやレストランで交わる人々から独裁者支配の影を帯びた表情は見えませんでした。控えめな態度と道行く人々は目を合わせないところに、独裁政権時代の面影を感じました。私たちにとって嬉しかったのは、アメリカ人も日本人もほとんどやってこない国にもかかわらず、珍しそうにジロジロと見つめる人が全くいなかったことです。人と目を合わせない、目を伏せてすっとすれ違うという感じなのです。

東ヨーロッパのリトルパリをイメージして作られた家と町並みに、独裁者が瀟洒な建物を壊して、ソ連を模倣して建てたという灰色の醜い建物(アパート)が所々に残っていました。当時の住民たちはこのアパートに強制的に移動させられて、抵抗したために行方不明になったり、自殺した人も多かったということです。

パリを彷彿とさせる建物があちこちに見られて、アルゼンチンのブエノスアイレスやハンガリアのブタペストを思い出しました。

 

特にオールドタウンと呼ばれる地区は豪勢できらびやかさ、荘厳さをたたえた建物が修復保存されていました。古い町並みの石畳の道を歩くと豊かな文化を誇っていた時代を思い起こされて素敵でした。私はやっぱりヨーロッパが好き。

コーヒーがとっても美味しいので感激。駅の構内にもあちこちにコーヒー販売機があって、味わいはエスプレッソに近いのです。ワイン生産の歴史も長く(資本が入れば、もっと良いワインが出来る可能性が大きい)コーヒー文化、飲食文化がしっかりと存在してました。

東ヨーロッパらしく、煮込んだ料理が多かったです。スープはどのレウトランでもコンソメなどは使わずに煮込んで作ってありました。

歴史

この国について記憶しているのは、独裁者ニコラエ・チャウシェスクとその妻が逃亡先で捕まって、銃殺された映像がテレビで報道されたことです。1989年のことです。

ややこしくて長い歴史を経て今のルーマニアがあります。1861年(江戸時代末期)にオスマン帝国宗王下自治国としての連合公国(ルーマニア公国)が成立します。1878年にルーマニア王国が成立。

第一次世界大戦、第二次大戦と紆余曲折を経て、ソ連軍の圧力により1947年にルーマニア人民共和国となりました。そして一国共産主義を唱えるニコラエ・チャウシェスクの独裁政権が牛耳っていて、1989年に銃殺(革命)されるまで続いていました。

現在はNATO(2004年)そしてEU(2007年から)に加盟して、共和制国家となっています。

インターネットはすごく進んでいて、電車の切符もオンラインで買うことが出来ました。でも駅とか列車は旧態依然。まだまだちぐはぐ。ヨーロッパの国々が経済進出を狙って入り込んでいるので、インターネット等は普及したけれど、それを埋める政治が追いついていないようです。

全く異なる二つの政権下で暮らしたのですから、当然だと思いますが、親と子の断層が広がっていて、親子のコミュニケーションはないとガイドの一人は言ってました。

 

ルーマニアへ行こうと提案されてサイトで調べたら、スリ、警察(偽警察も)が賄賂を要求する、野犬がたくさんいる、タクシーは高額をせびると書かれていました。不安になって何度もやめようかと思いました。でも夫はそんなのはパリでもローマでも同じだよと、平然としてました。どこの国へ行っても基本的な用心が必要だということなんですね。

行ってみたら、そういった被害は被りませんでした。そういう記事が書かれたのは2年ほど前で、野犬や警察の賄賂要求には遭遇せず、観光シーズンじゃなかったせいか、すりの被害も受けませんでした。タクシーはメーターに出る数字を繰り上げして請求するだけで、私たちが利用したタクシーは正直な運転手さんたちでした。もっともシステムがあって、レストランやホテルや空港ならマシンでタクシーを呼んでもらうのが大切。番号が書かれたタクシーがやってきます。流しのタクシーはユーロでとんでもない金額をふっかけてきましたが、どのくらいするかあらかじめ知ってたので、その価格を提示するタクシーに乗りました。日本のサイトではタクシーについて苦情が載ってましたが、日本と違ってメーターに出た金額を繰り上げすることは当然のようです。その額たるやドルだと50セント、円だと50円ほどです。

タクシーの運転手は「独裁時代は恐怖はあったけれど、1日8時間働いたら、給料がもらえて医療も教育費も只だった。今は1日12時間勤務して教育費も医療も自分で払わなければならない。土曜日も働かなくちゃならない。それに警察の汚職もひどい」と疲れた表情で話してました。でもこれはノスタルジアで、決して恐怖の独裁政治時代に戻りたいとは思ってないでしょう。

ホテルで親しくなった勤勉な従業員も「恐怖がなくなったけれど、政府の汚職がひどくて、、」と顔をしかめてました。政治腐敗と金持ちだけが裕福、中間層はせっせと働かなければならないという国は多いですよね。アメリカも程度の差はあっても、その傾向があります。

でも国民は頑張ってます。今年の1月に政府が汚職で逮捕されて刑務所に入っている人たちを釈放して、政権の悪用を認める法律が可決されたことに怒って、全国で60万人が反対デモを繰り広げて、この法律を撤回させています。

まだ豊かな国とは言えません。国民が裕福に暮らせる日まで年月がかかるかもしれませんが、道行く若者の表情は明るかったです。彼たちが暮らしやすい近代国家を作る原動力になるってくれればいいなと思います。

あと5年、10年後は、EU加入国として発展を遂げていることでしょう。

尻込みせずに行ってみてよかったです

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1811 ヒット

人生の局面

このところ雨が降ったかと思うと夏のような日がやってきて、また雨が降るという、10日間に夏、春、冬がやってくるという不思議な天気が続いています。今日も雨です。明日からは20-25,6度まで気温が上がるという予報で、ようやく春、初夏の気候パターンになるのかもと期待してます。

思うところがあって、「人生の局面」と題するミーティングに参加してみました。

こういうミーティングは初めてなので、恐る恐るドアを開けたら参加者の男性の一人が「入ってください。煮たり食ったりしませんから」と声をかけてくれたので、ほっとして中に入りました。

60年代、70年代初めの男女(半々くらい)が10人ほどサークルになった椅子に静かに座ってました。日本人(アジア人)は私だけ。アドバイスをする女性が一人加わっています。

ルールは相手を非難したり否定的なことを指摘しないことでした。

参加の理由は万国共通

退職をして自分を失ってしまい、うつ病に悩んでいる人。

精神障害を抱えた子供を必死で育てて来て、その子が独り立ちした後、何をしたらいいのか、自分は何者なのかと考え出して、呆然としている人。

自分と対面するのが怖くてとにかくプランを持って忙しく暮らさなければ気が済まない人(時間を経て、彼女はすごく孤独だと告白しました)

妻が痴呆症の人

両親を亡くした人。めんどうを見て送り届けた後、落ち込んでしまった人。

この年代になると対面しなければならない状況は、国境を越えてますね。

体力の衰えを認識して、今、抱えている問題や悩みを話し合って、これからの人生を充実させたいと誠実に自分を見つめている人たちでした。

 

朝起きるや否や、あれもこれもと用事をこなして、お嬢さんを育て上げて、彼女が独り立ちしたときに、自分は何者なのか、そして60歳になっていたことにショックを受けてうつ状態になってしまった女性は、今、自分探しのために、毎朝、60分瞑想をしているそうです。

何もしない自分に慣れてきて、それを心地よいと思えるようになったと静かに話します。

朝食を作るのもやめたら、ご主人が自然と朝食を作るようになったといいます。

娘さんが遊びに来て「ママはストライキしてるの?」と聞いたそうで、「イエス、肯定的なストライクをしてるの」と答えたら、娘さんは納得したそうです。

「ストライキをしたら、どんな気持ちですか?」とアドバイスの女性。

「とっても平穏な気持ちです。娘もそんな私がいいと言ってくれて、二人で抱き合って泣きました」と答えてました。

「今まで自分を見つめることなく人のためばかり生きてきたけれど、これからは自分が何をしたいのか、毎日瞑想して感じてきています。どんな未来が待っているか楽しみな気持ちが湧いてきました」と微笑んでました。

毎日びっちり計画を立てて暮らしているという女性は、「友人知人が何をしてるの?と聞いたときに忙しい自分を見せたいためにやっているだけで虚しい」と話します。。

そして「告白します。私はとっても孤独です。離婚して一人暮らしです。息子の嫁が私のことを嫌って、家族の一員として扱ってくれません」と言い切ってほっとした表情でした。

息子さん夫婦を夕食に誘ったり誕生日のお祝いをしてあげたりしてますか?と、参加した方達が優しく尋ねます。

「そういうのは全てやってみたけれど、だめでした」と孤独感を滲ませて答えました。

「いろんなことをしてあげた見返りを求めるともっと寂しくなりますよ」とアドバイスの女性が一言。

「ペットは?」と他の男性。

「犬がいます。私に愛情を示してくれます」

「あなたの犬があなたを愛すると同じように、他の人を愛せたらすばらしいですね」と同じ男性が柔らかな声で言いました。無償の愛ですよね。

退職して自分を失ってしまった男性はボランティアをしたりしてるけれど、今一つ何かが欠けている。欠けたものを埋めるのは何か模索していて、このミーティングに参加したとのこと。

「過去の自分はこんなんだったという思いをはみんな捨てることです。」とまたアドバイスの女性が一言。

この男性は、このミーティングで、欠けたものを見つける前に、自分と向き合うことが必要と気がついたそうです。

学んだことは:

瞑想はいいことかもしれないと思いました。30分は無理かもしれないけれど、10分程度から始めてみたいと思ってます。

アドバイスの女性がジェットコースターの例にとって、「乗りたい!エキサイティング!と思う人と、怖い、何かあったら困ると乗らない人の二つのタイプがあります。その気持ちが体に反映します。エキサイティングなほうが体も幸せな気持ちになると思いますよ。車を運転しているときも、しかめっ面でいるよりも空の色とかをきれいだなと体で感じるようにしたらいいです」と話してくれました。

散歩中、亡くなった両親のこと、これからのことを考えながら下を向いて歩いていたけれど、風の心地よさ、美しい緑の木々、青い空をきれいだなあと感じながら歩くようにしたらいいということも学びました。

みんな率直に誠実にお話ししていて、答えを見つけようとしている純粋な心に惹かれて、何か清々しい気持ちで帰途につきました。

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野蛮な国、アメリカ

ひっきりなしに降っていた雨が止んで、この数日間、カリフォルニアらしい好天気が続いています。春めいた陽気に誘われて散歩に出ました。

たっぷりの雨の後の心地よい太陽を浴びて、道端の雑草が綺麗な緑色です。ふと気がついたのですが、道端の雑草が光っているのです。例年だと雑草は濃い緑色で、光っていません。とっても健康な状態で水分たっぷりの雑草が太陽の光を浴びて光っているのでした。

光がうまく撮れてることを祈って写真を撮ってみました。写真から感じてもらえたらいいのですが、、、。

数日前にトランプ大統領が議会で初演説をしました。選挙運動中のように挑発的,就任演説のように暗いアメリカを描写する演説ではないことを共和党議員、トランプ支持者は祈ってハラハラしてたようです。

トランプ大統領はライターが書いた演説を単調に静かな声で読み上げました。私はオバマ前大統領の演説が大好きだったので、ただ読み上げる新大統領の演説は退屈で感激しませんでしたが、ハラハラ派はホッとしたようです。

演説内容は挑発的な言葉を使わなかっただけで、いつもと違いがありませんでした。

大きな課題は税金を下げること、道路や橋の改修に膨大なお金を使うこと、不法移民をどうするか、健康保険をどうするかです。

日本に住んでいる時は国民健康保険が当たり前と思っていました。日本でも国民保険があるのだから、世界一と謳われているアメリカも当然、そうだと単純に思っていました。ところが国民健康保険はありませんでした。

カリフォルニアに住み始めた頃のことです。私が健康保険には絶対に入っていなければならないと、キッパリ言ったものだから、夫は州立の施設に勤務しはじめたばかりでしたが、州がグループとして買っている保険に入りました。そうです、アメリカでは保険は買うものなのです。まじめに歯の健康保険も買ってくれました。

ある日歯医者に行こうと思ったら「歯の保険会社が潰れたから保険はきかないよ」というのです。

「えっ、アメリカでは住民の健康(命)が儲けるためのビジネスになっているの?儲けが少ない保険会社はつぶれるわけ?」

What a savage country!(なんて野蛮な国なの!)」覚えていた単語で思わず声を張り上げてしまいました。

隣に居合わせた大学時代の友人が「その通りだよ」とため息をつきました。

ご存知のように、そのことを十分に認識しているヒラリーがクリントン大統領時代に国民健康保険制度を作ろうとして共和党に見事につぶされました。

そしてオバマ大統領は野蛮な国から抜け出そうと?健康保険制度を作るのに尽力を尽くしました。国が管理する保険制度は反対が多くて無理だと読んで、妥協案としてACA(Afordable Care Act)というシステムを提案、それでも反対する共和党を押し切って成立させました。

保守派はこれをオバマ・ケアと呼んで、このシステムだと小さな会社が潰れる、保険に入らない人はペナルティを受けるという規則は憲法違反だと裁判所に訴えたり、8年間、オバマケアは廃止させるという方針で議員選挙にも勝ってきました。

この法律のおかげで初めて健康保険に入ることができた人が大勢います。

私の周りにも、中産階級で決して貧乏ではないけれど、保険は高いからといって買っていない人が結構いました。この法律のおかげで手頃な値段で保険に入ることができた友人がたくさんいます。

もっとも娘のように独身で高級取りはかなりの金額負担になってしまいましたが。これを共和党は欠点を修正しようではなくて、失敗だから廃止するべきと繰り返し繰り返し主張してきたわけです。

日本の友人達に健康保険は一ヶ月、どのくらい払ってるのかと聞いてみましたが、だれも知りませんでした。自動的に支払っていて、その額は毎月の暮らしに支障が出るほど高額ではないということなのかと思います。

政府が健康保険に関わることに大反対。それは社会主義の国になってしまうというのが反対の理由です。

アメリカではお金さえあれば世界最高の治療を受けられる保険が買えるので、裕福層にとっては保険制度に不満がないわけです。保険を買えないのは、その人のせいだという考えが根本にあります。基本的に貧困層には無関心ということです。

オバマ前大統領がACAを法律として成立させる前は、癌とか糖尿病とか、心臓病とか、持病を持っている人、年を取ってから保険を買おうとする人たちに対して保険会社は保険を売るのを拒否してました。だから癌になってしまったら、膨大な医療費を自前で払わなければならなくなって経済破綻が起こっていたわけです。たとえ保険を持っていたとしても安い保険だったら、一定の金額を使ってしまった後は切られるというのが日常茶飯事でした。なんと非人間的なことでしょう!でもそれが当たり前としてまかり通っていたのです。

今、トランプ大統領と共和党はACAを廃止して別の保険制度に切り替えると主張してます。

思わず笑ってしまうのですが、(本当は笑い事ではない)トランプ大統領が選挙中にオバマケアを廃止すると演説すると、やんやの大喝采でした。でも支持者の多くはACAの恩恵を受けている人たちなのです。彼たちはACAはオバマケアと同じだって知らなかった人が多く、ACAが取り上げられるのは困ると、今更、苦情を言ってる始末。

共和党が上下議会で多数を占める今、今後、健康保険がどのように変化するのか、心が痛みます。

お金に余裕がある人が高額を払ってベターな治療を受けるのは、その人が稼いだお金なのだから当然です。でも国民全員が病気になってもホームレスにならなくてもいい、治療が受けられなくて命を落とすことがないシステムを先進国として持つべきだと思います。

どの国にも長所と短所があります。

アメリカは銃の売上げを守るために銃規制の作成を妨げたり、保険会社や製薬会社の大儲けを妨げないような健康保険システムを良しとする、儲け至上主義が幅を利かせています。悲しいことです。

厳しい銃の規制、国民保険が当然とされている日本。いい国です。

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