シャルドネ昨今
一言でシャルドネといってもいろんなタイプ(スタイル)のシャルドネがある。そしてそのタイプが時代とともに変わる。
このところ、オークの風味とフルーツ味がたっぷりの過熟気味のブドウから造られた、ちょっとフルーツの甘味が残るスタイルから、軽めでオークの影響を抑えて、酸味の利いた引き締まったタイプのシャルドネが造られ始めているといわれている。
高級シャルドネにその傾向が強いのは確か。IPB(もともとはピノを生産、ここ数年、シャルドネも加わった)というグループを中心とするアルコール度が極端に高いということがなく、酸味がしっかり利いたフレッシュなシャルドネを生産する動きがさざなみのように広がっている。でもこのグループに所属するワイナリーは例外はあるけれど、小規模でハンドクラフトのワインを出しているワイナリーが大半だ。それに価格も決して安くない。
で、中規模で30ドル以下のシャルドネを出しているワイナリーのシャルドネも、スタイルを変えてるのかなと思って、いろいろ飲んでみた。
2012 Talbot Logan Sleepy Hollow Vineyard $28
黄金色。色から見て、これはフレッシュなタイプのワインじゃないとわかる。澱の香り。このワイナリーの独特のスタイルは常にマロラクティック発酵がバーンと利いているところ。フルーツの種の味、バタークリーム、シルキーなフィニッシュ。
スタイルは変えていない。このタイプが好みというシャルドネファンも少なくないのだろう。よくできたワインだけれども、フレッシュなタイプのシャルドネを求める人は避けたほうがいい。
2012 Morgan Highland Santa Lucia Highland $28
明るい黄金色。シトラス、レモンクリーム、バタートースト、フルーツの種。
ちょっとだけスタイルが変わっているというか調節したかも。でも軽やかで酸の利いたシャルドネではない。ノー・オークのシャルドネ(Metallico Un-Oaked, Monterey)も、生産しているので、お好みで選んでくださいということなのだろう。
2012 Edna Valley Paragon Central Coast $15
明るい黄金色。アロマはあまりない。口に含んでもあまり味がなく、甘くて少し苦味のあるフィニッシュ。軽いのりでポップコーンなんかと1グラス飲むのにいいかも。
2012 Benziger Family Winery Sonoma County $17
くぐもったシャルドネ香。オークの香りとMLの香りがちょっと。酸味とレモンの長いフィニッシュ。濃厚タイプと軽やかタイプの真ん中あたり。
グッドヴァリュー。
2012 Benziger Family Winery Signaterra "West Rows" Sangiacomo Vineyard Carneros $32
こちらのワインのほうが、フレッシュなシャルドネを好む人に向いているけれども、低アルコール度の酸味が利いた引き締まったタイプと濃厚タイプの真ん中あたり。ステンレスとオーク樽の両方で発酵、新樽は25%。MLの香りがほんの少し、ミネラル、シトラス、フルーツの種。きれいな造り。
*Benziger Family Wineryはスタイルを変えている。数種類のシャルドネを造っているので、価格によって、あるいはタイプによって選べるのがいい。
2012 Farrari-Carano Sonoma County $23
オレンジの香りと味わい。フルーツの甘味が強く、ふくよか。このタイプが好きな人も(カリフォルニアでは)多いと思う。ここのシャルドネが一世を風靡した時代がある。そのシャルドネの面影を残していて懐かしい。少し調整しているけれど、フレッシュなスタイルのシャルドネではない。
2012 Chateau St Jean Sonoma County $14
洋ナシの香りがほんの少し。味わいがやや水っぽいけれど、辛口で長いフィニッシュがいい。グッドヴァリュー。
2012 Chateau St Jean Sonoma Coast $20
キーウイー、スパイス、少しのオークの味と香り。レモン、ライムの酸の長いフィニッシュ。
2011 Chateau St Jean Robert Young Vineyard Alexander Valley $25
香りからも厚みが感じられる。このブドウ畑のシャルドネはトレンドが変わるまでは一世を風靡した。フルーツの種、とろみ。レモンの皮と少しのオークの長いフィニッシュ。2011年なので、多少軽やかだけれど、2012年はもう少し味に厚みがあるのかも。
2012 Chateau St Jean Cold Creek Ranch Sonoma Coast $30
かんきつ類、特にレモンのきれいな香り。少しのオークとフルーツの甘味。きれいな酸味の長いフィニッシュ。
*Chateau St Jeanは秀才ワインではないけれど、程よい価格で良質のワインを生産している。価格あるいはスタイルで選ぶことができるのがいい。たっぷりのオークと過熟ブドウを使ったスタイルのワインは造っていない。
総体的に、ひところのこれでもか!というオークとバタリーな香り、濃厚なフルーツの味わいが特徴的なスタイルから、多少トーンを落としている。2011年はヴィンテージのせいで、かなり軽めのシャルドネを好むと好まざるとに関わらず出したワイナリーも少なくない。2012年は理想的な天候だったから、意図しているタイプのシャルドネが生産できたはず。その中でスタイルを変えたワイナリーは酸味の利いた軽やかなシャルドネをリリースしてる。例えばハンゼル(Hanzel)はデリケートなシャルドネの生産に完全に切り替えている。
逆は、例えばコングスガード(Kongsgaard)。スモーキーでシルキーな口当たり、マーマレード、みかんといったフルーツが特色の、そのスタイルに多くのファンが付いている。より洗練されたワインに仕上げているけれども、スタイルは変えていない。
酸味が素敵な引き締まったスタイルが好みの方は、トレンドとしてシャルドネのスタイルが変わったからどのワイナリーのシャルドネもそうかもしれないと思って買うと、失望する。飲んでみて好みのタイプのシャルドネを造っているワイナリーを見つけるしか手がないようだ。でもタイプが増えたということだから、ワイン消費者にとっては選択幅が広がったということでもあるよね。
毎晩、ディナーにシャルドネが出てくるので、ちょっと飽きた表情の相棒でした(笑)