No. 48 Date:2011-1-15
タリー・ヴィンヤーズ(Talley Vineyards)
サンフランシスコから数時間、州道101号線を北に向かって車を走らせると太平洋が右手に見えてくる。アロヨグランデという標識で101号線を降りて、アロヨグランデの小さな町を通過。内陸に向かって車を進めると左手に広い平地一杯に黄色の花が植えられているのに目を奪われた。やがて薄茶色の禿山と裾野のブドウ畑が見えてくる。雨季になるとこの禿山は緑色になる。この辺りはドリップイリゲーションがなければ何の植物も育たないだろうことが推測できる。
タリー・ヴィンヤードの門を入って行く。バラがきれいに咲いている芝生に、パラソル付きのピクニックテーブルがあって、一見、リゾートホテル風のワイナリ-がある。
タリー・ヴィンヤーズはカリフォルニアのサウス・セントラル・コーストのアロヨ・グランデ・ヴァレーにある。サンタ・バーバラ・カウンティの北になる。太平洋から約3kmほど内陸に入ったところに位置している。海に近いからいつも強い風が吹いている。この地区で最も良く知られているワイナリーだ。
家族所有の5つのブドウ畑(総面積75ヘクタール)から個性を生かした高品質のシャルドネとピノ・ノワールを生産している。
オリヴァー・タリーが1948年に野菜栽培を始めて以来、代々野菜栽培農家としても知られている。現在、タリー家の2代目、3代目が引継ぎ、タリー・ファームの野菜、フルーツは品質が良いと評判がいい。現オーナー、ブライアン・タリーの父親であるドン(オリヴァーの息子)はエドナ・ヴァレー(隣の栽培地区)やサンタ・バーバラ・カウンティのワインが関心を集め始めているのに注目し、1982年に実験的にピノ・ノワールとシャルドネを含む5品種を植えた。結果が良好だったことからエドナ・ヴァレーとアロヨ・グランデ・ヴァレーにある農園の急勾配の丘陵地にシャルドネとピノ・ノワールを植えていった。
1986年に450ケースのワインを生産。1991年の秋、リンコン・ヴィンヤードの麓にワイナリーを建設。ブドウを優しく扱うように設計されたワイナリーは例えば重力を利用した破砕工程を含む近代設備を備えている。現在、年間生産量は1万8000ケース。
5つのブドウ畑 (シャルドネ&ピノ・ノワール)
アロヨ・グランデの畑:
★リンコン・ヴィンヤード
太平洋から3km、北東に位置している。1982年にブドウを植えた最も古い自社畑。ブドウ畑の名前の由来は歴史的なリンコン・アドビにちなんでおり、タリー・ヴィンヤードのラベルに描かれている。この畑の表土は浅く、土質はロームと石灰質の粘土で、急勾配の丘陵地、水捌けがよく、シャルドネとピノ・ノワールの収穫量は1エーカーに付き3トン以下と少ない。
★ローズマリーズ・ヴィンヤード
リンコン・ヴィンヤードから1.6kmほど西にある。白っぽい砂岩、ローム、粘土が含まれた土壌。リンコン・ヴィンヤードと同様、急勾配で水捌けが良い。太平洋に近いため涼しく、収穫量は1エーカーにつき3トン以下。
1987年にブドウを植え始め2001年に終了。ブドウ畑は14のセクションに分けてあり、クロン選択と台木の組み合わせは22に及ぶ。
このワイナリーの代表ワインである、ひそやかなバラの花びらの香りが特色の秀逸なピノ・ノワールがこの畑から生まれている。
★モンテ・セレノ・ヴィンヤード
ワイナリーの南西、アロヨ・グランデ・ヴァレーの絶壁の隣に位置する小さな畑で2006年にブドウを植えた。0.8ヘクタールのシャルドネと0.4ヘクタールのピノ・ノワールが植えられている。
エドナ・ヴァレーの畑:
★オリヴァーズ・ヴィンヤード
最初にブドウを植えたのは1991年で、タリー農園を設立したオリヴァー・タリーをしのんでネーミングしたもの。土壌はエドナ・ヴァレーの典型的な土壌で重い粘土質。誠実でさりげない情熱が感じられるシャルドネが生まれている。
★ストーン・コラル・ヴィンヤード
ピノ・ノワールを2001年の春に植えた。4つのクローンを使い、5つのブロックに分けてある。土壌は砂の混じった粘土質のローム(畑の低地)から決めの細かい砂地(畑の高地)と多様。
パソ・ロブレスの畑(その他の品種)
★ヘイゼル・ターリー・ヴィンヤード
(カベルネ・フラン、シラー、カベルネ・ソーヴィニヨン、ヴィオニエ、グレナッシュ、プティ・シラーを栽培)
畑ごとの特色がよく表現されたワインが生産されているのが印象に残った。シラーのような厚みのある口当たりのピノ・ノワールがトレンドになっていたときも、タリーはスタイルを変えていない。
一貫して樽香を抑制したシャルドネを生産。新樽の使用率は一般的には25-35%。ピノ・ノワールの発酵は自然酵母を使用。新樽の使用率は30-40%ほど。
品のある落ち着いたタイプのワインを生産している。
注:アロヨ・グランデ・ヴァレーはAVAとエドナ・ヴァレーについては、栽培地区をご覧ください。