ソノマの暮らしブログ

カフマン 恵美子 はまだ経歴を設定していません

印象に残ったワイン

Date:2007-03-13

このところいいワインを飲む機会に恵まれた。いつも行きたいと思っていたAMEに行った。AMEはナパ・ヴァレーのセント・ヘレナという町にあるレストラン「TERA」のシェフ兼オーナーの曽根さんがサンフランシスコに開いたレストランだ。レストランでのランチは一時的に中止していたのだが、ホテルにあるレストランなのでラウンジで食べられるというので、ゆったりと構えてワインを飲んでAMEが用意するアピタイザーを楽しんだ。

ここで嬉しい発見をした。 昨年の4月にオーストリアのウイーンで開かれたワイン祭りに参加したときに知り合ったドイツワインの生産者、Dr.Loosenの2005年Bernkasteler Lay Mousel-Saar_Rower、カビネットとわさび入りえんどう豆(よくビールのつまみに出てくるよね)がとってもよくマッチするということだ。ドクター・ルーセンは素晴らしいリースリングを造っている。レイといつもヨーロッパのイベントで会う気の置けない仲間らしく、昨年の4月にウイーンで会ったときの二人の会話はおかしくて、私は笑いっぱなしだったのを記憶している。その彼が造ったワインを日本のビールのつまみで美味しく、楽しく飲めたので、すっかり嬉しくなってしまった。

数日後に、マスター・オブ・ワインを勉強しているヨーロッパの友人4人とナパにあるレストラン、La Toquでディナーを楽しんだ。オーストリアから来ているウイリー、ドイツから来ているマーテン、オーストリアから来たスーザン、スイスからきたバーバラの4人は、マスター・オブ・ワインのセミナーを終えて、ちょっと緊張して疲れた顔でやってきた。

まず白ワインからというのでオーダーしたオーボン・クリマのヒルドガドの在庫がなくなっていたので、オーストリアから来たウイリーが「グリューナー・フェルトリナーを飲むのはいやかい?」という聞くので、大好きだと答えたら、嬉しそうにオーダーした。ナパで2,3回この品種を飲んだのだけれど、どれも全体的にキーンときれいな酸味がきいたタイプではなくて、ライプ気味のちょっとアルコールが高めのタイプだった。これはナパに来るお客さんの好みに合わせているのか、レストランのバイヤーがナパのライプタイプのワインが好みだからなのかわからないけれど、この夜に注文したグリューナー・フェルトリナーも、この品種らしさが出ていないので私は失望。ウイリーも同感だといった。
レイが95年のハーランと2003年のフォーマンと2002年のローレル・グレンを持参した。 古いヴィンテージから飲もうということで意見が一致。デキャンタをしてもらってハーランから飲み始める。
デキャンタをしても、初めはまだ閉じていて香りに深みは感じられるのだけれど、開くのにもう少し時間が要った。やがてライプフルーツの甘味に複雑な香りが加わったアロマが立ち上がってきた。口当たりはまろやかで濃いのだけれど、重厚さに重さが感じられず軽やかでエレガントさすら感じられる。重厚さとエレガントさが共存するところがハーランの個性のひとつだと、改めて感じた。フルーツの甘味が若くしっかりとしている。このしっかりとしたフルーツの味は何年後にどんな風に衰えていくのだろうか?

隣の席に座ったスイス人のバーバラはワイン学校を経営している。「強いワイン。アルコール度が高い。いいコンディション。強いけどエレガント。まだ長く持つ」と短くコメントしてくれた。 「今が美味しい。でもあと5-10年は軽く持つ」といっているレイとウイリーの会話が聞こえた。 2003年のフォーマンはカシスの香り。甘味が抑制されているけれど、十分に熟したブドウの味わいがある。バランスの取れたいいワイン。意外だったのは軽やかで口当たりがソフトだったことだ。レイとウイリーは、この意外だったソフトさにちょっと失望、前のスタイルのほうが好きだという。(このことについて、レイがリック(フォーマン)とたまたま電話で話することがあったときに、リックは同感だ、2004年は元に戻した、といっていたという)

2002年ローレル・グレンは焦点が定まったローレル・グレンのテロワールから生まれるスパイスとフルーツと墨汁がミックスした個性的な香り。このワイナリーのワインにしてはアルコール度が今までにないくらい高いのだけれど、(造った本人も驚いている。これはヴィンテージがなせるわざ)酸味がきちんとあるので飲んでいて甘さがしつこく舌に残らなかった。 スーザンとはスイスのチューリッヒに住んでいるマスター・オブ・ワインのタイトルを持つフィリップのお宅でディナーの前に、テイスティングに出すワインの試飲をしたときにお会いしている。テーブルの向こう側に座っていたので、話す機会がなくて残念。

全くの私見なのだけれど(そんなに多くのヨーロッパの女性とゆっくり話をしたわけでもないので)バーバラとスーザンを見ているとなんとなく、この二つの国の女性の違いを感じた。オーストリアの女性はざっくばらんで積極的、マナーもすこしラフ。いろんな話がすぐに出来る感じなのだ。それに比べるとスイスの女性は初対面だとなんとなく冷たい感じがする。口もなかなか開かない。でもこっちがその冷たいつんとした感じにめげずに、ざっくばらんに熱心に話しかけていくと、正直に気取らずに話し始めてくれる。

初めは寡黙だったバーバラが彼女のワイン学校の生徒のことを話してくれた。若い生徒はボルドーとかブルゴーニュのワインには興味がなく、カリフォルニア、スペイン、オーストラリアといった(彼女は外国のワインと表現した)フルーティなワインを好むのだという。彼女はそれをちょっと苦々しく思っているようだった。いつかなんとしてもボルドーやブルゴーニュの複雑で洗練されたワインの良さが理解できるように教えたいと、きっとした表情でいった。私が若いうちはフルーティなワインを飲んでいても年齢とともに他のタイプのワインも好きになっていくんじゃないのといったら、そうかもしれないわねといって賛成してくれた風だった。

料理はコースになってたくさんいただいたのだけれど、会話に忙しくて料理のメモを取っている暇がなかった。外反母趾の手術前に、ワインの勉強をしているヨーロッパの友人たちと美味しい料理とワインのテーブルを囲む機会があってとっても楽しかった。各自の国でワイン業界の重要な人物になっていくだろう彼女や彼たちと、再会する日が楽しみだ。

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