オー・ボン・クリマ(2)
ジム・クレンデネン・インタビュー


Q.シャルドネも同じ考え方で造るのですか?

シャルドネの場合、複雑味、エレガンス、バランスを大切にしています。(作業中のフォークリフトが通過、すごい騒音!)もしシャルドネの葡萄を毎年14%以上のアルコール度になるように摘むとしたら、理想的に熟した限界を超えていると思います。アルコール度が13%あるいはそれ以下のワインが、シャルドネの場合はその特色がベストで表れると思います。

Q.ジムのシャルドネのほとんどはアルコール度が13%以下なのですか?

私のシャルドネのほとんどが13-14%です。14%を超えたのはありません。他の多くの仲間のシャルドネとは、ずいぶん違います。コントロールできるのは葡萄の栽培です。だから最も大切なことは最高の品質の葡萄を手に入れること。ベストなのはマストになんのアジャストメント(調整)もしなくてもいいという状態です。酸を加える必要もなく、酵母を加えなくてもいい、砂糖も加える必要がない、なんにも加えなくてもいいという状態です。パーフェクトなバランスは葡萄畑からやってきます。私のところではその状態に近づいています。その状態はブルゴーニュやオレゴン、ナパでは到達するのが困難です。もし栽培をコントロールしたら、私が知っているどの地区よりもサンタ・バーバラが、その状況によりレギュラーに到達できることを発見しました。

Q.それはどうしてですか?

ブルゴーニュやオレゴンよりマイルドな秋、雨が少なく涼しいので葡萄の成長期間が長く、私が好きな熟した味わいの葡萄が収穫できるのです。でもその味わいが好きではない人もいるかもしれません。カーネロスでは、味わいをフルに出すためには糖度が非常に高くなった葡萄が必要だというのですが、私には考えられません。そのワインを飲んでみましたが、最初に感じたのは、ピノ・ワールというよりはプルーンだと思いました。私はそれは間違いだと思うのですが、彼達はそれが必要だと思うのなら、私達は同じものを追究しているとは思いません。私のワインはグリーンで酸味が強いというのは、彼らのチョイス(選択)です。アルコール度が13.5%、PHは3.3-3.4、りんご酸は低いというように摘めたら、何も手を加えることなくパーフェクトなワインを造ることが出来ます。それが私の一番大事な仕事です。私とアダム(オハイのオーナー兼醸造家)が初めてワイン造りをしたころは、PHが非常に高い葡萄だったので、常に酸を加えなければなりませんでした。またある年は早くに摘んだので酸はよかったのですが、糖分を加えなければなりませんでした。

Q.なぜ前はPHが高く、今は低いのですか?

栽培です。前は自分達で栽培をコントロールできなかったからです。

Q.どのように栽培をするとPHが低くなるのですか?

葉と房の数のバランスをよくすること、葡萄が必要とする適量の水分、適量のカリウム、(声がかき消される)フォークリストはいい騒音を作るね。ブーン,ブーン!(笑い)

Q.糖分が非常に高くなるまで待って、かなり熟した葡萄を使ってのワイン造りには反対なのですよね。

容易な人生は偉大ではありません。(アイ・アム・ソーリーといって肩をすくめる)

Q.糖分が高い、かなり熟した葡萄を使ってワインを造ることは容易なことですか?

ナパでは容易なことです。暑い土地だから糖度が上がるまで待っていればよくて、PHが4になる。これはバランスが良くない。酸度が下がって4gになる。これもバランスが悪い。あるのは甘みだけ。正直言って、たやすく葡萄を栽培できるところはどこだと思う?フレスノです。今のトレンドが今後も続くとしたら、アルコール度が17%になるワインを造るのなら、フレスノやローダイ(筆者注:セントラル・ヴァレー)がいいんじゃないかな。良い樽を使えばいい。土地はずっと安いしね。カベルネを造るのに、今、ナパでやっていることと全く同じことをローダイでは出来ないよと私を説得しようと思ってもだめだね。ナパと同じように投資すればいい。ナパと同じクローンを植えてベストのオーク樽を使わなければいけない。ナパでは栽培にいくらお金を使っているか知ってるかい?1エーカーに付き10,000-12,000ドルだよ。ローダイではいくら払っていると思う?2000ドルだよ。6分の1さ。ローダイでナパと同じようにお金を投資して、灌漑もベストの状態にして栽培することさ。これは世界のいろんなところで見られる。バローロではハードであんまり魅力のないワインを造っていた。バローロから帰ってきたばかりなので、記憶がまだ新鮮なのです。人々は1年に1本だけバローロを飲むという状態だった。クリスマスにガチョウの肉と一緒にそれを飲む。バルベラやドルチェットはたくさん飲む。でもバローロを美味しいから飲むのではなくて、ガチョウの油っぽさを消すために飲む。今、ベターなワインを造り始めたので、多くの人が価格が上がっても飲むようになった。栽培技術を向上させて、ベターな樽を使うようになった。発酵技術が向上して温度調節をしているので、突然ワインの質がよくなった。なぜかというとお金が入ると、ベターなワインを造るためにそのお金を使えるからさ。ナパではそれが起こっている。でもローダイではそれが出来ない。

高い気温と乾燥した秋が、ワイン造りに唯一必要だとしたら、暑い土地が一番だ。そうだとするとローレル・グレンの畑などはチャンスがないことになる。29度ブリックスの葡萄は採れないからだ。でもそれは必要ない。24度ブリックスで十分、ワンダフルだ。この地区ではピノ・ノワールの葡萄の糖度を25.5度ブリックス以上に上がることはあまりないし、そこまで待たない。25.5度ブリックスまで上がったのを摘んだのは、発酵タンクが一杯でペースがなく、やむなく待ったときだけだ。2000年はどこへも持って行くところがなくて、仕方がなかった。私の友人がナパへ行って葡萄の糖度を測ったら27度ブリックスだったと言っていた。そして彼らは「風味がまだ熟していないから摘まないんだ」と言う。それはクレージーだと思う。どんな風味がいいのか理解していない。

でもアブノーマルなほどに熟した葡萄を摘んで、そのためにいろいろ手を入れなければならないワイン造りをしている人達が、今、そのやり方から抜けようとしている。 セインツベリーのブラウン・ランチは以前のように超完熟葡萄を摘むことはしなくなったことに気が付きましたか?ヘレン・ターリーは「私のシャルドネは今までのように熟したシャルドネにしたくない」と公の場で言ったし、デイヴィッド・レイミーも「熟し過ぎだった。少し後退したい」と言っている。遂にそう言い始めたことを幸せに感じます。私はラディカルだと言われているけど、今、私は非常に保守的なのだと思う。ワイン造りのコンセプトが逆だと思うのです。彼らはワインを造るのに、選択が可能な場合でもPHが3.3ではなくてPHが4から造っています。酸が十分ではないワインを造るので、飲むと甘くて重い。ワインだけで飲むと美味しいけど、酸味やコショウのきいた料理と一緒だと合わなくて、もう飲みたくないと思うだろう。なぜ、そういう方向に行きたいのだろう?選択が可能な状況にあるのに。その理由はパーカーのポイントにあることに気が付きました。それにブラインド・テイスティングでも容易に認識される。こういう人達はワイン造りに情熱を傾けているのではなく、利益を上げたいのだ。ワインを飲むことに情熱を持っていない。

友人のユジーニア・キーガンが、私はとても好きなワインなのだけど、彼女のワインをニュージーランドに持参してブラインド・テイスティングしたときに、「自分のワインとはわからなかったし、あまりいいワインだとは思わなかった」と渋い顔をしてた。彼女と同じタイプに造ったワインばかりのテイスティングに馴れていたからさ。ニュージーランドで、もっとフレッシュで酸が豊かで味わいが全く違うワインと一緒に試飲したら、彼女のワインだけ異質であんまり美味しくなかった。同じタイプのワインを造っている人達とばかり付き合って、他のタイプのワインを飲まないと片寄ってしまう。彼女はもっといろんな所へでかけて、いろんなワインを飲むべきだと思う。私はニュージーランドにもよく行くし、ブルゴーニュから帰ってきたばかりです。

(グラスに2001年のエステート・ピノ・ノワールを注いでくれる)このピノ・ノワールはとても色が濃い。アルコール度は13.5%。リッチで軽やか、何も加えていない。ノー・イースト、ノー・アシッド、ノー・シュガー。2001年はバランスがパーフェクト。ワインはソフトで表現豊か、フィニッシュは長い。酸度は高くもなく低すぎもしない。私が求めているバランスが取れています。醸造家がしなければならない最小限のことだけをしました。そのようにしてベストのワインができると信じています。もし必要なら手を加える。必要なら酸も加えるし、PHも妥協するし、糖分がなくなるまで発酵を3回でも繰り返す。でもそれはベストではありません。スピニングコーンなどのプロセスを通常のワイン造りのプログラムにすると、何かを失ってしまう。私は伝統を忠実に守ってきたために一匹狼になってしまった。人々はそこから出て行って帰ってくるというのを繰り返します。今、ブルゴーニュに行くと、 このようなワインを造ろうと人工的な操作の話をします。それはそれでいいのですが、素晴らしいワインは葡萄畑から造られるほうがベターだと思いませんか?

Q.先日、レストランでABCのピノ・ノワールを飲みました。アルコール度が13.5%でした。ジムのワインも遂にアルコールドが高くなって時勢に追従かなと思ったのですが?

13.5%はアルコールドが低いのです。ブルゴーニュでは葡萄は11.5度ブリックスで摘むけど、糖分を加えるので、ブルゴーニュのワインはいつもアルコール度が12.5-13.5%です。

Q.13.5%はジムのワインのスタンダードということですね?

そう。シャルドネは、以前は、もう少し低かったです。 

Q.ジムは単一畑のワインをいくつも造っていますよね。年によって、全く新しい単一畑のワインが造られたり、今までの畑が突然消えたりします。その理由を聞かせてください。消費者は混乱すると思うのですが。

私はフレックスビリティ(柔軟な対応?)が好きです。すごく品質のいい葡萄を育てた栽培農家が私に「とても個性的な葡萄畑だから、この畑からワインを造ったらいいよ」と電話してくる。そういう栽培農家との接触が好きなのです。その栽培農家がずうっとABCとのつながりを保つこともあるし、そうでないときもあるのです。また私達が栽培もコントロールしている場合を除いて、良質の葡萄を栽培していたのが、ある年、品質の良くない葡萄を出した場合は、もう、その畑の葡萄は使いたくありません。新しい畑からワインを造った場合は、そのワインは必ずユニークで個性のあるワインです。私のワインを飲んでくれる人に、そのスタイルが好きかどうか、1本だけ、新しいワインを飲んでもらいたい。私には大きなフラストレーションがあります。1本しか手に入らないワイン、例えばヌイ・ブランチズを手に入れた、それはいいのです。でもヌイ・ブランチズはブージュと全く違うスタイルのワインだということを理解しているとしたら、パーカーやワインスペクテーター誌の意見、私の結論、あるいは中川プランニングの意見ではなくて、自分の意思で好みを決めてほしい。ビッグで野性的なシャルドネが好きなのか、またはエレガントで洗練されたシャルドネが好きなのか。自分の好きなほうを買ってほしい。例えばブルゴーニュでバタール・モンラッシェとメルソージュを毎年造っています。ほとんどの年、メルソージュのほうが私は好きです。なぜならエレガントだからです。それは私の好みです。パタール・モンラッシェは男性的で重みがあります。アメリカのワイン消費者の90%はパタール・モンラッシェのほうが高くても、こちらを飲みたいといいます。

Q.それでややヘビーなスタイルのシャルドネ、ヌイ・ブランチズを造ったのですね。

私達もヘビーなスタイルのワインを造ることが出来るということを示すために造りました。そうしたら、とてもポピュラーでした。このスタイルのほうが好きな人は、正しい理由でこのスタイルが好きであってほしいと思います。ヌイ・ブランチズを飲んだ人が「これはいいワインだ!」と言ってくれると、「ありがとう、このワインをそんなに好きになってくれて」と言います。でも内心、あるいは、その人に向かって「私はこういうスタイルのワインは好きではない。あなたが好きなら、それはいいこと」と言います。家でボトルを開けるとしたら、ヒルドガード、ブージュを開けます。自分だけで飲むときにはヌイ・ブランチズは開けません。

Q.ヌイ・ブランチズは消費者のために造ったということですね。そのスタイルにはジムのハートが100%込められているわけではないのですね?

そうです。でも造るのを辞めました。20thアニヴァーサル(20周年記念)というワインに変えました。20年間シャルドネを造ってきた集大成です。ブージュは引き締まりすぎていたかもしれません。それでもう少しリッチなタイプにしようと思ったのです。それでヌイ・ブランチズとブージュを組み合わせたのです。風味は凝縮しています。パワフルなシャルドネです。でもでもヌイ・ブランチズほどへビーではありません。2つのワインの中間で、バランスがパーフェクト、「好きだ」と言ってもらえると嬉しいです。そうすると私はこのワインに誇りを持つことができます。渋々ですが「私も学んだ」と言うことを認めます。イエス、私は引き締まったワインが好きです。でも引き締まったタイプのワインだけを造る必要はありません。ノー・モア・ブージュ、ノー・モア・ヌイ・ブランチズ、このコンビネーションのワインを造ります。

Q.2つタイプの中間にしたのはなぜですか?

私はパーフェクトなワインを造りたい。もう、こういうワインも造ることが出来るんだという例を示す、サンプルを造るのは止めることにしたのです。人前に立って「私はこのワインを造りました。なぜかというとロバート・パーカーがこのスタイルを造るべきだというから、私も造ることが出来るということを示すために造った」と2度と言いたくない。私は「このタイプのワインは好きではないけど造った」と言わなければならないワインは造らずに、時分が本当に好きだと思うワインを造りたい。

Q.ジムのワインを囲む将来の展望を聞かせてください。 

遂にこの地区の品質の可能性を把握する地点まで辿り着きました。新しい畑は密植度を高くして植えました。栽培技術はずうっと向上しました。畝の方向もベターです。スロープ、太陽光線の当たり具合、土壌もベターです。この畑の葡萄はまだ樹齢5-7年ほどですが、すでに樹齢30年の葡萄樹よりベターです。台木も限定しました。ギャンブルかもしれませんが、ノーAXR、ノーSO4、収穫が多くなる台木は選ばず、リパリア・グロア、10114 を使っています。この台木はもっとも樹勢を抑える台木です。収穫量は少なく、葡萄樹も小さく、最初の房が付くのに4年かかります。でも結果はファンタスティック!昨年が初めてのハーベストでした。将来は私が栽培している葡萄からワインを造ることが多くなると思います。そして異なるスタイルのワインを造ることが少なくなると信じているのですが…。

Q.今の時点ではそう信じているということですね。

はい。特別の葡萄畑が見つかった場合、その好機にどのくらい抵抗できるか…・。それが私の問題です。これからもより自然な方法でワインを造り続けて行くようにすることが将来への道です。

Q.自社畑からワインを多く造るようになると、他の葡萄畑の名前入りのワインを造ることが少なくなるということですね。

少なくなります。すでに数畑をギブアップしまた。私達と同じ考えで葡萄を栽培していないことがわかったところは、すでストップしています。

Q.自社畑について聞かせてください。

ル・ボン・クリマ、私の畑です。標高900フィート(274.3m)、丘の上にあります。2001年に初めてのハーベストを迎えました。2001年が最初のシャルドネです。初めてのピノ・ノワールも出ます。この畑はリースしていたビエン・ナシードの畑の苗を1994年に植えたもので、2001年は7年たった葡萄樹で大きな可能性を示しています。 

栽培面積は44エーカー。85%がピノ・ノワール種。モーガン(ジムの妻)が数エーカーのヴィオニエ種とピノ・ノワール種をコールド・ヘブンのラベル用に植えています。

(ビエン・ナシドの方達が待っているので、ここでインタビューはお終い)

どうもありがとうございました!

ずうっと昔、オレゴン・ピノ・ノワール・コンベンションが初めて開催されたときに、セミナーのひとつにジムが出席していた。ジムが早口で何やらまくしたてていたら、オレゴンの醸造家がものすごい勢いで反論して、ほとんど殴りかからんばかりに怒っていたのを見たという話をランチの席でしたら、全員が大笑い。「そういうことはいつもある。だれも興奮して反論しないときは、僕の話を聞いていないということさ」と言って、ジムはにっと笑った。

というわけで、このインタビューーに出てくる数字は、科学的に正確であるというよりは、話をわかりやすくするために、ちょっと大げさに使われている箇所もありますので、ご了承下さい。