娘を大学入学のために送り出してから、かれこれ約10年ほど、夫と二人で暮らしていました。猫を家族の一員として迎えたのが3年前。
ところが今年の一月半ばから我が家の家族に猫と娘が加わり一緒に暮らすことになりました。
3年前に動物保護のシェルターから生後4ヶ月ほどの子猫を引き受けてメラと名付けました。4月で2歳半。いつもいつも遊んで欲しいまだまだやんちゃなメラです。
メラはお腹を動物に噛まれて瀕死の状態で助けられました。傷が大きいので手術をすることになったそうです。野良猫は一般の家族に馴染むことがないのがほとんどのケースなので、治療が終わって元気になったら、避妊手術をして耳の片方を少しだけ切って(避妊手術をしてありますというメッセーシ)野良猫生活に戻すのが一般的なのだそうです。ところが手術をしたドクターが「この猫は優しい性格なので人間の家族に馴染む可能性がある」とメモに書いたために、療養中はボランティアの家族が面倒を見て、良くなった時点でシェルターにやってきました。
その翌日、遊びに来ていた娘と何とは無しにシェルターを訪れました。病上がりでペット用のクッションに寝ていたのですが、娘が撫でると、大きな音でゴロゴロいうのです。
「ママ、この猫、大好き。うちの猫にしたい」と娘。でも娘はサンフランシスコに帰るから、私が世話をしなくちゃならないなあ、どうしようかと思案しながら、次の部屋へ他の猫を見に行こうと立ち上がって、ドアを閉めてドアの窓からメラを見たら、伸び上がって大きな目でじっと私を見ているのです。
メラが私たちを選んだのだと思います。シェルターの人にこの猫を引き取りたいと言ったら、驚いた様子で「野良猫だったことを知ってますよね?」というのですが、その意図がよくわかりませんでした。ボランティアの青年が「彼女はいろんな辛い目にあったから、優しい家族に引き取られてすごく嬉しい」と言ってくれました。
猫用品を用意して、数日後に引き取りに行きました。お天気が良い日なので、メラはベランダに出てたのですが、覚えていたのでしょう、すっと寄ってきました。この時からメラは私の猫になりました。
メラと夫と3人で暮らしていたのですが、今年の1月半ばに娘が猫一匹を連れて、ソノマの家に帰ってきました。大学と法律学校を卒業。カリフォルニアの司法試験に合格してサンフランシスコの法律事務所で過酷な弁護士業を4年続けました。
アメリカは州によって法律が違うので、連邦の法律に加えて州の法律も学ばなければなりません。例えばオレゴン州に引っ越して、弁護士として働きたいという場合は、改めてオレゴン州の司法試験に合格しなければならないのです。カリフォルの法律はややこしいらしく、アメリカでカリフォルニアの司法試験が一番難しいそうです。
日本の弁護士は良くわかりませんが、アメリカの一般的な法律事務所はクライアントに請求する金額を時間で計算します。それも6分刻みに時間を計りながら仕事をして、合計何時間かかったということで請求するシステムです。トイレに行った時間、私のメッセージに返事をする時間、ランチはもちろん、タイマーを止めます。
私から見たら時間の奴隷です。4年間、時間の奴隷として、夜遅くまで、時には土曜日も働き続けたのですが、ボスが退職して法律事務所を閉鎖することに決めたのを機会に、時間でチャージする世界から抜け出したいというので一時帰宅することになりました。
6分刻みにチャージをしない環境で一人でも助けることができる分野で弁護士として働きたいということで仕事を探しています。
娘が連れてきた猫は真っ白で濃紺色の目をした4歳か5歳くらいの猫でした。名前はユキ。雪にちなんで娘がつけた名前です。サンフランシスコのシェルターに保護されていたのを娘が引き取ったものです。
娘はユキにパティ状態の缶詰で大半がタンパク質で量を増やすための穀物が入ってない、なんとかというブランドの餌しか与えません。ドライフードは与えないという方針です。なぜかというと、猫は野生の生き物を捕獲して食べるのが本来の姿なのでドライフードを与えると腎臓に悪いそうで、年をとると泌尿器系の病気になりやすいとのこと。著名な動物ドクターの意見なのだそうです。理にかなってはいますよね。
私はメラにウエットフード(缶詰)とドライフードと両方与えていました。同じ場所で餌を与えたら、ユキがパッとやってきてドライフードを食べるのです。娘曰くユキはドライフード中毒(笑)だそうで、ユキの目の(鼻?)の届くところでメラにドライフードを食べさせないようにという注文。
で、メラの餌は私のオフィスに置いて、ドアを閉めることになりました。忘れて、ドアがちょこっと開いていると、ユキはさっと私のオフィスに行ってお皿に残ったドライフードを全部食べてしまうのです。で、オフィスのドアを開けてある時はドライフードは冷蔵庫に入れておくことと新しい規則(涙)
一人っ子(?)の暮らしに慣れていた2匹が同じ屋根の下で暮らすことになって、戸惑ったようで、なかなか仲良しになってくれませんでした。
でも最近は同じ部屋にいることができるようになりました。メラはお天気の良い日は外に出るのですが、ユキのことが気になるようで、時々家に帰ってくるようになって、夕方5時過ぎにはきちんと(笑)家に帰ってきます。
娘が猫用のオモチャを出して交互に遊ばせると2匹が順番を待って遊べるようになりました。
その光景を見ていると気持ちが和らぎます。
シェルターから猫を引き取って感じたのは、シャム猫とか(それくらいしか知らない)純粋種の猫を飼うのも素敵ですが、一生、自分の家として暮らせる場所を探している動物に安全な場所を与えてあげるというのも大切だなあということです。
今2匹の猫は安全な場所で可愛がられて暮らしています。
私は娘が帰ってきたので、楽しいのですが、娘はまだまだキャリアを築かなければならないので、彼女がまた家を出る日が来ます。
娘との今の時間をしっかりと楽しもうと思っています。
でもユキがいなくなると、寂しいだろうなあ。