AVA(政府公認ブドウ栽培地区)の目的はアペラシオン(AVA)の名前を聞いたり読んだりしたときに、どんなワインなのか、ある程度の想像が出来るということがまずあげられる。サブAVAsだと、もっと焦点が絞られてワインについての想像ができるというはずなのだ。

ところが残念なことに時を経て、その目的がぼけてしまった。その理由のひとつが、メジャーなワイン誌が、凝縮度が高く、フルーツ味たっぷりの、アルコール度の高い、似たタイプのワインに高い点を付けことがあげられる。ブドウが栽培された地区の特徴は高い点を付けるときの大きな焦点にはなっていない。ワイナリーは、メジャーワイン誌が好むタイプを造ろうと研究するので、栽培地区が違ってもますます似たタイプのワインがリリースされることになる。

その例の一つに「インタナショナル・ワイン」と総称された時期があって、国境を越えて、どれも似たタイプのワインを造り始めたことが指摘された。フレンドリー価格のワインが、栽培地区の特色を失って、それでも美味しいものを生産するのは、消費者にとっては嬉しいことだけれど、プレミアムワインが栽培地区の個性を失ってしまうのはさびしい。

カリフォルニアワインに話を戻して、試しにカリフォルニアの例えばロシアンリヴァー・ヴァレー、とサンタ・ルシア・ハイランド、あるいはカーネロスのメジャーワイン誌が高い点をつけたワイン、ピノを比較して飲んでみてほしい。地区の違いよりも共通点のほうが多いと思うのは私だけではないはず。(ヴィンテージ2010年と2011年は涼しい年だったので、当てはまらないかもしれない)

とはいっても、高い点が付けば売れるのだから、ワイナリーに売れなくても栽培地の個性を生かしたワインを造るべきと言う権利はないよね。

こういう傾向を変えて、栽培地区の個性を生かした、質の良いワインを造るようにトレンドを変えていくのは消費者だと思う。ワイン誌のトレンド作りに乗っかって、高い点、100点ついたワインを飲んだよ!っていう楽しみ方もいいけれど、地区やヴィンテージのニュアンス、料理にマッチするワイン、自分が好みとするワインというのをベースにワインを買うというのもいいのではないだろうか。ワイン誌はあくまでも参考にして、メジャーなワイン誌に引っ張られて高い点がついたワインを内心はちょっと体力的にきついなあと思いながら飲むというのじゃなくて、飲む本人が主役になるべき。

私は欲張りなワイン飲みだから高い点が付いたワイン、付いてないワイン、濃厚でフルーティでパワフルなワインも1グラスほど飲みたいし、点数は関係なく料理と一緒だとすごく美味しいワイン、軽やかでエレガントなワインも楽しみたい。