No. 47 Date:2010-9-26

サマーストーン・ワインカンパニー(Somerston Wine Co.)

ここ数年、雨後のたけのこのように、ヴァーチャル・ワイナリーがにょきにょきと登場している。

全く逆のコンセプトをもつワイナリーとしてSomerston(サマーストン)が登場。広い敷地を持ち、多角経営をするワイナリーだ。

ワイナリーの敷地は659ヘクタールと広大。小山をひとつ所有していると思えばいい。ナパヴァレーの外れにある。ヴァレーの東(内陸)に向かって車を走らせる。ナパの市民の水を供給する人造湖、レイク・ヘネシーに沿って走り、ソーヴィニヨン・ブランで知られるチャイルド・ヴァレーを通り越したところにある。

敷地には81ヘクタールのブドウ畑、オリーブの木、1500頭の羊、果樹園、野菜畑がある。

歴史

敷地の一部、280ヘクタールは1847年から金鉱を探してやってきたジャシュア・ジェイムス・プリーストが所有していた。その後、数回の所有者が変わり、1970年にブドウが植えられている。2004年に現所有者のチャプマン家が買い取り、さらに隣に位置する379ヘクタールの土地を買い足して、現在に至っている。

チャプマン家はイギリスで代々Somerstonシッピング会社を経営、その昔インドなどからセーロン茶を買って運んでいたという。

同敷地内にナチュラルウオーターが湧き出ている。前の所有者は瓶詰めしてミネラルウオーターを販売していたそうだ。微量の泡とミネラル分が感じられるお水は生温かかった。

ブドウ畑

この土地は2つのヴァレーに挟まれていることから、土壌もマイクロクライメットも多様だ。標高2789m-7874mの畑には最低11のブドウ品種が植えられている。もっと多いようだが案内してくれたジェネラルマネー&醸造責任者のクレイグ・ベッカー氏は記憶し切れないと苦笑。

ワイナリーを設立して、ワイン生産をするまでは、デイヴィッド・レイミーやハイディ・バレット、ビアリ、ケイマス、ダックホーン、ヴィアデア、パルメイヤーといったワイナリーにブドウを売っていた。

新築されたワイナリーは炭酸ガス排出量が少ない設備を揃え、排水処理も近代的方法で行っている。要するにグリーンなワイナリーということだ。

ワイン

Somerston,Priest Ranch, Highflyer の3つのカテゴリーに分けてワインを生産している。

Somerston:自社畑から厳選したブドウを使って3つのワインを生産。

2008年ソーヴィニヨン・ブラン($40)

リリースになっているのはこのワインだけ。

スパイシーバニラ、マンゴの香り。ポーチした梨とミネラルの味わい。アルコール度は15%のフルボディでパワフル。ユニークなソーヴィニヨン・ブラン。

カベルネ・ソーヴィニヨン($120)とボルドーブレンド($90)は、間もなくリリースになる。

Priest Ranch:自社畑のブドウを使って生産 (2000ケース)

2007年カベルネ・ソーヴィニヨン ($38)

2007年は暖かい年だったのだけれど、このワインは少し青い生ハーブ系の香りがして軽やか。標高1100フィートの傾斜地にあるブドウ畑のブドウを使用。食べ物によく合うだろう。

ジンファンデル($28)

どこかで飲んだことがあるとふと思った。そうマーティネリのジンファンデルだ。きれいなベリーの味と香り。そしてキーンとアルコールから来る甘さ。アルコール度は17%と半端じゃない。でも酸味があるのでだれてない。

◎2009年ソーヴィニヨン・ブラン ($24)

メロン、レモンの花のきれいなみずみずしい香り。オイリーな口当たり。

空気に触れると香りがさらに豊かになる。食前酒として楽しみたい。

Highflyer:醸造家がカリフォルニア州で出会ったブドウ畑のブドウを使って造ったワイン (6000ケース)

ヴィオニエBorra Vineyards($17) 

ローダイ地区の家族所有のブドウ畑

◎グレナッシュ・ブランSomerston Vineyards($17)

カリフォルニアではめったに見ないユニークなローヌ系品種の白ワイン。清々しくて華やかな香り。ほろりと甘い。食前酒にぴったり。ポップコーンなんかと一緒に気軽に楽しみたい。自社畑で栽培。

ピノ・ノワールDoctor’s Vineyard($38)

サンタ・ルシア・ヒルのブドウ畑。凝縮度の高いピノ。空気に触れると芳しい香りと味わいが膨らんできた。

センターライン・レッド・ブレンド ($28)

シラー、プティ・シラー、ジンファンデルのブレンド。果肉、カシス、ブルーベリージャム、エスプレッソ。フルーツの甘味。楽しいワイン。

◎サマーストーン・シラーSomerston Vineyards($48)

黒系フルーツの深い香りにスパイスが続く。口当たりは意外と軽やかでエレガントにさえ感じる。スパイスとフルーツの長いフィニッシュ。バランスの取れたシラー。

テイスティングングルーム

ナパ・ヴァレーのヨントヴィルという小さな町にテイスティングルームをオープンした。Somerstonのワイナリーはナパヴァレーの北東の山の中なので、ここまで試飲にやってくるのは大変ということでヨントヴィルにオープンしたもの。隣にグロサリーストアを来年の1月にオープンの予定。敷地で栽培したもの、飼育したラムの肉等を売る。

ヨントヴィルは小さな町ではあるけれど、画廊、リゾートホテル、フレンチランドリーを含む高級レストランがあることで知られるツーリストのメッカ。

このテイスティングルームは今までの一般的に見られるテイスティングルームとはちょっと違っている。広々とした室内にカウンターが2つ。品のいいワインバーみたい。ギャラリーとしても機能していて、壁に斬新な絵画が展示されている。それから嬉しいのはたいていのテイスティングルームは遅くても5時、スパークリングのテイスティングルームだと6時に終了なのだけれど、ここはなんと夜の10時までオープン。ディナーを食べ終えて、ちょっと1グラスというときに便利。

ここのワインをもっと知りたいという人は広大な土地をワゴンで巡るツアーを行う予定。

★ヴァーチャル・ワイナリー:ワイナリーの建物もブドウ畑も所有せず、ワイナリーのライセンスを所有。ブドウを買って大型ワイナリーの設備とスペースを借りてワインを造る。