Date:2008-2-27

アメ(AME)
日本人シェフの曽根氏が奥様のリサさんと一緒にナパ・ヴァレーのセント・ヘレナにTERAというレストランをオープンして、大成功を収めたのは、日本でも食通とワイン好きの間ではよく知られている。数年前にサンフランシスコにアメというレストランをオープンした。ロゴから察して、このアメは雨を指しているようだ。
テラはフレンチに日本を含むアジアのスパイスや食材を生かした料理として人気を呼んだ。アメのほうは、さらにアジア特に日本の食材を多く使った料理になっている。「ローカルの食材を使い、南フランス、北イタリアの料理をミックス、日本人のシェフとしてのフィルターをかけた料理」と説明されている。
メニューに刺身バーからという項がある。私はそこに載っているメニューを見ると「わあ、これにしよう!」と幸せ感でいっぱいになる。刺身が食べたいのならすし屋に行けばいいと思うかもしれない。おすし屋さんではワサビに醤油、時には柚子が使われていて、旬の新鮮な素材の味そのものを楽しむ。それはそれでとっても美味しい。
でもアメを含むアジア料理の影響を受けた、質の高い料理を出すレストランは、新鮮な食材にほどよくマッチさせたスパイスが素材の味に、さらにプラスアルファーの美味しさが加味される。それがまたワインにとってもよくマッチするのが嬉しい。もちろんアジアのスパイスの使い具合が今一だったり、スパイシー過ぎて舌が麻痺して、ワインどころではなくなってしまうことも、たまにはあるけれど。
私は毎年、お正月におせち料理まがいの料理を作る。日本食の味付け基本は昆布と鰹で取ったダシのうまみに、みりん、酒、白醤油、薄口醤油、濃い口醤油、砂糖、塩、たまには味噌、それと酢だ。それが日本食の美味しさだ。でも極上のオリーブオイルをたらしたり、アジアのスパイスをうまく使った料理は味に幅広さが出るという期待感がある。
アメの料理は味がシンプルでありながら、スパイスが決して過度にならず、でも少なすぎず巧みに使われていて、上品に美味しい。

1月中旬に友人たち4人とアメに行った。まずは刺身バーからオーダー。
☆マチのカパッチョ、コカブのサラダ、ポン酢、ビーツ、ウインター・ブラック・トリュフ
☆鯛の昆布締め、ひじき、シソとゆずコショウを使ったソース
☆軽くスモークしたトラウトにポテトとリークのサラダにキャビア
☆タコのグリルにポテト、マッシュルームパセリ&ガーリックのバターソース。

こういった料理が美しく盛られて出てくる。 白ワインにぴったりの料理。アジア系のきっりっとした表情のソムリエさんと刺身をアレンジしたタイプの料理にどのワインを合わせようかと話し合った。前に来たときはオーストリアのグリューナー・フェルトリナーを飲んだといったら、今回はギリシアの白ワインを勧められた。
「グリューナー・フェルトリナーは最新注目の新しいワインじゃないんですね」と言ったらにっこり笑って「イエス!もう何年も前から人気がある白ワインですよ」と答えた。 ギリシアのワインはリストに2006 Moscofilero Skouras Peloponeseと書いてあった。シンプルだけど酸味がしっかりしていて、フレッシュで、きれいな造りのワインだった。料理によくマッチした。

次は赤ワインを楽しむ料理をオーダー。
☆ダック・コンフィを胡桃の粉で作ったクレープ包んだものとフォア・グラのソテー
☆酒でマリネしたアラスカ産ブラック・コッドをブロイルしたものと、シュリンプのダンプリングにシソのブロス。
☆グリルしたラムの舌のコンフィとゴートチーズのフリッタにオーガニックの胡桃のヴィネグレット
☆ソノマダックの胸肉のグリルに野生のキノコのラグー、ダックの臓物とボック・チョイ、ダックの脂肪であげたポテト・フリッタ

相棒が98年のラ・ターシェを持参。ソムリエさんにも飲んでもらった。デキャンタしても、まだ最初のアロマはシャイなのだった。フィニッシュもちょっとはかなめ。それが空気に触れて徐々に美しいアロマを発散し始め、上品なフルーツも感じられて、料理にとてもよくマッチした。でもまだまだ置いておきたかったという気持ちがないでもない。せっかちな相棒だよね、もう!
ワインリストはカリフォルニアのワインもほどよくリストアップされているし、世界のワインが高いもの有名どころばかりではなく、ユニークな品質の良いものも載せられている。マークアップは3倍ほどなので、価格は決して安くないけれど、それでも目の玉が飛び出そうな価格のものばかりではなく、それなりの価格の品質の良いものもきちんと載せられていた。バイザグラスでもユニークで良質のものが楽しめる。
ご想像通り、決して安いレストランではない。とはいっても、サンフランシスコのこのタイプのトレンディなレストランよりもずうっと高いというわけではない。料理の量は少ない。一緒に行った大柄な友達はお腹がすいていたらしくパンと(とても美味しいパンだった)バター(いい味のバターなのだ)をがんがん食べていた。
お皿に絵のように美しく盛られた料理は、今は世界のどこの国でも珍しくない。アメの料理は見た目、味のバランス、良質な食材というのをクリアしている。 ここの肉料理もとても美味しい。でも質の高い美味しい肉料理は、サンフランシスコの他のレストランでも食べられるから、私は刺身系を楽しむのに、このレストランへ行きたい。
特別な日に、胃袋のサイズが大きくない人と行ったら楽しいレストランだと思うよ。