フレンチランドリー(このレストランで食べようと世界からお客さんがやってくる。予約は数ヶ月前にとれればラッキー。もちろん高い)の元シェフ、コレイ・リー(韓国系アメリカ人)がオープンしたレストラン、Benuについに行ってきました。フレンチランドリーと同じようにミシェラン3星です。
場所は昔よく行っていたレストランHawthorneで、懐かしい。
入り口のドアを開いてフロアを眺めて、ちょっと驚きました。内装が暗くて、テーブルも椅子も濃いこげ茶色。テーブルクロスをかけてないテーブルは小さめ。イスは学校の木の椅子みたいで、木の長椅子は背もたれが直角、ピローが置いてあったけれど、どちらの椅子も座り心地はあまりよくありません。
サービスのスタッフも大半が黒い服を着てます。
修道院みたい。
余計なものを省いて、料理で勝負ってことなのかも。ゆったりして、さあ、楽しく食べましょうっていう感じじゃなくて、ちょっとタイトな感じ。ニューオリンズから帰ってきたばかりで、南部風の優雅でゆったりした雰囲気とマナーとは反対できびきびしているけれどどこか固いなあと感じました。サンフランシス帰って来たことを再認識。
各料理の量は一口ほどなのですが、17コース出てきます。全部食べたいからとランチも少なくして行きました。韓国の有名ブランド(とサービスの人が教えてくれた)の器に盛られて出てきます。アジア料理のスパイス、味の組み合わせを取り入れた料理です。
相棒が白ワインを選びました。どのワインもすごいマークアップで安くて100ドル。相棒が昔ドイツのワイン雑誌のリースリングコンテストの審査員を頼まれた年に、相棒がベストと投票して、多くの審査員も同意見だったということで、その年の1位になったWittmann に決めました。
このワインを9番目のコースまで楽しんだのですが、各コースとの相性が抜群でした。
赤は1996年のローレルグレンを持参。造った本人は白と同じようにマッチするといいんだけれど、と謙虚。まだ果実味が残っていて、このワインの個性のひとつである墨汁の香りと他のスパイスが溶け合って、いい感じに熟成。各料理とも良くマッチしてました。
各コースの食材の組み合わせと使い方に、天才シェフなのだと納得させられました。どの料理も、素晴らしいのです。相棒といろんなところで食べてますが、二人でこんなに熱心に使っている食材とその味の構成について語り合いながら食べたことはありません。
全部の料理の写真を撮ったのですが、17の写真を載せるのもなんですから、3つほどだけ載せます。
キャビア、ウインターメロン(冬瓜?)チキンクリーム(鳥の肉汁のにごり?)
cavia, winter melon, chicken cream
Whole baby sea bream, iceberg, black trumpet mushroom, aged tangerine
Foir gras xiao long bao
一切れの牛肉、beef rib, eggplant, broccoli, ramp,charred scallion、その後のサメのひれのスープ “shark fin soup”, Dungeness crab, jinhua hamcustardは、味を見るだけで、おなかが一杯で食べることが出来なくて悔しかったです。
ソムリエはユーン・ハという方でこの方も韓国系アメリカ人。世界に200人以しかいないマスター・ソムリエのタイトルをもっていて、シェフと同様にいろんな賞を受けています。
彼はサンフランシスコの新しい世代のソムリエで、ローレル・グレンの畑を見に行ったこともあるそうで、ピュアなカベルネ・ソーヴィニヨンで料理を包み込む重力があるというように表現していました。
「ローレル・グレンは時代を先駆けしてましたね」と相棒に話してました。これを聞いて新しい世代にとってはローレル・グレンのように過熟味がなくて酸味豊かなカベルネは新しいんだなあと改めて世代を感じました。
この彼がシャーベット(だと思う)shaved milk and honey (割り箸でいただきました)になんと紅茶キノコ(もちろんレストランの自家製)がついていて、美味しいの一言。こんな紅茶キノコなら毎日飲みたい!
デザートのcoconut,almond,strawberryに彼がサービスしてくださったのが、スパークリング酒でした。一般的には甘口が多いのですが、これは辛口なのです。甘いなあと感じるデザートが多いこの土地で程よい甘さのデザートに辛口のスパークリング酒。甘いデザートに甘いデザートワインというダブル甘味?じゃなくて、日本のように甘いものにお茶という組み合わせに近くて嬉しくなりました。
紅茶キノコに辛口スパークリング酒でしめる、サンフランシスコの優秀な若手ソムリエらしいなあと、嬉しくなってしまいました。
フレンチランドリーでは、1皿を運ぶのに3人組んでやってきます。一人が受け皿を置く。一人が料理が入ったお皿を置く。一人がその一品について説明する。こんな風に記憶してます。それもファインダイニングの経験を豊かにします。
Benuは一人でお料理を運んできて説明もします。最初に感じた厳かさは薄れました。
食べ物について知的刺激を受けながらディナーをするという久しぶりのダイニングでした。
*入り口の写真はBenuのサイトのイメージを使わせてもらいました。