今年もサンタ・バーバラのリッツカールトン・バカラで開かれたWorld of Pinot Noirに3月3,4日と参加してきました。
今年の冬は雨が大量に降って、そして寒くて北カリフォルニアはもちろん、南カリフォルニアでも雪が降ってびっくり。ソノマから車でガソリン&トイレ休憩を数度入れながら7時間かけてサンタ・バーバラまで行ったのですが、サンタ・バーバラの山の頂上に雪が残っていて驚きました。暖かいはずのサンタ・バーバラも寒かったです。それでも日が射すと日差しが強くてちょっと湿り気があって、トロピカル風の気候が感じられて、気持ちよかったです。
3月2日の夜にオープニングパーティが開かれるのですが、私は到着が遅かったので行くことができませんでした。
翌日、3月3日は午前9時30分から「Giant Steps & Brewer Clifton Tasting」と題するセミナーです。二つのワイナリーともJackson Family wine が所有しています。
TGiant Steps(ジャイアント・ステップス)はオーストラリアの ビクトリア州のYarra Valley(ヤラ・バレー)にあります。Yarra Valley(ヤラ・バレー)は冷涼な地区でシャルドネとピノ ノワールの生産地として知られています。ピュアでフィネスなシャルドネとピノ ノワールの生産に理想的な場所として、このヴァレーに1997年にワイナリーを設立したものです。
オーストラリアの新しいスタイルのピノ・ノワール、クリスプな酸、レッド・フルーツを特色とした冷涼な気候のピノ ノワールがジャイアント・ステップスの主役です。
ヤラ・バレーに位置する個々のブドウ園の個性を反映した以下のワインを試飲しました。
2021 Giant Steps, Yarra Valley
2020 Giant Steps Primavera
2020 Giant Steps Applejack
2020 Giant Steps
2020 Giant Steps Sexton
【全体の印象】
2020 Giant Steps Sextonは色も濃い目でふくよかな口当たりのフルーティなワインで、今までの一般的なスタイルという説明でした。
2021 Giant Steps, Yarra Valleyはレッド・フルーツとフレッシュな酸が特色で、このワインが目指している新しいスタイルなのでしょう。
Brewer Clifton
1996年にサンタバーバラに設立されたワイナリー、Brewer Clifton(ブリューワー・クリフトン)のワインメーカーであるグレッグ・ブリュワー氏は日本でもよく知られていると思います。
Brewer Clifton(ブリューワー・クリフトン)は、カリフォルニアの高品質のシャルドネとピノ ノワールを産出するアペラシオンAVA、Sta. Rita Hills (サンタ・リタ・ヒルズ) にあり、カリフォルニアならではの独立したスタイルを築き上げています。
Sta. Rita Hills (サンタ・リタ・ヒルズ)は、サンタ バーバラ・カウンティのサンタ・イネス・バレー の最西端に位置する、最も涼しい小さな栽培地区です。サンタ・リタ・ヒルズのさわやかな海風と水はけの良い石灰質土壌がシャルドネ種やピノ ノワール種の栽培にマッチしており、ブドウは十分に熟し、生き生きとした酸味を持つ調和のとれたがブドウが育ちます。
当AVA 内の 3 つのブドウ畑の 以下のピノ ノワールをテイスティングしました。
2021 Brewer Clifton Sta. Rita Hills
2020 Brewer Clifton 3D
2020 Brewer Clifton Machado
2020 Brewer Clifton Hapgood
創設者でワインメーカーのGreg Brewer(グレッグ・ブリューワー)氏は、この冷涼な地区からシャルドネとピノ ノワールを造ることに 30 年のキャリアを捧げてきました。
「日本の皆さんに何かメッセージありますか?」とセミナーが始まる前にグレッグ(Greg Brewer)さんにお聞きしたら、お忙しいにもかかわらず「日本の文化はモチヴェーションとインスピレーションを与えてくれます。毎日、ベター人間になろうと努めています」というメッセージでした。
なんか日本人の私よりも日本の文化とスピリットの真髄を真摯に追及されていらっしゃるようで、私もその真髄を再確認しなくちゃと思いました(汗)
【ワインの全体的な印象】
すべてのワインにBrewer Clifton(ブルワー・クリフトン)のトレードマークである果実の純粋さとしっかりとした構造と相まって、華やかなタイプではなくて、十分熟しているのだけれどフルーツの過剰な甘さがなくて、誠実な堅実派のピノ・ノワールと感じました。
「エネルギー、フィネス、ワインのフィーリング」と話されてました。ワインのフィーリングって、どんな感じかなあ。いつかお聞きしたいものです。
翌日のセミナ:
Blurring Boundaries: Burgundy ant the New Word
(境界のぼやけ: ブルゴーニュ と 新世界)
モデレーターのサンフランシスコ・ワインスクールの先生であるMSのタイトルを持つ David Glancy(デイヴィッド・グランシー)先生の講義はわかりやすくて楽しく、近かったらこの先生のクラスを受けてみたいと思うほどです。
この講義で教わったこと、各ワイナリーの詳しい説明なども書きたいですが、すごく長くなるので諦めます。短い時間にお話を聞きながらのテイスティングなので、コメントは簡略で表面的です。
ブルゴーニュと新世界にワイナリーを所有する、または近しい関係にある6組のワインを試飲しました。
1)
2018 Francois Millet & Fils, Chambolle-Musigny, Les Foucheres
2018年は猛暑の年だったため、熟し方は異例だったとのこと。ダークフルーツが口の中いっぱいに広がる。美味。
2019 Prophets Rock, Cuvee Aux Antipodes
構成が良くリッチ。スパイス。華やかさとフルーティさはない。印象的な長いフィニッシュ。アルコール度が14%とオタゴでは例外。
Prophets Rock(プロフェッツ・ロック)はニュージーランド南島のセントラル・オタゴにあります。Prophets Rock のCuvee Aux Antipodesはコート・ドゥ・ニュイの村、Chambolle Musigny(シャンボル・ミュジニにある)Domaine Georges Comte de Vogue(ドメーヌ・ジョルジュ・コント・ド・ヴォーグ)の元ワインメーカーであり、現在Domaine Francois Millet et Fils (ドメーヌ・フランソワ・ミレー・エ・フィス)の所有者であるFrancois Millet(フランソワ・ミレー)とProphets Rock のPaul Pujol(ポール・プジョル)の共同プロジェクトです。2015 年が初リリース。二人の友情は、PaulがFrancoisのアシスタント ワインメーカーとしてComte de Vogue(コント・ド・ヴォーグ)で働いたときに始まりました。
2)
2020 Domaine Meo-Comuzet, Clos de Vougeot
しっかりしたワインで重みもある。豊かなダークフルーツ。多層の味わいが口の中いっぱいに広がる。熟しているけれど過熟ではない。長期熟成の可能性を秘めたワイン。 美味。
2019 Nicolas-Jay, L’Ensemble
優美さと緊張感のあるワイン。きれいなすみれ色のアロマ。ラズベリーとグァバ。ナイスフィニッシュ。軽めでエレガント。
「この二つはパワーVSフィネス」とデイヴィッド先生。
オレゴン州のウイラメッテ・ヴァレーにあるNicolas-Jay(ニコラス・ジェイ)は、Domaine Meo-Comuzet(ドメーヌ・メオ・カミュゼ)の有名なブルゴーニュのワインメーカー、Jean-Nicolas Meo(ジャン・ニコラス・メオ)と、音楽起業家でありワイン愛好家であるJay Boberg(ジェイ・ボーバーグ)の 2 人の長年の友人によるコラボレーションです。 Jean-Nicolas は Meo-Camuzet でほぼ 25 年間ワインを造り続けており、新しいテロワールでピノ ノワールを造るというアイデアに非常に興味をそそられたとのことです。2015年が初ヴィンテージ。
デイヴィッド先生が見せてくださったスライドによると、ウイラメッテ・ヴァレーではピノ・ノワール種が68%、ピノ・グリ種が17%、シャルドネ種が8%、リースリング種とシラー種が1%、その他の品種が5%という作付けです。一方、ブルゴーニュではシャルドネ種が46%、ピノ・ノワール種が36%、ガメイ種が11%、アリゴテ種が6%、その他の品種が1%。
ブルゴーニュではピノ・ノワール種よりシャルドネ種の栽培が多いのですね。
3)
2019 Domaine des Comtes Lafon, Volnay-Santenots du Milieu
この地域で最も求められている人気のあるワインです。 オークの香り。レッドフルーツ。 滑らかな口当たり。少しのアルコールとタンニンの長いフィニッシュ。
2018 Archery Summit, Arcus Vineyard
熟したベリーとチェリーのフレーバーが口中に広がる。 ニュアンスに欠けていて粗さが感じられた。
赤道の両側で何年もワインを造った後、Ian Burch(イアン・バーチ)はオレゴン州のウィラメット バレーのシャルドネ種とピノ・ノワール種に魅かれて、イブニング・ランド・ヴィンヤーズでキャリアをスタートさせ、最終的にウィラメット バレーにあるArchery Summit(アーチェリー サミット)へと導かれました。
Ian Burch(イアン・バーチ)は、ブルゴーニュのワインメーカー Dominique Lafon (ドミニク・ラフォン)を彼の偉大な指導者と見なしています。
4)
2018 Domaine de la Vougeraie, Vougeot, Les Cras, 1er Cru
サクランボ、スパイス、ドライハーブのアロマ。口当たりはミディアム、少しの果実の甘みとタンニン。
2018 DeLoach Estate, Russian River Valley
赤い果実とスパイスのフレーバーが口の中に広がる。アルコール15%からくる甘み。ややシンプル。甘みと酸味の長いフィニッシュ。
ボワセ家のJean-Charles Boisset (ジャン・シャルル・ボワセ)が率いるはBoisset Collectionはカリフォルニア、フランス、カナダで 28 のワイナリーを所有しています。カリフォルニアではBuena Vista Winery、 DeLoach Vineyards、 JCB by Jean-Charles Boisset,、Raymond Vineyardsを所有。1999年に妹のナタリーとDomaine de la Vougeraie(ドメーヌ・ドゥラ・ヴージュレ)を共同設立しました。
5)
2017 Louis Jadot, Domaine des Heritiers, Beaune, Clos des Ursules, 1er Cru
イチゴ、花、梗からくる香り。 ミディアムからフルボディ。歯ごたえのあるタンニン。軽やか。長く風味豊かなフィニッシュ。
2017 Resonance, Estate Vineyard, Yamhill-Carlton
チェリーと梗からくる香り。フルーツのニュアンスはあまり感じられなくて硬い。ミネラルとタンニン。
2013 年に設立されたResonance(レゾナンス)は、ウィラメット バレーにあるヤムヒルー・カールトン AVA に位置しています。 Resonance Vineyard(レゾナンス ヴィンヤード)はMaison Louis Jadot (メゾン・ルイ・ジャド)によって買収されました。伝説的なブルゴーニュのメゾンがブルゴーニュ以外で初めて買収したものです。Jacques Lardiere (ジャック・ラルディエール)は、Maison Louis Jadotのワインメーカーとして 42 年間ワイン造りをリードした後、2012年に引退ましたが、退職から抜け出してレゾナンスの設立に参加しています。
6)
2017 Faiveley, Gevrey-Chambertin,“Vieilles Vignes”
芳醇なサクランボと花の甘い香り。滑らかな口当たりとニュアンス。長いフィニッシュ。美味。
2014 Williams Selyem, Allen Vineyard
熟成香。豊かな口当たり。 ノーズは最初は控えめでエアレーションによって赤い果実、スパイス、オークのフレッシュな香りが現れた。
ヴィンテージが2014年なので、現在のwilliam Selyemのスタイルとは違っている。
ソノマの有名なピノ ノワール生産者の 1 つであるwilliam Selyem(ウィリアムズ・セリエム)の現オーナーであるジョン&ケイト・ダイソンは2021 年 1 月 14 日、ワイナリーの少数株をブルゴーニュのDomaine Faiveley(ドメーヌ・フェイヴレイ家)に売却しました。 現オーナーは今のところ、ワイナリーの管理を維持していますが、今後、パートナーシップの再検討をする予定とのこと。 いずれFaiveleys がより大きな株式を取得するか、ワイナリーを完全に管理することになるようです。
【全体の印象】
ニュージーランド、オレゴン、ロシアン・リヴァー・ヴァレーにワイナリーを持つブルゴーニュの6ワイナリーの12(6組)のワインを飲んでみるというセミナーで、とても興味深かったです。毎年このイベントでブルゴーニュが登場するセミナーは、とても勉強になります。
ピノ・ノワールの世界観が変わりました。
どのワインも見事にブドウが育った畑の個性を表現していました。同じ生産者が生産していることからワインの根底に共通した要素が感じられる組み合わせもありました。例えば梗をからくるタンニンが共通していたり、フィニッシュに共通したフルーツの甘みが感じられたり。
私の中でピノ・ノワールの位置取りは、ブルゴーニューがトップで、それに追いつこうとして新世界がピノ・ノワールを生産しているという概念がありました。当たり前ですが秀逸なテロワールから生まれたワインは、やはり素晴らしいです。でも他の国のピノ・ノワールと個性が違うだけで、質的には同格になりつつあるのかもと思いました。ピノ・ノワールの味わいの違いは国ごとの個性として受け止めて、ブルゴーニュが上という関係じゃなくなってきていると感じました。
4日はこのイベントのフィナーレであるグランド・テイスティングです。今年は参加ワイナリーのリストが見かけられず、参加ワイナリーの数はわかりませんが、過去に数えたら100ワイナリーが参加していたので、今年もほぼ同数のワイナリーが参加していたと思います。今年も大勢の地元のピノ・ファンが参加してました。相変わらずの迫力と楽しそうにワインをテイスティングしている人たちの明るい表情が見られました。
私はまだ多少コロナ感染を恐れているので、短時間に数ワイナリーのテイスティングをして、外に出て新鮮な空気を吸ってまた会場に戻ってテイスティングをするというパターンを数回繰り返してお終いにしまいた。
試飲会場の外にビュッフェのコーナーがあって、テーブルが並べられています。VIPセクションはDJが流すミュージックを聴きながらリラックスしている人たちで限られた席は一杯、空いてる席はほとんど見当たりません。
足が痛くなってきたので少し食べ物をお皿に盛って、中年女性二人が座っているテーブルに相席をお願いしました。一人の女性が微笑んでうなづいてくれました。その女性が食べ物を取りに席を立った後、残っていたもう一人の女性はずうっと顔を背けて徹底的に無視でした。
「これがニュージーランドだったら(帰って来たばかりだったので)席から離れられないくらい会話が進んだのだろうなあ」とふと思いました。まあ、それぞれお国柄と文化があるし、こういう女性もいるでしょう。
次に一休みしようとVIPセクションに行ったら、たまたま中年の女性二人が座っているテーブルに空いてる椅子がありました。「座ってもいいですか?」と声を掛けたら「もちろんよ!」とにっこり。私が胸に下げているプレスのカードを見て「お仕事?お疲れでしょう」と優しい言葉までかけてくれました。もう一人の女性はメアリーさんと言って、このイベントの幹部だというので、「日本の方が来年参加されるといいなと思ています」と言ったら、「いいアイデアね。この方に連絡したらいいわよ」と教えてくださいました。
「ちょっと席を外すけど、20分くらいどこへも行かないでここに座っていてくれる?フランス人のルックスの良い若い男性とここで待ち合わせをしているので、その男性が来たら日本語で声をかけてください」とメアリーさん。
「わあ、いい役割ですね。どこへも行かないで待ってまーす」と私。
待っている間、携帯のチェックをしていて来る人を見ていなかったら「こんにちは」と声が聞こえました。見上げると本当にハンサムな男性が立っていました。流ちょうな日本語を話すのでびっくり。いろいろと話が弾んでメアリーさんが帰ってきたころにはお友達ムード。またいつかお会いできる日が来ると思います。嬉しい出会いがあるのもこのイベントの楽しさ。
来年は私と一緒に参加しませんか?2024年2月29日から3月2日の開催です。プログラムとチケットについての情報は今年の秋に発表されます。私は2つのセミナーとグランドテイスティングだけの参加でしたが、ランチョンからディナー、様々なセミナーと盛りだくさんのプログラムの中から選ぶことができます。
秋にスケジュールが発表されたらお知らせしますね。