カリフォルニアのGSMワイン

GSMワインはローヌ系品種の、グルナッシュ、シラー、ムルヴェードルをブレンドした赤ワインを指していて、3品種の頭文字をとって略してGSM

このところブレンドした赤ワインが高いのから安いのまで、多く出てきている。ご存知のようにカリフォルニア(アメリカ)は、ヨーロッパのワイン法と違って、どの品種とどの品種をブレンドしようが、法律による規制がない。

メルタージはボルドー系品種のブレンドだけれど、他に「えっ、残ったワインをブレンドしちゃったの?」と思ってしまう予想外の品種をブレンドして出してるワイナリーもある。究極的には美味しければいいのだと思う。それにフレンドリー価格だともっといい。高いのもあるけれどね。

GSMは南フランスのローヌ・ヴァレーの伝統的ブレンドでもあるから、カリフォルニアでもその伝統を受け継いで生産している。

ブレンドしたワインが多くリリースされ始めたもうひとつの理由としてアメリカのワイン市場の変化があげられている。

話はさかのぼって1978年にカリフォルニアの法廷がホールセーラーにとって、不利な判決を出したことから、アメリカのホールセーラーの数が激減してしまい、少数の大手ホールセーラーのみが存在するという現象が起きてしまった。

大手は利益が増し、どんどん大きくなっていって、小さなワイナリーを扱うのは頭痛の種だと言い出した。そのために小さなワイナリーは、メールオーダーなどの直接販売を余儀なくされた。さらに大手のホールセーラーは、ひとつのワイナリーから多くのワインを出してもらっても、扱うのが大変だから、ワイナリーは生産ワインの種類の数を減らすようにと要求。

ワイナリーは少量生産の単一品種は扱ってもらえなくなった。そのため少量生産の単一品種のワインはテイスティングルームとかメンバーのみに出していることが多い。

ワイナリーの解決策はブレンドしてひとつのワインとしてリリースすることだ。その結果としてメルタージが生まれたともいわれている。

次にシラーの時代がやってきた。15年ほど前のこと。私も含めて、カベルネ、メルローの次はシラーが売れるだろうと予想したのだけれど、個性のあるシラーはあまり出てこなくて、シラーの栽培面積が増え、そして値段が上昇。よくある話。ヴァラエタル・ワインとしてのシラーは扱ってもらえない。予想したよりもシラーは売れない。そこでブレンドしたワインとしてGSMが登場。

チェックすると50ドルとかする、決して安くないGSMが造られている。一方、バルクで出されて、Trader Joe’s とかCostco (ラベルはKirkland)や Whole Foodが自社ラベルでフレンドリー価格で出しているのも多い。

帯状疱疹の回復が遅くて、残念ながらたくさん試飲ができないので、中価格帯の3つのGSMワインを相棒に助けてもらって試飲してみました。

2013Clos de Gilroy Monterey County Grenache (14-$17)

黒チェリーや熟して凝縮したブドウ、クローブ、ジンジャーブレッドの香。うまくまとめている。若いヴィンテージのせいか、フィニッシュに酸の収斂性からくる苦味があるのが、気になる。鶏のレバーの焼き鳥なんかに合いそう。ちょっと冷やして飲むといい。

ボニー・ドゥーン・ワイナリー生産

グルナッシュ(75%)、シラー(17%)、ムルヴェードル(8%)

2013 GSM Hahn ($14-$17)

ラズベリー、ボイズンベリー、少しの花崗岩と鉄の香。ジューシーでフレッシュ。シャープな酸のフィニッシュ。

グッド・ヴァリューのワイン生産で知られるワイナリー。特にSLHのピノ・ノワールは好評。

グルナッシュ(60%)、シラー(37%)、ムルヴェードル(3%)

ClGilroyHa

2013 Edmunds St. John Rocks and Gravel ($28)

薄い紫色。花、スパイスの香。上品で口当たりがシルキー。フレッシュで長いフィニッシュ。上の2つより10ドルほど高い価値はある。

ローヌ系品種のブレンドのスペシャリスト。このブレンドで、ブドウ畑は変わっているけれども14年間生産している。ソノマ・カウンティのバイオダイナミック栽培をしているUnti Vineyard のブドウから生産。フルーツ爆弾のワインは一貫して造っていないため、ワイン評論雑誌のレーダーから外れているけれど、根強いファンが存在する。ワインのスタイルの潮流が変わり始めているので、新たに注目されるかもしれない。

グルナッシュ(50%)、シラー(25%)、ムルヴェードル(25%)

「どんな品種がブレンドされているか、聞くお客さんは非常に少ない。美味しくて、適切な値段なら商品が動く」とあるワインショップの方は話してる。

カベルネ、メルロー、ピノ・ノワールといった、ボルドーやブルゴーニュを離れて、美味しい赤ワインを気軽に楽しんでみるのもいい。