今日、カフェのアシスタントシェフとしてせっせと働いていたメキシコ人の青年が故郷のグアダラハラへ帰ってしまったことを知りました。
16歳のときに国境を越えてやってきた不法移民の一人です。
「夜中に突然警官がやってきて逮捕される夢を時々見るんだ」と数年前にポツンと言ってたのを思い出します。米国へやってきて20年、漠然とした恐怖を持って暮らしていたのでしょう。
トランプ大統領は不法移民政策を強行に進めていて、犯罪歴のない不法移民までもどんどん強制送還しています。両親は不法移民だけれど、アメリカで生まれた子供たちはアメリカ市民ということで、両親だけが強制送還されて、家族がバラバラになる悲劇が珍しくなく、テレビで報道されています。
違法に入国したのだから、事情がどうあれメキシコへ送り返すという理由です。
今のところまだソノマには移民局の手が伸びていないようです。夫は彼たちを守るグループに入っていて、もし連行される事態が起こったら、会員同士が連絡を取り合って、その場に駆けつけて、写真を撮るのが夫の役割だそうです。
トランプ大統領は略称DACAと呼ばれる政策を憲法違反だから廃止すると宣言。
DACAとは両親が不法に国境を越えたときに16歳以下だった子供たちを不法移民と規定しないという大統領命令です。
オバマ大統領は移民法を成立させようと思ったけれども、共和党の頑強なそして冷酷な反対のために成立不可能とみて、せめて親の意思でアメリカへやってきた子供たちがアメリカに住むことを認めようと命令を出したもの。この法律の成立さえも共和党が反対したために、大統領命令として出さざるを得なかったわけです。
DACAの一人として認められるためには厳しい検査が行われます。大学生、IT企業で働いている人、先生になった人と、アメリカ人としての基盤を築き上げた青年たちです。全米に80万人、そのうちカリフォルニアには20万人がいます。
彼らはアメリカしか知りません。テレビで発言している彼たちの英語は全く訛りがありません。
DACA廃止声明に対する否定的な反響に反応して、トランプは議会に結論を預けた、良い結論を出して欲しいと責任逃れをしています。
ソノマの街では洗車場、ファーストフード、ハードウエア店(金物店?)など、低賃金で働いてくれる従業員募集の看板が目立ち始めました。
トランプ大統領の政策の恐怖から国へ帰った人たちは、メキシコの経済が向上したためアメリカへの出稼ぎをせずに家族と暮らすことができるようになったことから、アメリカへ戻ってきません。
そのために労働力不足が起こり始めています。
友人のブドウ栽培家はブドウを摘む労働者不足で頭を痛めています。急勾配の畑での作業は危険だからと受け入れてくれないそうです。
「賃金を高くするからと交渉しても答えはノーなんだよ」と困惑気味。
アメリカは経済的打撃を受けることでしょう。カリフォルニアの農作業を担っている彼たちがいなくなったら、カリフォルニアの経済にも影響が出ます。
これからは人員不足を補うための自動化が進むんでしょうね。
ブドウはすでに手で摘まず、機械で摘んでもダメージを与えない品種は機械で摘むことが多くなっています。
ファーストフード店などは、ロボット相手にオーダーをするなんてことが近いうちに起こるのでしょうかね。
長年、ソノマの住人として暮らしてきた青年はグアダラハラへ帰って、うまく溶け込むことが出来るのかどうか、、、。
数年前にグアダラハラへ行く機会がありました。近代的な都市に発展していて、活気があって、食べ物も安くて美味しかったです。しゃれたレストランも結構あったので、シェフとして良い職場に恵まれて、警察におびえることなく幸せに暮らせることを祈っています。
不法移民問題は複雑です。国民の意見も分かれているし、議員たちの政治的な思惑も絡んで、過去に対処案を出した数大統領の意見も押し潰れてきました。
せめてDACAの対象となっている人たちの対処が早急になされることを期待しています。
移民問題について、「カリフォルニアワインの里、ソノマの暮らし」にも様々な意見について書きました。https://www.amazon.co.jp