女一人のランチ

 

一人ではコーヒーショップにも入らないという女の友達が数人いる。私はコーヒーショップはほとんど一人で行くし、どうしても行きたいレストランがあると一人でも入る。取材に出かけたときなどは、美味しいレストランがあるワインカントリーで、お持ち帰りを買ってホテルで食べるのはもったいないから、一人でもレストランへ行く。アジアの中年女性(私のこと)が一人でレストランへ入っていくと、店の人は「どうしたものか」という表情を見せて、なかなかテーブルにやってこなかったこともある。

雨が降る平日にサンフランシスコへ出かけた。表情の冷たい人が多いサンフランシスコのレストランで女一人で食事をすると、どんな感じかなと興味津々で、ゴールデン・ビアッシュに一人で入った。ここは地ビールを出すビヤホールとして知られている。若い案内係の女性は、ひとりと聞いて、バーセクションのどこへでも好きなところへ座ればと顔に書いてあって、その方向にあごをしゃくった。なるほど。

背の高い丸テーブルが空いていたので、そこに落ち着いた。さあ、どれだけ待たされるのかなと、じっくりと待つことにした。それほど待たないうちに、お化粧気のない小柄なサービスレディがやってきた。

「フリーでサンプルのビールを出してますよ。飲みますか?」とにっこり。意表を突かれて、一瞬、ぽかん。のんべいの私がただのビールを断ることなんてありえない。「イエス、プリーズ!」

小さめのグラスに注がれたビールがテーブルに置かれた。色が薄めの軽やかなビールは渇いていたのどをさわやかに潤してくれた。美味しかった。Golden Birsch Export というビールで一番軽いタイプなのだという。

ランチなので、グリルしたサーモン付きのホーレンソーのサラダとニュージーランドのKim Crowfod のソーヴィニヨン・ブランをグラスでオーダー。ニュージーランドのソーヴィニヨンらしいグスベリとイチジクの葉の香りがして、酸と甘味のバランスがいい、きれいに上手に造られている。ホーレンソーにゴートチーズ、サーモンが上にのったサラダとぴったり。サーモンは新鮮で美味しい。

小コップ1杯のビールと、1グラスのソーヴィニヨン・ブランで朝方、大雨の中を運転してきた緊張感がすうと解けて、心が和らいだ。

広々としたバーセクションのカウンターは程よく埋まっている。スポーツバーでもあるので、テレビがあちこちにあって、サッカーとカレッジのバスケットボールが放映されていた。テーブルはオフィスレディやカップル、カジュアルなビジネスミーティングの人たちでほぼ埋まっている。でもスポーツ観戦ではないから、静か。ガラスの壁越しに、雨で曇った湾とベイ・ブリッジが見える。

仕事熱心のサービスレディ、名前はCriselda が大きなトレイに並べられたミニデザートを手に、やってきた。デザートはパスと言ったら、「じゃあ、もう1杯、ワインはいかが?」とCriselda。商売がうまいよね。雨の中を運転して帰らなくてもいいのなら絶対にもう1グラス飲んでた。ぐっとこらえる。

平日の雨天の日のランチ。ホーレンソーのサラダ($13.75+サーモンが$3)、紅茶が$2.50、ソーヴィニヨンブランが$10.50。税金チップを入れて、$37。女一人の心地良いランチだった。

帰りの車の中で「女一人でレストランに入る」のシリーズを書こうかな何て考えて、ニヤニヤ。