亜硫酸ガスの話

なぜこだわるの?

1987年から各ボトルの表ラベル、裏ラベル、シール、ボトルネックのいずれかに「Contains Sulfites(亜硫酸ガス含有)」と記載しなければならないという規則が制定されました。その理由はアメリカ食品医薬品局(US Food and Drug Administration) によると、人口の1%が硫黄成分と亜硫酸塩に敏感であること、喘息患者の約5%が亜硫酸塩に反応すること、コルチコステロイド に頼っている喘息患者は亜硫酸塩に敏感で重い反応を起こすことがあるからというものです。

亜硫酸ガスについてアメリカ人が心配し始めたのは1970年代後半から1980年代初めで、サラダバーから始まりました。サラダバーはさまざまなサラダ用に切った野菜やフルーツがずらりと並んでいて、お客さんが好みの材料をお皿にとって食べる、あるいはお持ち帰りをするというシステムです。このサラダバーの野菜やフルーツに亜硫酸ガスが大量(2000ppmまで)にかけられていました。フルーツや野菜がしおれてしまったり変色するのを防ぐためです。

FDAは数百人の消費者から不運な反応を起こしたというレポートを受けて、人口の1%を保護するために厳しい規則を制定したのです。

 

ワインのラベルに「Contains Sulfites(亜硫酸ガス含有)」と記載されているのを見て、ワインを飲む人たちは亜硫酸ガスって何?なんでそれが突然ワインに入るようになったの?と心配しはじめました。それをきっかけに笑えぬ事実ですが、頭痛から吹き出物までワインを飲んだからと考える人が多く出たといいます。

でも昔からワインには亜硫酸ガスが含まれています。亜硫酸ガスは発酵中に生じるからです。そして酸化と腐植を防ぐために少量の亜硫酸ガスを昔から加えてきました。

亜硫酸ガスはビールにもカクテルにもクッキー、クラッカー、サラダドレッシング、オリーブ、酢、ドライフルーツ、フルーツジュース等等、さまざまな食料に含まれています。

 

多くの国のワインの亜硫酸ガス含有量は最大335-350ppmまで認められています。カリフォルニアのワイナリーは一般的に状態のいいブドウからワインを造る場合、そして洗浄された器具を使っている場合、亜硫酸ガスの量はぐんと少ないのです。実際にはカリフォルニアのワインのボトルの平均含有量は20-50ppmほどで、加工食品に比べると少量です。

ワイン生産過程で適量の亜硫酸ガスを加えても、香りもないし味もありません。ワインを飲んで頭痛が起きる人がいたとしても、それは亜硫酸ガスによるものではなくて、他のことが原因だろうというのが通説ですが、医学的に詳細なことは私にはわかりません。

 

アメリカで販売されるワインで亜硫酸ガス含有という記載を避けようとすれば、含有量が10ppm以下でなければなりません。それが前回書いたオーガニックワインです。

加工食品の含有量は6-6000ppmと広い幅があります。例えばドライフルーツの含有量は最高2000ppmまで認められています。

 

この数字を見ると、ワインについて亜硫酸ガスの含有量の規制が厳しいことがわかります。いずれワイン業界が政府に、この表示の変更を働きかける動きが出るかもしれません。