2年ぶりに世界のピノ・ノワールを祝うイベント、World Pinot Noirが再開されました。
2019年3月5,6,7日に参加した翌週にコロナ蔓延防止政策としてカリフォルニアでは外出禁止令が出され、全てのイベントが中止になりました。
以来、今年のWorld Pinot Noirが私にとって最初のイベント参加です。
外へ出るなり北カリフォルニアのソノマより強い南カリフォルニアの日差しと心地よい海風が、南カリフォルニアのビーチタウンにやってきたことを感じさせてくれます。
会場は例年通り太平洋が見渡せる豪華なホテル、サンタ・バーバラのリッツ・カルトン・バカラ。ホテルの広々としたロビーに足を踏み入れた瞬間、「コロナから解放された!」という解放感でパッと心が明るくなりました。
とはいっても、コロナが消滅したわけではありません。このイベントの出席者は3回の予防接種済みであることを、予め証明しなければなりません。携帯に送られてきたオーケーと書かれたパスを入り口で提示すると、手首に白いテープが巻かれて、3月4&5日の様々なイベントにマスク着用なしで安心して参加できます。
セミナー&ランチ
初日は朝の9時30分から”West Coast Blind Tasting Challenge” と題するセミナーに参加しました。グラス10個に注がれたワインをブラインドでテイスティングしてオレゴンのWillamette Valleyを除いてカリフォルニアの14のAVA:
Anderson Valley
Arroyo Grande Valley
Los Carneros
Chalone
Cienega Valley
Edna Valley
Paso Robles
Russian River Valley
Santa Cruz Mountain
Santa Lucia Highlands
Santa Maria Valley
SLO Coast
St. Rita Hills
Willamette Valley
から、各ワインがどのAVA のワインかを当てましょうというセミナーです。
久しぶりのブラインドテイスティングで、味覚が鈍っているのを感じました。Russian River Valley だと推測したワインはなんとSta. Rita Hills の2020 Melville estate ($48) だったというようにしっかりと外れました。でもArroyo Grande の2019 Talley Vineyards, Rosemary’s Vineyard ($85)は、何度か飲んだことがあるので、何とか推測できました。
出席者の推測が当たってるのかどうかを、MSの資格を持つ男性とMWの資格を持つ女性の二人が各ワインのコメントをしながら、どのAVAのワインか絞り込んでいきます。ワインのAVAが発表になるたびに、参加者が大きな喚声をあげます。
「各AVAのワインはどういう基準で選んだのですか?」と隣の席の男性が質問しました。私も聞きたかったことです。このセミナーでは各AVAの特色がテキストブックのように出たワインが選ばれたとは思えなかったからです。
ワインは栽培地区の特色と造り手が目指すスタイル(醸造法、摘み時等)が組み合わされて出来上がるので、単刀直入にAVAの特色が出ているわけではなく、AVAを当てるのは、難しいです。
涼しい地区とやや暖かい地区のピノという推測はできます。でも例えばAnderson Valleyは一般的に涼しい地区とされています。この地区のワインとして出されていたのは2019年 Maggy Hawk, Jolie ($65)でした。アルコール度が14%としっかり熟したブドウから造られているワインで、フルーティさと酸味とのバランスが取れていて美味しいピノでしたが、涼しい地区とされるAnderson Valley のものと発表されて、「えー!」っという驚きの声があがりました。涼しい地区であるAnderson Valley でも、畑の位置によってはやや暖めで糖度が十分に上がるのです。
一番驚きの声が上がったのはSLO Coastの2019 El Lugar, Spanish Springs Vineyard ($48)でした。クランチーなベリーと長いフィニッシュが印象的なバランスの良いピノ・ノワールで、涼しい地区のものというのは確かなので、私はSt. Rita Hillsかなと思ったのですが、SLO Coast と聞いて驚きました。
SLO Coast(サン・ルイス・オビスポ・コースト)は2022年3月9日にAVA(アメリカブドウ栽培地地区)に認定された最新の栽培地区です。太平洋にとても近いため、非常に涼しい地区の一つです。栽培条件の特色として気温が低く、日光が多いことがあげられています。涼しい気温が酸を保ち、太陽がピノ・ノワール種の色素の成長とタンニンの熟成を助けます。
サン・ルイス・オビスポ・コーストAVAには78のブドウ畑があり約1595haのブドウが植えられています。32のワイナリーがこの地区で栽培されたブドウからワインを生産しています。これから注目される地区になるかもしれません。
AVA当てっこゲームは楽しかったです。出されていたピノ・ノワールは、全てよくできたピノ・ノワールでコンディションは完璧でした。
コロナ感染の可能性が低くなった今、14のAVAを訪れて(全部は無理としても)味わいの特色、注目ワイナリーを追求してみるのも楽しそうです。
2日目のセミナーは ”The Secret Gem of Burgundy” というタイトルのセミナーで、ヴィレッジ・ワインをヴィレッジごとにテイスティングしていきます。
テイスティングに出されたヴィレッジ・ワインは北から:
Marsannay
Fixin
Gevrey-Chambertin
Morey-Sr-Denis
Chambollee-Musigny
Vosne-Romanee
Nuit-St-Georges
でした。
MSのタイトルを持つサンフランシスコ・ワインスクールの先生とブルゴーニューとナパを行ったり来たりしている専門的なツアーをする会社の女性社長の掛け合いでセミナーが進められました。
「クリーンなワインですね」
「イエス、クリーンです」
ブルゴーニューの赤にしばしばある「湿った枯葉」の香りがしないワインを「クリーンなワイン」と表現してました。またワインスクールの先生はタンニンがたっぷりのワインを「全然タンニンを感じません」と笑わせてから、肯定的なコメントしてたのも面白かったです。
各ヴィレッジ・ワインはシンプルで軽めでしたが、いうまでもなくそれぞれ個性があました。どのワインも長く寝かせるとより美味しくなるだろうなと思わせるワインでした。Gevrey-Chambertin、Vosne-Romanee、Nuit-St-Georgesは深い芳香があってエレガント、これらの地区のグランド・クリュに共通した味と香りの要素が感じられました。
セミナーの後はAnderson ValleyのMaggy Hawkのワインをフィーチャーしたランチに出席しました。ランチなので2つのピノに加えて、シャルドネとホワイト・ピノ・ノワールが出されました。入り口でグラスに注がれて渡されたワインは、滑らかでフレッシュ、中位のボディ、ほろっとした白桃、洋ナシ、生き生きとした酸味、優しい口当たりの白ワインでした。ホワイト・ピノ・ノワールとのことで、初めて飲みました。楽しい白ワインでした。
一緒のテーブルの隣に素敵なカップル(カーボーイハットを被った男性と美人の奥様)が座っていました。
「カーボーイですか?」
「イエス」
「じゃあ、テキサスからいらしたの?」
「ノー、パソロブレスです」
「パソロブレスにカーボーイがいるの?」
にっこり笑って「イエス」
「牧場を持ってます」と奥様。
「ローディオとかもするんですか?」
「イエス」
奥様のほうも「私もしますよ」
「イエーイ、カリフォルニアで本物のカーボーイに会えた!」とミーハーの私(苦笑)。
奥様が「カーボーイはサイドビジネスで本業はブドウ園の管理をしてます」
Santa Maria Valleyにある有名なブドウ畑Sierra Madre Vineyardsの管理者でした。素敵なイケメンカップルに出会えたのもこのイベントの楽しい思いです。
セミナーやランチ後に、ホテルの敷地内にある散歩道を海を眺めながらゆったっりと散歩しました。
初日と二日目の両日にグランドテイスティングがプログラムに入っていて、このプログラムのチケットを買って地元の人たちがたくさん参加していました。カリフォルニア、フランス、ニュージーランド、オレゴンのワイナリーが参加しての盛大なテイスティングです。活気に満ちたワインラバーたちが生き生きとテイスティングをしたり、数人の仲間でワインについて話し込んだりしてます。
大きなテイスティン会場に入ると、いつも、どれだけのワインを試飲できるのかしらと、まず敗北感が心をよぎります。
会場の隣にVIP用のサロンが庭の一画に設置されていてDJが入って、チーズセクション、スポンサーワイナリーのワインがテイスティングできるカウンターもあります。テーブルを囲んで談話しながらワインを楽しんでいる人たちを見て、ワインイベントに参加すると、がつがつとワインを試飲しまくるのが習癖になっている自分に気が付きました。こんなに美しいセッティングなのだから、海の風に吹かれながら、ゆったりと楽しんでワインを飲んだほうがいいんじゃないのかしらとふと思いました。ワインは楽しむための飲み物ですものね。
その他、Celebration 20 years of Garys’ Vineyardのセミナーとか The Grand Cru Burgundy(チケットは高いことでしょう!)のディナーを選ぶこともできます。
サンタ・バーバラの濃紺の海、ソノマより強い日差し、広々としたホテル、お宅感(?)を感じさせないワインセミナー、フレンドリーな会話を楽しめるランチ。
2年ぶりのピノ・ノワールを祝う素敵なイベントに参加できてウキウキ気分で帰途に着きました。