ソノマの暮らしブログ

カフマン 恵美子 はまだ経歴を設定していません

多民族国家の歪み

1月末、サンフランシスコの人通りがない住宅地の歩道を黒っぽいヤッケを着た痩せぎすの初老のアジア人が歩いていました。突然、黒っぽいジャージーを着て野球帽をかぶりマスクをした細めの若者が、後ろから襲って押し倒して逃走。

数日後、同じような事件が起こって、押し倒された初老のタイ人は転倒した時に頭を強く打って死亡しました。

最近、頻繁にアジア人バッシングが報道されています。

昨年の3月から今年の3月までにアジア人を対象とした嫌がらせを含む攻撃の被害は3800ケースと急増。届けを出していないケースを含めると、その数はもっと多いだろうと言われています。

アジア人バッシングを調査している組織によると、言葉による嫌がらせが68%、嫌がらせを避けた人が21%、暴力を受けた人が11%、被害者は3分の2が女性、また中国系アメリカ人が40%、韓国系アメリカ人が15%、フィリピン系アメリカ人が8%と発表してます。

アジア人バッシングが警告されている中、3月16日にジョージア州のアトランタ市近郊で21歳の若者がアジア系女性が多く働いているアロママッサージ・サロンに銃を発砲、8人が射殺される事件が起きました。警察は殺害者の動機は不明としていますが、被害者の6人がアジア人であることから、この事件を機にアジア人バッシングが、大きく取り上げられるようになりました。

アジア人は習慣として(日本人も含めて)、嫌な目にあっても大事になることを避けて我慢します。アジア人は優秀な移民で、多くの成功者を出しているというのが一般的な評価です。

でもアジア人バッシングが激しくなってきたことから、若い世代の後押しで、アジア人が、長い間、差別を表に出さず、我慢してきた事実を公に話すようになりました。

あちこちでアジア人バッシング反対のデモが繰り広げられました。多くの若い世代のアジア人、それに白人も参加しているデモを見て、若い世代がアメリカ社会に深く根付いている人種差別を克服していくかもしれないという希望を持ちました。

今日(3月31日)もニューヨークでアジア人が蹴飛ばされて骨盤を骨折するという事件が報道されています。

中国系アメリカ人のプロのバスケットボールのプレーヤーはプレー中に「コロナウイルス」とよばれたと発表。

「お前は汚い!自分の国に帰ろ!」と怒鳴って唾を吐きかけられた人が少なくありません。

トランプ前大統領が記者会見でコロナウイルスを「チャイナウイルス」とか「カンフルー」と何度も繰り返し呼んだので、中国人とコロナウイルスを結びつけたのでしょう。

今のところ、アジア人が多く住んでいるロスアンゼルス、サンフランシスコ近辺、ニューヨーク、シカゴなどの都市で多くの被害が出ています。

世の中が不安な状態になると、怒り、恐怖、フラストレーションをぶつける対象に、一定の民族をスケープゴートにして攻撃をするようになります。

世界第二次大戦のときに日本人(アメリカ市民であっても)が全員収容所に入れられました。

1982年に日本車の輸入数が多くなって、アメリカ自動車業界は不調のため多くの労働者を解雇しました。デトロイトの自動車産業で働いていた二人の労働者が、日本車の輸入のせいで解雇されたと日本人に恨みを持ち、バーで友人と語らっていた27歳の中国系アメリカ人、ヴィンセント・チンという若者(結婚を1週間前に控えていた)が野球バットで殴り殺されました。彼らにとっては日本人であろうが中国人であろうがヴェトナム人であろうが、関係ないのです。殺人者の二人に罰金が3000ドル、3年の保護観察という軽い判決が出されて、アジア人軽視の風潮が大きく取り上げられました。

中近東のテロ事件が多く発生するようになった時には、イスラム教の人たちがバッシングされています。

「お前はウイルスだ、自分の国へ帰ろ」と言われたら、アメリカ生まれのアジア系アメリカ人はどんなに悔しいことでしょう。彼らにとって自分の国はアメリカなのですから。

「英語上手だね。どこから来たの?」と聞かれると、アメリカ生まれの生粋のアメリカ人だと思っているアジア系アメリカ人は「自分はこの国に属してしていないのか?」と複雑な気持ちになると話していました。

ソノマは大半の住民がリベラルだと思うので、嫌がらせをされることはないと思っています。もし「自分の国へ帰ろ!」と怒鳴られたら、怒り心頭なのは100%確実ですが、私には日本という誇りに思っている国があります。

帰る国がない人、帰ることなんかできない人の悲しさ、悔しさに心が痛みます。

万が一、嫌がらせを受けたときに、言い返す言葉を考えました。

緊迫した状況の中で、即、言い返すことができなくて、後で悔しくて、「ああ言えばよかった、こう言えばよかった」と後悔するタイプなので、考えたのです。

「私は中国人じゃない!ところでそういうあんたは何人?」

家族に意見を聞いてみました。

「中国人を突き放すの?それってちょっとね」と夫。

デトロイトで中国系アメリカ人が日本人と勘違いされて撲殺された事件をきっかけに、これまで民族間の接触をしてこなかったことに気が付いて、アジア人は協同して反対運動を繰り広げることが大事という結論に達したのです。

だから私の反撃の言葉は,その共同体から中国人を退かせるということにつながるんだという解釈なのです。

多民族の国は難しいです。

社会や経済状況が不安定になると、親切で素晴らしいアメリカと、醜いアメリカが浮き彫りになります。

サンフランシスコで70代の中国人女性が信号待ちをしていたら、突然、男性に顔を殴られて両目が腫れて出血してるニュースがベイエリアのテレビで特報されました。テレビ局のクルーが、偶然、居合わせたのです。この女性は英語が話せないので、中国語でわんわんと泣きながら訴えてました。孫がGoFundMeという資金調達プラットフォームで治療費の募金をお願いしたら、なんと100万ドルの寄付が集まったそうです。アジア人バッシングに心を痛めている人がたくさんいるということですね。家族は彼女が受けた被害は、彼女だけの問題じゃない、もっと大きな問題だということで、このお金をアジア人バッシングを守る会の組織に寄付すると発表しました。

多くの人種が共存しているアメリカという国の平穏な時には現れない歪みが、コロナという異常事態が起きた時代に現れた歪みなのでしょう。

esquireの写真を使わせていただきました、

 

 

 

 

人種バッシングに強い声で反対を訴えると同時に、日常的にすぐには変わらない根深い人種差別を少しでも無くしていく運動をするしかないのでしょう。

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