No. 21-6 Date:2006-02-03

ようやく「ロボットの足ブーツ」を履いて2時間座っていても痛みがこなくなった。オーストリアからレイの知人が来たので、ソノマでは今のところ一番美味しいと思うレストラン、エルドラド・キッチンで会うことになった。外へ出ると松葉杖で歩く速度の遅さを痛感する。
レイは彼のことをウイリーと呼ぶ。本当の名前はウイリバルド・バランジュクというらしい。40代の男性で長いことオーストリアのワイン業界で働いている。今はマスター・オブ・ワインの勉強中で,第1次試験は合格、2次試験の勉強中だ。彼のガールフレンドは韓国人(父親は日本人、母親が韓国人だそうだ)のキム さんで、モダンスタイルの韓国料理レストランを経営している。ワインリストはもちろん彼が作成する。ウイリーはピンクのバラの花束を持ってきてくれた。ロ マンチックやわあ!すっかり幸せ気分。
オーストリアのワイン事情の話になった。1990年代はオーストリアでもいろんなワインを飲んでいたのだけれど、今は、特に若い人は自国のワインを多く飲む傾向にあるという。まずとても安いこと、それにオーストリアのワインの質が良くなったし、生産量も増えたからだ。昨年、スイスへ行ったときのことを思い出し た。スイスでも自国のワインを飲む動きが主流になっていた。自分の国がよいワインを生産していたら、もちろん安いしサポートするのは当たり前のこと。カリ フォルニアだと多くの人がカリフォルニアワインを飲むのと同じことだ。
東海岸へ行くと、ヨーロッパワインを飲む人がぐんと増えるけれど。
パーカーが高い点をつけて話題になったいわゆるガレージワインは2年間ほどは買う人が多かったけれど、今は買わなくなったという。そしてシュヴァル・ブランとかラトゥールといった名前の知れたワインへ戻っているという。
ウイリーが面白い(私にとって)ことを言っていた。一頃はボルドーべったりで、年に数回はボルドーを訪れていたという彼は「もしボルドーの権威、イメージ、 評判が破壊されてしまったら、世界中でワインのイメージに大きなダメージを与えるのではないか」というのだ。
ヨーロッパの近い国同士の感覚なのだろうなあ。私みたいにカリフォルニアにいると「そうかしら?ワインの世界はもうそんなに狭くはないんじゃないかしら。ボルドーがだめなら次がある」と思ってしまう。新大陸でワインを楽しむ者の考え方なのだろうな。
もうひとつ、話題になったことがある。リースリングというとドイツがぱっと頭に浮かぶ。(今、ドイツのリースリングの品質が向上してアメリカでも人気が高 まっている)じゃあ、他の国が造るリースリングは飲まないのだろうか?ピノ・ノワールというとブルゴーニュ、カベルネというとボルドー、他の国のカベルネ やピノ・ノワールは飲まないのだろうか?そういうワイン好きの人がもちろん存在する。
ワイン生産国ではない国の消費者は、例えばイギリスのように質と価格に納得すれば新しい国のワインを受け入れていく。それからインターネットが世界を小さく しているから、若い世代は国境を越えてワインを受け入れていくのではないだろうか。だからリースリングはドイツでなくちゃ、ピノ・ノワールはブルゴーニュ じゃなくちゃという風に考えずに、どこの国のワインでも良いと思うものを飲む層が、特にワイン生産国ではない国で多くなっていくだろうという話になった。
日本はワインを生産しているけれども、世界の主ワイン生産国の一つではない。だからワイン好きの人たちのワイン感覚がインターナショナルであって当然だと思うのだけど、あなたもそう思いますか?

Alban Vineyards 2003 Roussanne Edna valley
華 やかな白い花のアロマ。フルボディで酸味もきちんとあってフィニッシュも長い。「パワフルなワインだなあ、アルコール度もきっと高いんだろうな」というの が、第一印象だった。チェックしたら16%。そのうち段々とオークが鼻についてきた。甘さと苦味と酸味がミックスされた夏みかんの味の長いフィニッシュ。 2グラス目は、ちょっと飲み疲れの気分でグラスに手が伸びない。3人で、パーカーはこのワインに高い点をつけてることは確実だねと言い合った。チェックし てみたら、93点。 レイがもう少しおいておくと変わるかもしれない。それからもう少し冷たいほうがいいかもしれないというので、アイスを入れた容器で冷やしてもらった。最後に もう一度飲んでみた。とろみが消えてボディがちょっと軽めになって、酸味がパリッとなっていたけれど、「ああ、これならまた飲むわ」というところまでは変わっていなかった。素晴らしいフルーツの特色がオークとアルコール度からくるとろみの合間に味わうことができる。もう少し肩の力を抜いて、ホームランを打 とうとせずに、ヒットを打つ感じでワインを造ってくれたらいいのに思った。

Shea Wine Cellars 2001年ピノ・ノワール、ウイラメッテ・ヴァレー、オレゴン
香 りは控えめでぱっとチェリーの香りなどが立ってこない。抑制されたフルーツのアロマの後に梅干風の味と香り。派手さはなく、控えめのワインンなのだけれ ど、会話を続けながら、3人であっという間に1本を空けていた。最後にもう少し飲みたいなと思ったほど。食べ物なしでワインだけで飲むと初めは、酸がきつ く感じられるかもしれない。