No. 45 Date:2010-4-23
まだまだ不景気
アメリカは景気回復の兆しが見えてきたといわれているものの、失業率が下がらず、一般消費者はお金を使うことにとても慎重だ。
しかしワインは贅沢な飲み物だから、経済的な余裕がないので、まずカットするというのではないらしく、高いワインを飲むのを控えているものの、フレンドリー価格のワインを飲むのはやめていない。
ワイン市場は今、買い手市場だ。お値打ちワインがたくさん出ている。プレミアムワインのセールのお知らせメールが私のところにも、ちょくちょく入る。確かに安くはなっているけれど「すごいセールだ、絶対に買おう!」と思うほど安くはなっていない。
買い手市場ではあるけれど、買う側は賢い消費者でなければならない。例えばディスカウントする前に価格をぐんと上げておいて、それを値下げするという方法 をとっているショップもあるからだ。価格を吊り上げたものを安くすると値引率が高くなって、大セールみたいな気分になる。
その対処法として、賢い消費者はワインの価格が比較できるサイトを利用する。他のワインショップやレストランがワインをいくらで売っているのかわからな かった時代は終わった。今や、卸値の3倍をかけて売るレストランがあったとしたら、サイトで価格を比較する賢い消費者は取りすぎに不快な気持ちになるだろ う。そういった意味で、今後、ワインショップ、レストランのビジネスに変化が起きるかもしれない。
アメリカのワイン価格を比較できるサイトのひとつ、wine-searcher.com で2001年オパス・ワンとシェファーのヒルサイド・セレクトをチェックしてみた。カリフォルニア州と指定したら、オパスワンは7店舗、価格は219ドル から、シェファーは約16のワインショップが羅列されて、価格が比較されていた。国も選べるようになっていたので、日本を指定して円で同じワインをチェッ クしてみたけれど、これは出てこなかった。まだこのサイトは日本のワイン市場までは把握していないのだろう。
私の娘の世代、ミレニアルと呼ばれる世代はパーカーやスペクテーター誌のポイントではなくて(娘いわく、高いワインは買えない)、ワインショップへでかけ て10ドルから20ドル(特別のオケージョンだそう)のワインを買う。それも何国のワイン、どこの地区といった偏見なしで買う。ビールではなくワインを買 う。この世代がベビーブーマーが退職した後の、アメリカの将来のワイン市場の希望の星だ。バーゲンワインを見つける経験を十分に積んだこの世代が30代 40代になったとき、アメリカのワイン市場はどのように変化しているのだろうか。
マタンザス・クリーク・ワイナリー閉鎖
ケンダル・ジャクソン(K-J)は、いろいろなワイナリーを所有し、その経営振りには定評がある。そのK-Jでさえも、この不景気の中で、数ワイナリーを閉鎖している。
そのひとつがマタンザス・クリーク・ワイナリー(Matanzas Creek)だ。素晴らしい醸造家、デイヴィッド・レーミーとメリー・エドワードを産み出したワイナリーでもある。二人が造ったシャルドネが、その当時大 きな話題となった。ソノマにあるこのプレミアムワイナリーをK-Jが買収。
買収後、ソノマ・ヴァレーのサブ・リージョンとして最近注目を浴びているベネット・ヴァレーの名前を広めたのがこのワイナリーのメルロー、そして後にシラーだ。
そのワイナリーが閉鎖された。マタンザス・クリークのブランドのワインはアレクサンダー・ヴァレーにあるK-Jの本拠地ワイナリーであるストーンストリート・ワイナリーで生産されるという。
不景気の波と時代の流れを感じる。