No. 47 Date:2010-9-26
ローカルライターのバトル続く
スペクテーター誌のコラムニストでカリフォルニアワインの評価をするジェームス・ローベル氏の味覚に疑問を投げかける声は醸造家を含むワイン業界で結構聞く。
アルコール度が高く過熟気味、オーク樽香が強いワインに、異議を唱えているローカルのライター氏は、いつものように挑戦記事を書いている。内容をまとめるとこんな風だ。
「私はワインは絶対にブラインドで試飲する。ボトルとラベルはワインの血統書みたいな役割をするから、点数をつけるときにあらかじめ血統書を見ると否定的な意見あるいは肯定的な意見を試飲する前に持ってしまう。
例えば南カリフォルニアの大量生産用のブドウを栽培している地区のカベルネを試飲する前に、地区名を知っていたら、客観的に評価をするのは難しい。この地区はシンプルで平板なワインが多いから、そういったワインだろうと予測してしまう。新鮮な感覚でテイスティングをすることは難しい。
ある日、2006年のナパヴァレーの著名なワイナリーのボトルを受け取った。小売価格が220ドルで、ラベルも素晴らしい。そこでいたずら心が湧いた。ソノマ・カウンティの12人の醸造家にブラインドで試飲させて見ようと思い立ったのだ。ワインは茶色の紙袋に入れて、非常に重いボトルにも触らせなかった。ボトルが重いと高額ワインだと推測できるからだ。コルクは見えないところで抜いた。
ワインを注いでから、ブドウ品種、ヴィンテージ、ブドウの栽培地を聞いた。
だれもカベルネだといわなかった。推測はシラーから出来の悪いジンファンデル、テンペラニーニョまでさまざまだった。
二人の醸造家は2002年か2003年という古いヴィンテージだと推測。ブドウが栽培された地区はスペイン、アルゼンチン、チリと推測。
ジェームズ・ローベ氏は『ピュアー、リッチ、磨かれている、濃密、凝縮している、クリーミーなオーク、とても長い持続するフィニッシュ』
私の評価は『レーズン、平板、古い、ナパの典型的なカベルネではない。酸味が少ない。あまり魅力的ではない』
もちろん味覚は個々によって違うのだから、ローベ氏の評価についてあれこれいっているのではない。と同時に醸造家のブラインドでの試飲による評価も尊敬していいだろう。
しかしワインの評価をどのような状況下で行ったのか、有名な醸造家が隣に座っている中で試飲したのか?この評価を読む読者は考えてもいいのではないか?」
ブラインドでテイスティングをすると、自分の味覚に対して謙虚になる。
楽しくワインを飲むときは「あの醸造家が造ったワインだよ。いいね」って飲むと楽しみが倍になる。でも大勢の人が読むワイン誌はブラインドで試飲するべきだと思う。
ワイン消費者としては、自分の好みでワインを選んで楽しく飲みたい。たまにお遊びとして90点以上のワインだけを飲むというのは楽しいけれど、大真面目で、高ポイントワインだけを買う、飲むというのは、ワイン文化としてはいまいちだと思うけれど、どうかしら?