新年おめでとうございます。
大統領選挙が終わって安堵したのもつかの間、トランプ大統領がリードする右派過激派による国会乱入と、平安な気持ちになれませんでしたが、1月20日にバイデン大統領の就任式が無事に終わって、ようやく新しい年が始まる予感がします。アメリカの新しい年が始まろうとしていて、気持ちが軽くなりました。
今年もよろしくお願いします。
コロナウイルス感染が急増しているため、ソノマカウンティ(ナパも他のベイエリアのカウンティも含む)は1月いっぱい外出禁止令が出されていましたが、1月25日に緩和されました。
レストランの外での食事、ワイナリーの外でのティスティング、美容室がオープンになりました。
Napa valley wine insider digest,2020年 12月 18日)に「2021年のワイントレンド」と題する記事の主な箇所を私見も交えて紹介します。
タイトルは2021年のトレンド予測となっていますが、内容的には2020年を振り返ってみた内容となっています。
特に北カリフォルニアのワイン業界にとって2020年は大変な年でした。
コロナウイルス感染拡大の惨事が起こる前に、すでにワイン生産者とブドウ栽培者は供給過剰と新ワイナリーのブランド急増に加えて、炭酸入りアルコール飲料やノン・アルコール飲料などワインに変わる飲み物が多々登場して、ワインの需要が悪化していました。
コロナウイルスのためワインイベントはほとんどがキャンセル。人々が集まってワインを楽しむことからズームによるイベントに変わったのですが、売る上げの効果はあまりなかったようです。
この打撃に加えて、大規模な山火事が発生しました。幾つかのワイナリーや、著名レストラン(民家も)が焼滅してしまいました。
山火事は鎮火したものの、山火事発生の危険があると停電になり、加えてワインに与える煙害の懸念、コロナ感染を避けるためにワイナリーやブドウ畑で働く人の数が限定される等、まさに「泣きっ面に蜂」。
加えて、ワインカントリーにとっての大きな収入源であるツーリズムが激減。ワインカントリーの経済に大きな打撃を与えています。
こんな困難な状況下でも、良いワインがたくさん生産されています。ワイン消費者は変わらずに多くのワインの選択が可能です。
ワイン業界が大きなダメージを受けたように、レストラン業界も2020年は大きな打撃を受けました。
昨年の3月に外出禁止令が出されて、室内、庭やテラスでのサービスは禁止、テイクアウトだけが許可されました。その後、外出禁止令が緩和されて、庭やテラスでのサービスが許可になったので、多くのレストランが2メートル離れた位置にテーブルを置いて外でのサービスを始めました。
ソノマのプラザも例外ではなく、歩道、駐車場、公園に椅子とテーブルを設置してサービスを始めました。
ところが12月に外出禁止令が再び出されました。
ヒールズバーグのシングルスレッドでは駐車場にテントを張って「北海道の味」をテーマにサービスを開始するというので、楽しみにしてたのですが、再度、外出禁止令が出て、室内、テラスでのサービスが再び禁止になったため、テント内でのサービスは中止、テイクアウトだけの営業になってしまいました。駐車場の大きな白いテントの入口のチェーンが象徴的です。
多くの他のレストランも資金投資をしてテラスや庭や駐車場に2メートルの間隔を置いたダイニングエリアを作ったのですが、全部中止です。
ソノマのプラザを車で通過すると、外に植木が置かれて綺麗に並んだ椅子とテーブルのテラスがプラザのあちこちにあって、「ヨーロッパの町みたいね」と、懐かしく眺めていたのですが、今は、深閑としていて悲しい風景です。
1月25日から、外に設置したダイニングエリアが、再び使えることになって、レストラン業界はほっとしていることと思います。
コロナウイルスがコントロールされたら(多くの人がワクチン接種を受ける)ツーリストがワインカントリーに戻ってくることは確かなので、それまでの辛抱です。
ワインリストの縮小化と単純化
豊富なワインを揃えたワインリストを持つレストランは、テイクアウトやテーブルを限定された状況では、言うまでもくワインはそれほど売れないので、リストの縮小、売れ筋ワイン(値下げしたワインも少なくありません)に焦点を当てたワインリストに変えています。
ワインのディストリビューターは大手のワイナリーの圧力を受けて、小規模ワイナリーのワインは押し出されてしまいました。また多くの小さなワイナリーはディレクトセールで直接レストランに売っているケースが多く、量も少ないので、大手のワイナリーの押しの強さに太刀打ちできず、小さなワイナリーのワインはレストランのワインリストからはずされてしまいました。
結果的には大手のレストラングループやチェーンレストランは大手のブランドの、個性に乏しい、広くどこでもよく見かけるワインをリストに載せることになり、小さなレストランは彼らなりのワインリストを作るこというパターンができあがっています。
近い将来、レストランとワイナリーがタイアップして、食べ物とワインを組み合わせたメニューで配達するという日が来るかと思います。
ボックスワイン
2020年はボックスワインの売り上げが伸びました。1965年にオーストラリアのワイナリーが開発したもので、1980年代を全盛期として、安いし便利だけれど、ワインの質があまり良くないという印象で、1990年代は見かけなくなっていました。2014年くらいから売り上げが再び上昇し始めて、2020年はボックスワインの売り上げが上昇しました。
その理由はまず便利であること、保存しやすいこと、安価であること、品質が良くなったこと、ガラスのボトルに比べると軽くて運送中の排気ガス量減少につながるので、環境保護にプラスになることなどが、あげられています。
煙害
20年前は煙がワインに与える影響なんて考えたこともなかったのに、2008年から北カリフォルニアのワイナリーは、ほぼ毎年、近くに発生した山火事の煙と灰がブドウに付着してワインになった時に好ましくない風味を与えることを心配しなければならなくなってしまいました。
煙害の現象は新現象なので、煙の影響に対処する標準的な方法はまだ確立されていません。煙による害は、酵母を使う、強いろ過をする、ブドウをごく短時間高温で温める(色と風味を抽出するとともに、望まないアロマを吹き飛ばすー揮発させる)といった処理法を主張している醸造家たちがいます。果皮が厚いカベルネ・ソーヴィニヨンなどの品種は煙や灰の悪影響はそれほど受けないという声も聞かれます。
2021年はワイン消費者にとっては、レストランのワインリストにリストアップされているワインの数やワインショップのワインの品揃えががやや少なくなっているかと思いますが、デスカウントされているワインを多く見ることになりそうです。
一方、ワイン生産者にとっては難しい年になりそうです。価格競争、輸出市場が縮小している、近い将来の経済状況の見通しがつかない、中国と欧州連合がワインにかける税金率についての論争が続いている等、困難が消えていません。ローラーコースターに乗っている感じの年になるかもしれないと予想されます。