本当のワインラバー(愛飲家)

本当のワインラバー(愛飲家)

札幌へ帰郷すると毎年ワインパーティを開いていただいている。もうかれこれ、145年は続いているかしら。このパーティに毎年出席してくださる紳士がいらっしゃる。このことを知ったのは昨年の夏のパーティだった。たまたまご挨拶にテーブルを回っていたら、「毎年、貴方のパーティに参加してます」とおっしゃられて、気が付かなかったことを申し訳なく思うと同時に、うれしい驚きだった。謙虚な方で、後ろの隅っこの席に静かに座ってワインを楽しんでいてくださったのだ。

ワインラバーという言葉は、アメリカでの話なのかもしれないけれど、本当にワインが好きな人、ワインコレクター(お金持ちだよね)など広範囲の意味で使われている。

もし「シャトー・マルゴーとDRCが大好きで他のワインは飲まない」という紳士がいたとして、この紳士は本当の意味でワインラバーなのだろうか。

オパス・ワン、サロン、ドン・ペリニョンなどを揃えて、ワインラバーだと自負してるお金持ちのコレクターもいらっしゃる。単に裕福でベスト(高くて)という評判のワインを買うことが出来ることに満足しているのかもしれないなんてうがった見方をしてしまうこともしばしば。

ワインラバーってお金持ちじゃなくちゃなれないのかね。確かにお金があるといろんなワインが飲めるからワインラバーになることはできる。

リリースされたばかりのシャルドネを好む人より、20年たったリースリングを好んで飲む人のほうが真のワインラバーだといえるのかな。

お金持ちではないけれど本当にワインを愛している人たちがたくさんいらっしゃる。

札幌でのワイン会に毎年参加してくださる紳士は「難しいことは何にもわかんないけど、ワインが好きでね」と話してくださった。「居酒屋にも最近はワインが置いてあって、ワインを楽しんでるんだわ」とにっこり。

その夜に出されたワインがどんなワインかを説明させていただくと、ああそうなんだとまっすぐに受け止めてくださる。生きてきた過程で培われた人間としての自信というか確信が、気負うことなく漂っていて、美味しければいいんだよということを声高に話すのじゃなくて、幸せそうに楽しく飲むことで示してくださった。

こういう自然体でワインが好きだから飲むっていう方が本当のワインラバーなんじゃないのかしら。知識や理屈じゃなくて(頭で飲むんじゃなくて)、ワインを飲むことを楽しむ方がどんどん増えるといいね。じゃないと英語の表現になってしまうけれど、ひとつのパイを分け合っていても、もうひとつ別のパイを分け合えるようにならないとワイン市場は広がらないよね。

中には「単なる酒飲みなんですよ」と謙遜される方もいらっしゃる。ワインはアルコール飲料だから酒(日本酒という意味ではなくて)のひとつだ。単なる酒飲みの方に大いにワインを飲んでいただきたい。