ソノマの暮らしブログ

ささやかなお雛様

窓際のテーブルで春めいた日差しを浴びながら、遅めの朝食を取っていました。今朝のメニューはオーガニック専門のスーパーで揃えた、ラズベリー、ブルーベリー、刻んだ梨半分とバナナ半分にラクトースフリーのプレーンのヨーグルトとホワイト・チア・シード(Chia seed)をかけて、炭水化物はオーガニックのマルチグレイン・ワッフル。色が綺麗です。

「今日も良い天気で、気持ちがいいなあ。でも雨が降らないと干ばつになって、また夏にあちこちで山火事が発生することになるかも、、、」心の中でぶつぶつ言ってたら、早起きの圭子さんからメッセージが入りました。

「おはようございます。お雛様が近いのでお赤飯を作りました。餅米蒸して!良かったら持って行きましょうか?」

「わあ、懐かしいですね。ぜひお願いします」

「えっ、もう3月、そしてお雛様?」と軽いショック。ほぼ毎日、家で過ごしているため日月の感覚が薄れてしまったのです。

早速、母が送ってくれたお雛様を飾りました。

あでやかです。お部屋が華やかになりました。

「何段にも飾られたお雛様が売られているけど、全部アメリカに送るのは大変だから、内裏雛だけにしたからね。デパートの人が丁寧に梱包してくれたから、壊れないでで届くと思うよ」懐かしい母の声を思い出します。

母は2014年2月末に亡くなったので、すみれ色の着物を着た若き日の母の写真の前に飾ったお花が、まだフレッシュです。母が好きだったピンクと白の花のブーケを娘が買ってきてくれました。

お雛様を送ってもらってからもう15年以上の月日が経ちました。遠い日のようでもあり、ごく最近だったような気もします。

年金暮らしの中で、母が貯めたお小遣で送ってくれました。

破損なしで無事に届きました。

「なよみがお嫁に行ったら、彼女にあげてね」

「うん、わかった、約束する。ありがとう」

3月3日から4時間遅れて4日に生まれた彼女の孫は、未だに独身なので、お雛様はまだ我が家にあります。

2016年に「カリフォルニアワインの里 ソノマの暮らし」と題する本を出版しました。(アマゾンで購入できます)私のことを心配してくれる友人に、ソノマでこんな風に暮らしてるよということを知ってもらいたいなと思って書いたものです。

もうカリフォルニアにやってきて35年くらいになるのですが、札幌へ帰ると必ず時間を作って会ってくれる友達がいます。札幌地方裁判所の速記官の先輩は、そんな友人の一人です。

偶然なことに、先輩の自宅から歩いて行かれるところに父(2016年に亡くなりました)の老人ホームがありました。一人でも多くの人に父を訪ねてもらいたいという私の勝手な気持ちから、手紙を先輩宛に送るから父に持って行ってほしいとお願いしたら、快く引き受けてくれました。手紙がない日もちょくちょく訪ねてくれました。

本の中にお雛様という項があります。先輩はその項を父に読んであげたそうです。

お雛様と一緒に送られてきたオルゴールから流れる「明かりをつけましょぼんぼりに、お花をあげましょ桃の花」を聴くとほろっとすると書きました。先輩はその箇所で、父の前でその歌を歌ったのだそうです。

「西井さんは笑ってました」という報告をくださいました。目を細めてちょっと口元をほころばせて愉快そうに笑う父の笑顔が目に浮かびます。

何度も父を訪ねてくれた先輩には、何度お礼を言っても足りないです。

この歌を聴くとしんみりしてしまうもう一つの思い出が加わりました。

江別にあるイオンというデパートに母が倒れる1年前に札幌へ帰った時に、一緒に買い物に行きました。食料品売り場のアイスクリームを売っているコーナーでこの歌が流れてました。

「アイスクリーム食べる?」

「うん」と母がにっこり。

二人でベンチに座ってアイルクリームを食べました。小柄な母が足をぶらぶらさせながら嬉しそうにアイスクリームを食べてた様子が写真のようにぱっと浮かびます。喫茶店には二人でよく行きましたが、アイスクリームは、初めてで、最後になりました。母はそのことを感知して普段はベンチでは食べないアイスクリームを私と一緒に食べてくれたのだと思います。

母の葬儀が終わって、残された父と私の食料品を買いにイオンへ行きました。するとお雛様の曲が流れていました。二人でアイスクリームを食べたベンチを見たら涙が止まりませんでした。

日本には四季ごとに様々な行事を祝う深い文化があります。

自然と向き合って季節をめげる日本の風習を、私なりにソノマで楽しみたいと思っています。

今年はコロナのため、友人を招くこともできず、我流ちらし寿司と、家庭菜園に冬なのに元気に育っている三つ葉を入れたお澄ましで、家族だけのささやかなお雛様を祝いました。

そして両親のことを思い出すしんみりとしたお雛様でもありました。

、昨年植えた小さな桃の木に花が咲いたので、歌にちなんで写真を撮りました。

多民族国家の歪み
散歩とお弁当