10月8日の夜、強い風が吹き続けました。
きっかけは記憶してないのですが(多分、避難の可能性があると予測して、申し込みの通知が携帯に入ったのだと思います)、その夜、携帯電話に緊急通知を受ける申し込みをしました。
夜の12時頃にビーンと緊急通知が入ったので、チェックするとナパで火災が起きているという通知でした。ナパの火事ならソノマは大丈夫だろうと、そのまま寝ることにしました。その後3回ほどビーン、ビーンと通知が入ったのですが、無視して寝てました。
私は自宅の電話に出なかったのですが、夫が取ったら、外を見て火が見えたら避難するようにというメッセージだったそうです。
翌朝、自宅のあたりはかなりの煙でした。プールサイドのチェアが2個ともプールに落ちていて、パラソルも倒れていたので、風がすごく強かったことに驚きました。でも隣町のサンタ・ローザがすごいことになっていることは、まだ知りませんでした。
夫はこの日、ヨーロッパに出張する予定でした。庭に出てじっと外の様子を見てましたが、午後から飛行場へ行くことに決めたようです。私も火事は日本にいるときに何回か目の当たりにしているので、避難の準備だけしていたら大丈夫だろうと思ったので、ヨーロッパ行きを止めませんでした。
テレビをつけて、大変なことになっているのを知りました。火の手が隣の地区まで来ていることを知って、スーツケースに貴重品や数日の着るものを詰めて、すぐに持ち出せない物は車に積みました。9日と10日はテレビのレポートと市役所のサイトと緊急通知をチェックして一日が過ぎました。
娘にサンフランシスコに来るようにと、強く言われたのですが、それほど緊急事態ではないと思ったので、ソノマにいると主張。でもこの地区で残っているのは私だけだったら、ちょっと危険だなと思って、火が見えるかどうかを点検しながら隣の家をチェック。まだ明かりがついていたので安心。そしてこの夜の火事の状態について確認のために2軒の家に電話しました。
「今夜は大丈夫だと思う。でも私たちは必需品は全部車に積んで、避難準備ができている。恵美子は準備できてるの?」
「イエス、猫をケースに入れる時間を考えて、10分あればOK」
「避難するときは一人で住んでる隣のジャスリンと恵美子とうちの家族で一緒に出ることにしましょうね。そのときはすぐに連絡するから」
とっても頼もしい隣人。
寝る前に緊急避難命令が出たときのことを考えて、着る服を一箇所にまとめておきました。そして頭の中で、どの順番に避難準備をするか、まず猫をケースに入れて、スーツケースに洗顔用具を詰めてと、リハーサルをしてから寝ました。
熟睡(本当です)して、翌朝外に出てみたら、近くの山も見えないほどのすごい煙。家の中も煙っぽい。火事のコントール率は0%とテレビで報告。まだまだすごい勢いで一時は6つの火事が同時に起きてました。
隣の奥さんのバーニースは看護師さんなので、「手術用のマスクがあるから、必要なら持って行くわよ」とメッセージ。本当に親切。
「日本で買ったアレルギー用のマスクが数個残っているので、それがなくなったらお願いします」と返信。
11日はヘリコプターや飛行機が飛ぶ音がすぐ近くで聞こえるし、煙に加えて灰も飛んでくるので、今日は避難しなきゃならないなと直感。朝一番にシャワーをして外へ出る服を着ました。
火事が発生した2日間は煙が濃すぎて下が見えないので、大量の水や消火剤をまくヘリコプターも飛行機も飛んでませんでした。消防士も400人しかいなくて、避難警告をして市民を守るので精一杯。有名なホテルは消防士が一人もいなくて、完全に焼け落ちるまで放置。
「娘の恋人の警察官から電話が来て、避難命令がもうすぐに出るから、早めに家を出たほうがいいと言ってるので、避難するよ」夕方の四時頃、バーニースから電話。
隣のご主人のジョンがガスの元栓を閉めに来てくれました。
ジョンの後をついて道路に出たら、避難する人の車で渋滞。いつもなら20分で通過できる道が1時間かかりました。煙のため辺りが薄暗く、遠くに煙がムクムクと上がっているのが見えて、恐ろしかったです。
予備軍の人たちや他州から消防士さんたちが応援に駆けつけてくれて(10時間もかけて来てくれた消防隊もありました)1500人(だったと思いますが、、、)の消防士たちが24時間火事と戦ってくれました。
地球温暖化が、この火事の驚くほどに早い進行に関係しているそうです。カリフォルニアは数年間、旱魃に悩まされました。そして今年の冬に洪水があちこちに発生するほど大量に雨が降りました。雨の恵みを受けて、木を含む植物が例年よりも大きく成長。そして夏は猛暑が(夏は寒いはずのサンフランシスコまで)続いて、植物は完全に乾燥。山火事の可能性が高いと危険警報が出てました。山火事の原因はまだつかめてません。普通なら一箇所で終わるはずの火事が、運悪く乾いた強風のため火の勢いが増し、あっという間に飛び火してサンタ・ローザや隣の小さな二つの町の住宅街を一瞬にして火の海にしてしまいました。
6日間、娘の小さなアパートで2匹の猫と一緒に暮らしました。行くところがあって感謝。
解除が出て、前と同じ我が家を見て、感激。家に帰って2日目あたりからようやく緊張が解けてきました。
災害はいつやってくるか、予測がつきません。
今年の冬はまた大量の雨が降るという予報です。家の周辺の木の健康状態をチェックしてもらって、倒木を避けようと思っています。一度、大雨のため、前庭の松の大木が倒れたことがあります。幸運にも家から少し離れていたので、幸運にも被害はありませんでした。
毎日平穏に暮らしていることのありがたさを、再確認しました。
家が全焼(5200軒)してしまったたくさんの人たち、家族を失ってしまった人たち(42人死亡)の戦いはこれからです。
昨日、プラザのブティックに寄ったら、オーナーの女性と涙声で何か囁いてハグをしている40代の女性が目に入りました。女性の家と彼女の母親の家が焼けてしまったと、後からオーナーが教えてくれました。
友人たちと火事の話をすると、知人の家が焼けてしまったということが、必ず話題になるほど、被害が身近に起きました。
胸が痛みます。
様々な組織が救援活動をしているので、何らかの形でサポートしようと思っています。
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