No. 34 Date:2008-5-09

ハードロック、それともジャズ？

まるで編目がびっしりと詰まったようなよく熟した黒系フルーツの果肉。アルコール度が決して低くはないカリフォルニアのシラー。あくまでも一直線のワイ ン。繊細な味の起伏がない。よくできたこのタイプのシラーだ。上品に首を傾げて「うーん、美味しい」というよりは、｢がーん、いいじゃない！｣っていう感 じで、消えかかっていた心のエネルギーがよみがえってくる。
ふと思った。これって、最近、私が凝っているハードロック（ヘビー・メタルに近い）、例えばメタリカのアルバムを聴いているときと似た感じ？ハードロック を毎日聴くということはないように、このタイプのワインを毎日飲むのは疲れるかもしれない。スピード感あふれるギターが同じフレーズを最大のボリュームで これでもかというように繰り返す。そこには感情の起伏を拒否する強さがある。そして気持ちの強さが倍増して、エネルギーとなっていく。
ジャズ派のワインは、ブドウが育った土地のストーリーを語る。霧、太陽、土、傾斜。ブドウの個性に注意を払い、それを表現しようと情熱を傾ける造り手を想 う。聴いた瞬間のインパクトは強くない。じっくりと聴いているうちに、その曲の世界へ入り込んでいく。
ジャズはすぐに楽しむというには、ちょっと難しい。ハードロックは、好きか、嫌いか、一瞬のうちに決まる。
テロワールを尊重した、一見、地味なワイン。おいしさを飲んでいるうちに、さりげなくじわりと示してくれるワイン。飲んだ瞬間から好きか嫌いかを決めるこ とができるスタイルのワイン。あなたはどちらが好きかしら？ハードロック？それともジャズ？