No.44 サンタ・ルシア・ハイランド試飲会

No. 44 Date:2010-3-03

Santa Lucia Highlands
エル・ニーニョの年ということで、雨天が続く。2月8日、久しぶりの曇りのち晴れの予報。青空が垣間見える午後、サンタ・ルシア・ハイランド地区の試飲会があったので、サンフランシスコへ出かけた。ゴールデンゲートブリッジから久しぶりに青い海が見えて幸せ気分。帰りは雨が降り出して、一日晴れるという天気予報は外れ。
サンタ・ルシア・ハイランドのブドウ栽培地区としての近代史は1970年代から始まった。AVAとして認定されたのは1991年。この地区は高地(標高98フィートから2349フィート)に位置していることと海からの風と霧のため涼しい。涼しい地区に適しているピノ・ノワールとシャルドネが主に栽培されている。次いで涼しい地区のシラー。栽培面積は2428ヘクタール。そのうちピノ・ノワールが1012ヘクタール、シャルドネが850ヘクタールを占めている。
この地区は数社のワイナリーがよく名前を聞く同じ畑のブドウを使ってブドウ畑名入りでワインを生産している。よく聞く畑の名前はGarys’ Vineyard, Sleepy Hollow, Pariso Vineyard, Doctor’s Vineyard, Rosella’s Vineyard。私がいいなと思ったワインはGarys’ Vineyardの畑のブドウを使ったのが多かった。そしてワインの値段も高い。次いで Sleepy Hollowかな。
印象に残ったワイン。
★La Rochelle
2007年ピノ・ノワール S.L.H. $38
2007 年ピノ・ノワールSleepy Hollow Clone 113 $52
★Lucienne
2007 年ピノ・ノワール Lone Oak Vineyard $45
★McIntyre
2007年 ピノ・ノワール Estate $42
★Pey-Lucia Vineyards
2007年ピノ・ノワール Frisquet $39
★Pisoni
2008年 Lucia Pinot Noir Carys’ Vineyard $50
★Siduri
2008年 Siduri Pinot Noir, S.L.H. $30
★Testarossa
2008年ピノ・ノワール Garys’ Vineyard $59

全体の印象
過熟風味、高いアルコール度、シラーのようなタイプのピノ・ノワールが、この地区のシンボルみたいだったひところに比べると、全体にワインはふくよか、軽やかタイプに方向転換している。これはカリフォルニア全体について言えることだ。どのワインもきちんと造られているのだけれど、個性が感じられなかった。ピノということもあるけれど、立体感(複雑な味わい)が感じられないものが多かった。エレガントさと軽やかさと深みが共存した、胸に響くワインには出会えなかった。
不景気でワインの売り上げがはかばかしくないと言われている中で、この地区のピノは決して安くなっていない。ほとんどのワインの1本の値段が30ドルから60ドル。個性がいまいちのピノに、60ドルを出して買うということに割高感がしこりのように残った。
この先、さっぱりタイプを造るか、こってりタイプを造るか、畑が与えてくれる栽培条件の下で決めていくのだろう。エレガントなタイプのワインを造ろうとしているワイナリーもあった。まだ若い地区だから胸に響くワインを産み出すのはこれからなのかもしれない。この地区が出しているデーターによると、例えば9月の気温は、ブルゴーニュは11-22℃ほどで、この地区より涼しい。ロシアン・リヴァー・ヴァレーは8-28℃と気温の差が大きくて最高気温はこの地区よりも高い。この地区は12-25℃とロシアン・リヴァー・ヴァレーよりは低いけれど、ブルゴーニュよりは高い。サンタ・マリア・ヴァレー、サンタ・リタヒルズ、オレゴン州のウイラメッテ・ヴァレーはサンタ・ルシア・ハイランドより気温が低い。ロシアン・リヴァー・ヴァレーは正午の12時から4時まで、この地区は朝の4時から8時まで気温が上がっていく。ということはこの地区は夜の8時まで気温が上がるということだから、糖度は高くなりがちかもしれない。このデーターを見て思ったのは、ひょっとしてエレガントで軽やかなタイプのピノを造るには暖かすぎるかもしれないということだ。もう少し長い目で見ていきたい。