カリフォルニアのグルナッシュ

インターナショナル・グルナッシュ・デーにちなんで、この原稿を書き始めたのだけれど、サンプルの到着が遅かったため、と、なんとなくぐずぐずしてて(苦笑)今になってしまいました。

グルナッシュ種は世界でも栽培面積が多い品種(約20万ヘクタール)なのだけれど、カリフォルニアでは(日本でも?)この品種に対する尊敬度?(注目度?)は、いまいち。

その理由は、ボルドーでもブルゴーニューでもないからかな?

原産地は北スペインとされ、それが南フランスに広がった。フランス(約10万ヘクタール)とスペイン(約7万ヘクタール)で多く栽培されている。次いで主に南イタリアで約2万ヘクタール。アメリカ(主にカリフォルニアとワシントン州)で約4000ヘクタール、オーストラリア3000ヘクタールとなっている。

南ローヌ地方のワインはいろんな品種がブレンドされているけれど、グルナッシュ種はそのブレンドのひとつとして使われている。シャトーヌフ・デュ・パプではシラー種、ムルヴェードル種にブレンドされている。いわゆるカリフォルニアでよくネーミングに使われる、SMGワインだ。

カリフォルニアでは19世紀からサンホアキン・ヴァレー(広くて平らな土地)で栽培されてて、収穫量をがーんとあげて低価格のジャグ・ワインが生産されていた。このこともカリフォルニアでグルナッシュのマイナスなイメージが定着してしまったのだと思う。

ローヌ・レンジャーという組織(ローヌ・ヴァレーで栽培されている品種から生産したワインのプロモーションをしようとアメリカの醸造家たちで組織された)が作られて、グルナッシュの評価も徐々に高くなってきている。このグループは初めはシラー生産に力を入れていた。私もカベルネの次はシラーブームが来ると信じていたのだけれど、並なシラーがたくさん出回ったこと、良いシラーは高いことなどから、ブームはやってこなかった。

今、カリフォルニアではローヌー系品種のワインだけを造るワイナリーもあって、静かではあるけれど、ファンが確実に存在している。グルナッシュがシラーに代わってスターになってくれるかもという期待も込めている。希望の星だ。

で、グルナッシュの栽培に適している地区は?今のところ、カリフォルニアのあちこちに点在している。サンタ・バーバラの高地、カリストガ、ローダイの東部の火山質の土地、シエラ・フットヒルズの花崗岩が含まれた地域、ソノマの例えばロシアン・リヴァー・ヴァレーのように涼しい地区、樹齢のいったグルナッシュ種が植えられている畑があるメンドシーノ地区のマクドウエル・ヴァレーといったところが、話題に出てくる。

もともと樹勢の強い品種なので、サンホアキン・ヴァレーなどでは、大きく育てて、たくさん房をつけさせて、大量に収穫する。そういうブドウからは色の薄いタンニンの少ない、酸味に欠けるホロリと甘いワインが造られる。

一方、暖かく乾燥した土地、涼しい土地、片岩、花崗岩が含まれた土地など適切な土壌で収穫量をコントロールして栽培されたグルナッシュ種から酸味のしっかりしたワインにエネルギーがあり、しかも熟成できるグルナッシュが出来上がる。

そんなグルナッシュに会えるかなあと、短期間なので、試飲できたワインの数は限られているけれども飲んでみました。

Cedar Ville Vineyard

シエラ・フットヒルズの標高762メーターの高地にある花崗岩が含まれた畑で、 2010年からオーガニック栽培。ジョナサン・ラッチスとスザン・マークスの二人で栽培、醸造を手掛ける小さなワイナリー。シエラ・フットヒルズAVA エル・ドラド地区 約6ヘクタールの自社畑を所有。

一度訪れて、畑の頂上から広大な景色を眺めてみたい。

2013 Grenashe($25)

1996年にタブラス・クリーク苗家(?)から穂木を入手。

やや濃い目のルビー色。高地で太陽を直に浴びて育ったブドウから生まれたワイン。ほどよくジャミーでフィニッシュに酸味がきれいに残る。オレンジピール、クランベリーソース。フルーツの滑らかな甘味の優しい口当たり。程よいコク。暖かさを感じさせてくれるワイン。

14%のシラーと一緒に発酵。

Two Shepheds

ソノマ・カウンティのウインザーにワイナリーを持つ年間生産量1000ケースという小さなワイナリー。グルナッシュ、グルナッシュ・ブラン、非常に珍しいグルナッシュ・グリなどローヌ系品種のワインのみを生産をしている。自然酵母で発酵。

2013 Gurenache  Saralee’s Vineyard, Russian River ($38)

明るいルビー色。ラズベリー、チェリーなどの赤系フルーツの味わいと香。美味しさが長く続くフィニッシュ。エレガントで華麗なワイン。程よいボディがあり、タンニンも感じられるので、豚肉、ターキー、チキンなどにもよく合いそう。ピュアでプリティ。

ブルゴーニュのグラスで飲んでほしいというのが、作り手のリクエスト。

Dashe Cellars

オークランドにワイナリーを持つ。フランス人の奥様との二人三脚。華麗なドライ・クリーク、ジンファンデルで、このワイナリーを認識していたけれど、華麗なグルナッシュを2007年から生産。

2014 Les Enfants Terrible, Dry Creek Valley ($24)

きれいなルビー色。ボージョレー・ヌーボースタイルに造っているとのこと。確かにガメ種の香りがする?軽やかでクリーン、クランベリーの味わいに上品なタンニン。プリティなワイン。ほどよく熟した美味しい酸味のフィニッシュ。10%全房を使用。90%は除梗。自然酵母。

フランス語のタイトルは悪ガキもしくは問題児(ひどい訳でスイマセン)で、これは自分たちの子供のことではなくて、この品種の栽培に苦労したことからネーミングされたとか、、、。

Unti Vineyards

2012 Grenashe ($35)

グルナッシュ種(85%)にシラー種(15%)をブレンド。

フルーティな味わいをグルナッシュ種から、シラー種からはタンニン、アロマ、色とボディ、味わいに複雑味を出すのがブレンドの狙い。シャトー・ヌフ・パープ タイプのワイン造りを意図している。自然酵母。

色は濃い。黒系フルーツ、深い香り、ふくよかでフルーティ。酸味は少しシャープ。

華麗なスタイルの逆でコクのあるタイプだけれど、どたっとした重みは感じられず、しなやか。

結論

とはいえ、現実としてはカリフォルニアのグルナッシュの栽培面積は全部で2400ヘクタールにすぎず、そのうちの2000ヘクタール以上が収穫量が多く、大量生産ワイン用のブドウを栽培する地区で栽培されている。

今まで、気軽に、あっ、グルナッシュねといった感じで飲んでたけれど、今回は意識を集中させてグルナッシュを飲んでみた。エレガントでピュアなフルーツ味のある綺麗なタイプは十分に魅力的だった。それに値段もすごく高いということがない。日本人の味覚と日本の料理にも合う思う。

カリフォルニアワインというと、濃厚なタイプを思い浮かべる方も多いだろう。カリフォルニアの気候と土壌でしか造ることができない、濃厚で、でもエレガントなカベルネとシャルドネは世界に誇る素晴らしいワインであることは確か。エレガントなピノ・ノワールも出回ってきているけれど、価格が高くなってきている。

時には枠を超えて、違ったタイプ、品種のワインを飲んでみるのも、ワインの世界が広がって楽しい。

PS: 栽培面積等は、「本当にグルナッシュが好きなんだ」という、友人のワインライター、ランス・カトラーの情報を使わせていただきました。