No. 38  Date:2009-02-22

偉大なワインの定義  

異なる国、そしてその中でも異なる地区のワインを買うとき、その地区の特色の違いを味わうのが楽しみの一つ。例えばカリフォルニア内でもサンタ・バーバラ・カウンティのピノとロシアン・ヴァレーのピノはその個性が違う。ましてやロシアン・ヴァレーのピノとオレゴン、ブルゴーニューでは個性が違うのが当たり前。基本的な醸造技術に上下がある場合は別として、どちらもきちんと造られたワインなら、どちらがベターかという意見は理論的ではない。どちらが好きかということであって、あくまでも好みの問題。
偉大なワインというと、まだカリフォルニアではなぜかシャルドネとカベルネ・ソーヴィニヨンとなる。ピノ・ノワールは映画「サイドウエイ」効果で人気が出て今も良く売れているから、カリフォルニアのピノもいつか偉大なワインのひとつとなって、人々が偉大なカリフォルニア・ピノについて語る日が来るだろう。
ヨーロッパへ行って、例えばドイツで品質の高いリースリングを飲んで感激したとする。ドイツの素晴らしいリースリングを他の栽培地区で造ることができるのだろうか。言い換えれば偉大なワインと評価されているワイン、それを模範としたワインでなければ偉大じゃないということなのかしら?もひとつ、例えば質の高いピノを飲んだとする。このワインを偉大なワインと評価するには偉大なブルゴーニュと似ていなければ、偉大なワインじゃないということになるのかしら?

人々は長い年月、ワインの評価をしクラス分類し、それを祝福し、尊敬してきた。ヨーロッパのワイン生産国はそのワインが独特のブドウ畑、あるいはシャトー(メドック、グラーヴ)によって質的な差があることを認識し、それが法律になった。
アメリカでは偉大なワインというのはまだ新しいことだ。法律的にクラス分類されたリストや確立された階級は存在しない。ただ素晴らしいワインが存在するということ。アメリカワインの多くがインターナショナル・ワインコンテストでメダルを獲得したり、評論家の喝采をあびて、ヨーロッパの似たクラスに近い価格をつける。
価格
偉大なワインの伝統的な基準のひとつが価格だ。ボルドーは150年ほど前にナポレオン3世がワインのランク付けをするようにと命令し、価格に基づいてベストワインのクラス分けをした。常に最高価格で売っていたものが第1級とされたのだった。      
しかしアメリカのワインは価格が頼りになるバロメーターではない。一定のタイプのワインが他の異なるタイプのワインより高価格で売られている。それからそのワインの本来の質というより、生産量が少ないということが高価格につながっていることもある。もっとも実際に生産量が少ないのか、単にそういうように認識しているのかはわからないけれど(?)。
土地
偉大なワインのもうひとつの基準は土地だ。他の土地よりも高品質のワインが生まれるブドウが育つ土地。例えばブルゴーニュー。伝統的なシャルドネとピノ・ノワールが生まれる一定の土地がクリュと呼ばれている。一定の土地を多くの人が所有し、異なる醸造テクニックによって違ったワインを造っているとしても、その地区はグランド・クリュ、プレミエール・クリュ、あるいはコミューン、ヴィラジュワインと分類される。長い歴史を経て一定の土地で栽培できる品種が法律で決められた。
アメリカでは何世紀にも及ぶ長いブドウ栽培とワイン生産の歴史がない中で、どの土地が個性があり、クラス分類した場合、それが確かなものなのかどうか、だれもまだ確信がない。それでも例えばナパ・ヴァレーのスタグス・リープ地区は、その個性を反映したカベルネが生まれている。しかしそれと同時にカベルネ以外の他の品種が質の高いワインになることもある。
AVA(アメリカブドウ栽培地区)というシステムが作られたけれど、このシステムはどの地区がどの品種を栽培しなければならないとか、その地区のワインはどのような味の特色がなければならないという規制はない。将来はわからないけれど、現時点ではAVAは栽培地区の認定、ラベルに記載の規則であって、その地区の質については触れられていない。
点数
もうひとつ偉大なアメリカワインと評価する基準として、ワイン評論家たちが点数でワインを評価している。95点のワインが85点のワインより偉大であるということは確かなのだろうか。
「点数をつけることが客観的である」と考えること自体が錯覚でないといえるのかしら?
年月
偉大なワインという場合、一度の時点で評価するものではなく、長い期間にわたってそのワインの質と特色が記録されたものでなければならない。その点から見ても点数をつけるシステムをもとに偉大なワインを決めるのは、そのワインを長い年月にわたる記録に関知していないのが問題。 
そのワインが10年以上、質の高いワインとして造られてきたものであることが重要。ボルドーやブルゴーニューでは10年は長いどころか短いと考えられるけれど、アメリカでは10年は妥当な期間だろう。

アメリカのワインが革新的に進歩し始めたころは、シャルドネはブルゴーニュの白を、カベルネはボルドーのスタイルをお手本としていた。現在の偉大なアメリカのワインは、フランスワインに似せているのではなくて、そのワインとしての個性をしっかりと持っている。個性というのは味が個性的であって同時に美味しいワインであるということ。
こんなことを考えながら美味しいワインを探してみたい。欲張ってグッドヴァリューのワインもね。
ボルドーの第1級ワイン
Margaux
Lafite-Rothschild
Haut-Brion
Mouton-Rothschild
Latour

カリフォルニアのクラス分けは?
皆さんはどのワイナリーをリストアップしますか?
次回は具体的に美味しいワインを追いかけます。