両親が江別で元気に暮らしていたころのことです。
「お父さんは何回も胃カメラを飲んでるもんだから、自分で麻酔のスプレーをして喉から管を自分で入れてたよ」と母が話してました。
「胃カメラを飲むっていうのは、意外と簡単なんだなあ、日本の技術はすごいなあ」と思って聞いてました。
先日、アメリカで胃カメラを飲むことになりました。
私はKAISERという保険に加入しているので、KAISERの病院で検査を体験したので、他の病院ではどういう感じなのかはわかりませんが、例外なく鎮静剤を点滴で注入するようです。
このところ胃痛が頻繁に起こって、担当医の指示で胃酸を抑制する薬を飲んでいたのですが、痛みが取れませんでした。
医師とのやり取りはEメールとテレビ電話です。
「薬が効かない場合は、内視鏡検査をしましょう」と言われたのですが、コロナ感染が最高潮に達していたころなので、病院へ行くことは避けてました。
担当医が処方してくれた胃酸を抑制する別の薬を飲んで痛みが取れることを期待したのですが、やっぱり痛みは取れません。その旨を報告したら「内視鏡検査をしましょう。心の用意ができたら連絡ください」とメールで返事が来ました。
コロナ感染率がぐんと低くなったので、「痛みの原因が知りたいので内視鏡検査を予約してください」とお願いしたら、早速、スケジュールを決める方から電話が来て、7月2日午前10時15分に「胃カメラを飲む」ことになりました。
KAISERから検査の1週間前に長ーいメールが入りました。
検査の2日前にコロナのテストを受けること。6月30日午前11時10分にテストのスケジュールが入りました。
検査の前日6時間前から食物を取らないこと、水分は検査の3時間前から飲まないこと、当日は運転してくれる人と一緒に来ること、病院内は常時マスク着用なので、マスク持参することという指示です。
夫の運転で午前10時に到着、ロビーで待つこと20分。
大柄な男性の看護師がロビーにやってきました。
「ロビーで待ちますか?それとも外へ出てますか?」と夫に聞いてます。
「ロビーで待ちます。ここで仕事してます」とラップトップを膝に置いた夫が答えたら、「あっ、それじゃ携帯番号を聞かなくてもいいですね。検査にかかる時間は5-10分程度なんですが、鎮静剤の点滴をしたり、それが消えるまで待つなどで、2時間くらいかかります」
手術準備室みたいな部屋のカーテンで囲まれたベッドへ案内されました。
同室にあるトイレを指さして「トイレに行く?」
「うーん、大丈夫だと思う。でもやっぱり行きます」
「安心のために行っておく?」優しい声で言ってくれました。なんと優しい看護師(男性)さんでしょう!
手術の時と同じガウンに着替えてベッドに横たわりました。カーテンでぐるっと囲まれているのですが、中は広々としてます。
昨夜、胃痛でよく眠れなかったので、どうせ待たされるのだろうからここで寝ようと思ったのですが、天井の電気が明るすぎで眠ることができずにがっかり。ここでもかなり待たされましたが、看護婦さんがやってきました。
「ハーイ、待たせてごめんなさい。私の名前はキャシーです。質問しますね。」とフレンドリーです。
ベッドの横のデスクにコンピューターや医療器具が設置してあって、椅子に座ったキャシーが、現在飲んでいる薬、アレルギー等について質問をしてコンピューターに入力していきます。
すぐに戻るからと言って消えたキャシーは、またしばらく戻ってきません。
戻ってきて、「今日は金曜日、明日から休暇なのに、忙しいわあ」と苦情というよりフレンドリーに話しかけてきます。
「休暇はどこへ行くの?」
「テントを持って湖にキャンプに出掛けるの」と楽しそうです。
その間、左腕に血圧を測るためのベルト?を巻き、右腕には鎮静剤を点滴で注入するための針を一発で決めました。
余談になりますが、私の血管は細くてよく見えないのです。日本にいるときは必ず数回やり直しでした。一度は手の平の血管に刺されたことがあります。
カリフォルニアでの経験では、血液検査とか点滴の際に、どの看護師も一度で血管に針をスパッと刺すのです。
一度だけ、血液検査に行ったときに、日本女性が私の血液採取の担当でした。日本語を話す生粋の日本人です。カリフォルニアで訓練を受けたはずだから、一回で血管に刺すよねと信じていたのですが、なんと3回刺されました。
日本人の女性は優しすぎて、ぱっと刺させないのかなあ、それとも日本女性の指の力が弱いのかなあ、あれこれその理由を考察?してみたのですが、、、。答えはありません。
ベッドごと検査室に運ばれました。本当に手術を受けるときと同じなんです。
「胃のどこが痛いの?」検査をしてくださる小柄な女医さんが聞きました。
「みぞおちあたりです」
「痛みの原因は胃からだけとは限らないからCTスキャンもしましょう。予約の手配をしておきますね」と、この場でパット決めました。てきぱきとした素敵な女医さんだなあと感心してしまいました。
「ちょっとまずいけど、口の中を麻痺するためになめてください」
「お腹がすいてるから、何でも美味しく感じるかも」と私。
女医さんは大きめの綿棒を私の口の中に入れながらフフフと笑いました。
おなかが空いていたけれど、美味しいとは感じませんでした。
ここまでずうっとマスクをしたままでしたが、ここではマスクを少し下にずらして、口の中に口が閉まらないようにしてカメラのチューブを通す器具が入れられました。
ここまでしか覚えていません。
鎮静剤が効いて、深い眠りに落ちたのです。
目が覚めたのは、手術準備室のような部屋の検査前に横たわっていたときと同じ場所のカーテンが閉まったベッドの上でした。
検査後の指示を書いた数ページの紙が渡されました。
第一行に検査して下さった女医さんの報告がすでに書かれています。
今日の検査で私が見たもの:
*胃に炎症が起きている。
*胃と食道の組織を採取(バイオプシー)しました。
よろよろしながら服に着替えて、キャシーが持ってきた車椅子に乗って病院の出入り口に向かいます。
レイが車のエンジンをかけたまま待っている自家用車に乗り込もうとしたら足元が怪しい私を、キャシーが助けてくれました。
働いている人たちはみんなきびきびしていて親切でした。
午後2時ころに家に着いても、まだ眠いのです。眠さは夜まで続きました。
父が胃カメラを飲んだ話とは違って、アメリカで飲んだ胃カメラは一日がかりの検査でした。
アメリカでは患者の不快さを徹底的に取り除くということなんでしょうか。
次はCTスキャンの初体験です。