ソノマの暮らしブログ

病院のTransparency (透明性)

日本とアメリカでは保険のシステムが違います。日本では国が管理する健康保険にほぼ全国民が加入しているので、どの保険会社の健康保険を買おうか(加入しようか)、保険会社で受け入れてくれるだろうか、私で買える保険だろうかなんて、迷う(悩む)必要がないですよね。信じられないことに健康保険も資本主義が徹底した国、アメリカではビジネスなのです。根本的にいかに儲けようかという経営方針が最優先です。人の命もビジネスの対象なのです。
私はアメリカでは カイザー パーマネント( Kaiser Permanente) という 健康保険 プラン というかグループに入っています。1945年に設立されています。他の保険と 違うところは 、カイザー・パーマネントという病院がアメリカの8州と ワシントン DCにあって、 その病院だけに行けるということです。 どうしても他の病院に行くしかないという時には医師の推薦状が 必要かと思います。他にいろんな保険があって、どこの病院でも行けるという保険もあります。その点、不便と言えば不便ですが、 今のところ 私はカイザーで 間に合ってます。

Kaiser santa rosa RSZ
カイザーの良いところの一つに、例えばガンに罹ってしまったとします。カイザーは毎月支払っている保険料で最後まで治療をしてくれます。でも保険会社によっては、これ以上の治療費は支払いません、自己負担(日本の自己負担より総額ではゼロが一つ多い)になり、保険金による治療はストップされてしまうということもあるようです。お金持ちは自己負担はかまわないし、毎月高い保険料を払うプランに入っていれば、おそらく、最高の治療を受けられるでしょう。
日本でも保険外自己負担による治療ということもあるかと思いますが、アメリカは支払う金額のスケールが違います。
貧富の差によって人の命も左右されるというのは恐ろしいことです。

また便利なことの一つに、自分の担当医と E メールでやり取りができるので、 いちいち 往診に出かけなくてもいいというところです。簡単な風邪などは E メールで医師と連絡をとりあいます。先生が直接お話ししなくちゃいけないという時には テレビ電話、あるいは電話で行います。検査が必要という時には予約を取って病院に行きます。
1月に呼吸器系に影響を与えるひどい風邪をひいて、肺炎になってしまいました。私にとって肺炎は初めてではないので、Eメールでこういう症状なので、抗生物質を処方してくださいと連絡したら、コロナ、RSVそして年齢も関係しているのでしょう、すぐに電話がかかってきて、「今日か明日中に病院へ来てください。医師が直接診察したいとのことです。」と予約を入れてくださいました。
カイザーのウエブサイトに私(患者全員)のページがあります。ユーザー名とパスワードを入れて、私のページに行きます。私のページには 私に処方された薬が全て記載されていて、サイトから薬をオーダーできます。急ぐときには病院まで取りに行きますが、急がない薬、例えばいつも飲んでいる胃薬とか、お腹の薬はオーダーすると郵便で送ってくれます。
カイザーのいいところはトランスペアレンシー をとても大事にしてるところだと私は思ってます。トランスペアレンシー、 日本語だと 透明性ということでしょうか。

ある日、 朝起きたら左目がかすんで見えなくなってました。 顔を洗ってみたり色々してみたんですが 良くなりません。 これは大変だと思って、予約を入れて病院に行きました。担当医は中国系 アメリカ人の若い医師です。
「目の真ん中に外側が薄い緑で中が濃い紫の四角い像が見えて、目がかすんで見えないんです」と言ったら、OCT(光干渉断層計)で イメージ写真を撮って、散瞳検査(目に薬を入れて、瞳孔を開いて眼底を詳しく見る検査)をした結果、「どこも悪くないです」と言うのです。
「どこも悪くないって言っても、見えないんですけど。こんな状態で生活できません」とパニック状態で言いました。
片目が見えない状態で 一生過ごせない、担当医を替えなくちゃいけないかもと内心思いながらも、 頑張って「 先生の ズボンが右目だったらブルーに見ますが 、左目 だったらグレイに見えます」 って言ったんです
そしたら 「じゃあ、もう1度見てみます」と検眼鏡の前に座りました。
「あっ」と言って「 ちょっと待ってて、隣の先生にも見てもらうから」と、何か見つけたようで隣の 先生を呼んできました 。
「あー、これは後発白内障で、時々あるケースです。 僕の患者さんも同じ症状で、レーザーで直しました。患者さんはほっとしてましたよ」」 とハンサムな先生。
「 この先生だったら良かったのに」と思ってたら、「 じゃあ、これからYAGレーザーをしましょう」と私の先生。レーザーの器具がある部屋へ行きました。パチンパチンパチンと音がしてましたが、痛くはありません。
家に帰って2日ほど、よく見えませんでしたが、3日ぐらい経ったら見えるようになって、ほっとしました。その後 、2週間ぐらい経ったら、 今度は目の奥に鈍痛があって、真ん中に濃い紫の点が見えるので、また同じ先生の診察を受けに行きました。
「目の奥が痛くて、真ん中に濃い紫の点が見えるのですが」
「 レーザーをしたぐらいで、そんなに痛いはずがない。黒い点は飛蚊症でしょう」と先生。
「飛蚊症なら点が動くはずです。でもこの黒い点は一か所に止まって動きません」と私。

「 医師たちは 専攻が 文学部じゃないから、薄緑の真ん中に濃い紫色があってというような説明をしてもわかってくれないよ。明確にこれだって言った方がいい」と娘に言われたのを思い出して、「もしかしたら黄斑円孔?黄斑に穴があいてるかもしれない」ときっちり 言ったら見事に反応しました。

某サイトによると「黄斑円孔の初期段階では、視界が歪んで見えたり(変視症)、中心部が暗く見えなくなったり(中心暗点)します。 これは、黄斑の穴が空いた部分に光が投影されなくなるためです」とあります。

「じゃあ、OCTを撮ってチェックしましょう」ぎょっとした顔で言いました。 OCTの結果、黄斑が 腫れてるということがわかりました。
「YAGレーザーに反応したんですね」といって、点眼薬を処方してくれました。 点眼したら良くなりました。

カイザーの私のページに担当眼科医の診察レポートが載っているのに気が付きました。 その先生の診断後のレポートに私が「非常に ヒステリックだった」書いてありました。片目が霞んで見えなくなってるのに、どこも悪くないといわれて、ぎょっとした私の反応をヒステリックと見てたんですね。
もう一つは、今年の冬にひどい風邪をひいて肺炎になってしまい、医師の診断を受た時のレポートに「栄養状態は良い。精神状態は安定している。質問に対する受け答えもノーマル」とありました。若いけれど、とってもいい先生で親切に的確に見てくださいました。
「栄養状態が良いって、私が太ってるってこと?」と娘に言ったら、仕事柄こういったレポートを何度も見ている娘によると「要するに良い食べ物を食べて健康な状態であるということ。 精神状態も必ず見てて、安定してるか、イライラしてるか、不安になってるか 、そういうことを見る」のだそうです。
正直に(洗練された文体からは程遠い)先生が書いたレポートを患者が見ることができるなんて、カイザーの「透明性」というポリシーがすごいなと思いました。
先日、目のチェックに行きました。帰ってきてからレポートを見たら アシスタントの方(看護師?)が「今日は 目の調子が悪くて、よく見えません」って言った(本当にそう言いました。)と書いてありました。
先生との会話はヒステリックと思われないように冷静に お話したつもりだったので、先生のレポートにはどのように書かれてるのかなとチェックしてみました。 なんと、 先生が直接的表現で書いてあった コメントは全て消えてました。
こういう症状で、こういう目の検査をして、こういう処置をして、こういう薬を出しましたと、医学的な事項だけが書かれていました。
透明性を誇る カイザー でも、そこまではもう見せない(患者は見ることができない)ことになったんですね。
目の件で学んだのは、医師に症状を説明するときは直接的な言葉を使うこと、自分の体は自分で守るという方針を貫かなきゃいけないということでした。
次にこのような大変な目の病気が起こった時に、先生が大丈夫 とか言い出したら 、他の医師にセカンドオピニオンを聞きに行こうと 決めています。
自分の症状を正確に知ることができるのが嬉しいです。お医者さんの言う通りに従う のではなくて、私もいろいろ調べて、先生とお話をしてそれで結論を出すというやり方で行こうと思います。
カイザーが透明性のある病院なのが気に入ってます。

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