ソノマの暮らしブログ

カフマン 恵美子 はまだ経歴を設定していません

衆議院議員ジョン・マケインの死

衆議院議員のジョン・マケインが8月25日に享年81歳で悪性の脳腫瘍のため亡くなりました。脳腫瘍が発見されてから、1年余後のことです。2009年に衆議院議員だったテッド・ケネディ(享年77歳)も同じ病気で亡くなっています。 ジョン・マケインは一匹狼の政治家と呼ばれていました。信念を曲げずに共和党に属する議員であるにもかかわらず、時には共和党の政策に批判を恐れずに正々堂々と反対した議員だったからです。

米軍の海外派遣に積極的だったことから、私は同議員を支持していませんでしたが、素晴らしい政治家だなと同議員に対する考えを変えました。共和党とトランプ大統領が政権を取ってから、オバマ前大統領と民主党の議員が政治生命をかけて成立させたオバマ・ケアと呼ばれる(本当はAaffordable Care Act 略してACA)健康保険制度を廃止しようと議員の投票を求めた時のことです。オバマ・ケアが成立する前は各人が経済状態によって、様々な保険会社の保険を買うというシステムで、持病があったりがん患者は保険購入を拒否されるということが珍しくありませんでした。オバマ・ケアは持病があっても癌にかかっていても保険会社が拒否することを禁止し、誰でも健康保険(経済援助をすることも含めて)に入らなければならないという画期的な法律です。多くの人が生まれてはじめて健康保険に入ることができたのです。 オバマ前大統領が成立させた法律は全て否定しようとする共和党とトランプ大統領の政策の一つでした。数人の共和党の議員がオバマ・ケア廃止に反対を声明していて、賛否の投票数が接近していました。あと一人の議員が反対するとオバマケア廃止案が破棄されるという事態でした。すでに癌を患っていた同議員ですが、この政策が執行されたらどういう結果が出るのか等、共和党の政策はきちんと両党で討議されていないと主張し、親指を下に下げて「ノー」と反対の意思を表明したのです。共和党議員は唖然としました。以来、トランプ大統領は同議員をけなし続けてきました。

同議員は自分の主張が間違っていたと悟ったら、間違っていたときっぱりと公表するという政治家には珍しい人物としても知られていました。 オバマ前大統領との大統領選挙で負けた時にも、きっちりと敗戰のスピーチをして、「オバマ大統領は私の大統領です」と宣言しています。

またユーモアたっぷりの議員だったようです。オバマ前大統領に負けた翌日、テレビのトークショーに出演して、 「昨夜はよく眠れましたか?」 「イエス、赤ちゃんのように眠れました。2時間眠って、2時間泣いて、また2時間眠るというのを繰り返しました」 質問した人はひっくり返ってました。

マケイン議員(海軍のパイロット)はヴェトナム戦争で捕虜となって、5年間、ヴェトナムでひどい拷問を受けて留置されていました。同議員の父親と祖父が海軍の偉い人だったためにヴェトナム軍から自白したら釈放してあげると言われたのにもかかわらず、プロパガンダに使われるのを拒否して拷問を受けながら、他の捕虜とともに残り、ニクソン大統領の交渉によって他の捕虜と一緒に釈放されたのです。このことからマケインはヒーローだと尊敬されてきたのですが、トランプが大統領候補の時に「捕虜はヒーローじゃない」として、マケイン議員をヒーロと位置付けるのを拒否し続けてきました。というトランプ自身はお金に物を言わせてヴェトナム戦争の徴兵猶予を受けています。

衆議院議員であるにもかかわらず、国のために一生を捧げた議員として、大統領と同格の敬意を表した葬儀が数カ所で行われました。 同議員が亡くなった日にホワイトハウスのアメリカ国旗が半旗で掲揚されていました。通常、亡くなった人物の埋葬が終わるまで半旗(約1週間)なのですが、トランプ大統領は、翌日、半旗を止めて通常通りに国旗を揚げました。軍、退役軍人の組織、多くの議員たちの非難に押されて、しぶしぶ再び半旗にするという、人間としての質が、又しても疑われる行動でした。

 

同議員のすごいところは、国民への告別の手紙を書いていること、そして自身の数カ所での葬儀を全て計画していたことです。 生前にオバマ前大統領とブッシュ前大統領に電話してワシントン国立大聖堂で行われる葬儀での弔辞をお願いしているのです。トランプ大統領には来てほしくないとはっきり拒否。

民主党の大統領と共和党の大統領に弔辞をしてほしいという同議員のメッセージは、一党だけに固まって他の党を敵視する今の議会のあり方を批判して、両党で妥協できるところは妥協して、国のために良い政策を打ち出していくようにということです。 同議員のメッセージが、今の議員たちの胸にどのくらい響くのか、、、、。 明日から、また共和党が独占的なやり方で、政策を進めていくというパターンが続くのだろうというのが、私の予想です。残念ながら、、、。

告別の手紙には「愛国心と同族的拮抗を混乱してはいけない。同族的拮抗は国民が張り合うことを奨励して、不満と憎しみと暴力を地球中に振りまく。」とトランプ大統領を強く批判しています。 「困難な今の状況に絶望せず、常にアメリカは偉大であることを信じなさい。なぜならこの国では不可避であることはないからです。アメリカ人は決して屈することはしません。我々は決して降伏しません。我々は決して歴史から逃れません。我々は歴史をつくるのです。」というメッセージにほろっとした国民が少なくありません。

「いつかは地球から消えていくのが人間。間違いもあったけれど、自分の人生に悔いはない。」と爽やかに宣言しています。 80代になっても精力的に外交のために多くの国を訪れていて、盛りだくさんのスケジュールをバンバンこなして一向に年齢を感じさせなかったそうです。その精神力を学びたいものです。

私事ですが、数年前に、あるいは昨年できたことが、今はできなということが年齢とともに増えてきてます。ここで精神力が試されます。 散歩していたときのことです。ブドウ畑に沿って掘られている溝を飛び越えようとしたのですが、ぱっとジャンプするつもりだったのに、なんとできなくなっていてショックでした。でもできなくなったことを嘆くより、今できることを積極的に実行して暮らしていこうと思いなおしました。だって、ジャンプはできなくても、まだ足早に歩くことができるし、物忘れが多くなってきてるけど、忘れたら、もう一度覚えることがまだできるし。いつか足早に歩くことも、難しくなる日がやってくるのだから。

マケイン議員のような強い意志と信念をもって国のために尽くした人物とは次元が違うけれど、私も悔いがない人生を送りたいものだと思いました。今を生きることが大切だなあと思うのです。言うのは簡単で実行するのはすごく難しいけれど、同議員のように悔いのない人生だったと爽やか言える人生を送りたいものです。

pictures are from leaningenglis voanews.com

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