9月末、収穫を待って待機している時期にフォーマンに行ってきました。

あちこちのサイトに書かれてますが、リックは青年醸造家として「ナパにスターリング・ヴィンヤードあり」と言わせるワインを造って、有名人(笑)になり、ニュートン・ヴィンヤードにも絡みというやり手でした。有名人でいるのは、もういいかと思ったかどうかは知りませんが(笑)、(そんなようなことをボソッといったのを聞いたことがあるような気もしますが)、1978年にハウエルマウンテンの裾野に土地を買って、翌年に急傾斜の土地をダイナマイトで爆発させて開墾した3.4ヘクタールの畑にブドウ樹を植えました。1983年にフォーマンを設立。以来、32年間、自分が信じるスタイルのカベルネを造り続けています。

後にこの畑の上にある8ヘクタールの畑をデヴィッド・エブリュとリース。ちなみに2000年のヴィンテージまでエブリュのカベルネをフォーマンのセラーでリックが造ってたんですよ。

彼がいいと思うスタイルに自分なりに変えてきました。リックは英語で言うコントロール・フリーク。全て自分でコントロールしなければ落ち着かないのです。1980年代のワインは収穫は比較的(今に比べると)糖度が低い時期に摘んで、酸を加えて、しっかり濾過もして、きっちり引き締まったカベルネを造っていました。

リックのカベルネはクラレットを思わせるというので、ボルドーファンが好んで買い求めるカベルネで注目を浴びていていました。

1990年代に入って、ブドウがもう少し熟した時点で摘むように変えました。当時のリック曰く「飲み頃になるまで何年も待つのに疲れた。若くても美味しく飲めるカベルネがいいなあと思うようになったので、スタイルを変えた。」

そして酸を加えるのも止めました。

2003年になって、さらに熟した時点でブドウを摘むようになりました。これは息子のトービーの影響があったとのこと。

パーカーが高得点を与える過熟気味のブドウから造られたアルコール度の高いカベルネがもてはやされる時代になっていて、リックもそのタイプのカベルネを造って、パーカーの高得点を得ていました。 

そして今、アルコール度は14.5-15%と決して低くはないですが、アルコール度の高さはまったく気にならず、エレガントでバランスの取れたワインを造っています。自分が信じているスタイルのワインを造リ続けて、今になったという自信と満足感がリックの表情から読み取れました。そして息子のトービーがリックを支えていることで、今までになく安定した様子のリックでした。

醸造:

リックはボルドーの大ファン。高くて買えないから自分で造っていると冗談。「それにボルドーに比べると安い」とにっこり。ボルドーの伝統を守っているのが、ブレンドの時期。発酵が終わった時点で各ワインをブレンドして、セラーの地下に掘られたカーブへ重力で移動させて、約100樽ほどに入れて熟成。この中でフォーマンのラベルでリリースするレベルの質に達していない樽がセカンドラベルのグランド ロッシュ(Grande Roche)としてリリースされています。

フレンチオークで熟成するのはもちろんだけれど、決して100%新樽を使っていないのもユニーク。

今、多くの醸造家が自然酵母を使っているので、リックもそうかなと思ったら、 そうではなくて自然酵母から抽出して作った培養酵母を使っているとのこと。理由は「自然酵母だと発酵をコントロールできないから」

もう一つ、「卵型コンクリートタンクは使わないの?」と聞いたら、「フルーツの良さがよく表現できないから使わない。赤にも白にも使わない」ときっぱり。

といっても最新式の醸造設備を使わないわけではなくて、コンピュータのシステムを使うオートポンプオーヴァーを2006年から導入。発酵中は2時間ごとに10分ずつポンプオーヴァーを繰り返すことによって、抽出度を高めています。

さらに無濾過というのも、最近の造りにうたわれているけれども、リックは軽いフィルターをかけます。

毅然とした表情が「俺のワインは味で勝負、それに綺麗に熟成するよ」と言ってます。

畑:

畑のテロワールを表現するのをモットーとしてます。火山性の土壌。自ら畑の手入れをせっせとする。ブドウの生育期間中に各ブドウ樹は16回手入れをされていると話してくれました。4月中旬から8月中旬にかけてキャナピーの整備、無駄な新梢の削除、摘葉、摘房等々の作業は手を抜きません。。

「俺と畑さ。どうしたら畑にベストか熟知してる。ブドウ樹の生育を安定させて個性を引き出すんだ」とリック。

フォーマンのシャルドネはシャブリスタイルでマロラックティック発酵はされていなくて、キリッと酸の利いた秀逸なシャルドネで、長く熟成することでも知られています。でも生産量を1000ケースから500ケースに落とすということです。

コストパーフォーマンスが素晴らしいセカンドラベルは300ケースから500ケースに増やすそうですが、それでも少ないよね。

2012年カベルネ・ソーヴィニヨン

チェリー、黒系フルーツ。スパイス。滑らかな口当たり。フィニッシュはシームレス。エレガントでしなやかバランスがいい。

2013年カベルネ・ソーヴィニヨン

レースのような軽やかさ。といっても決して軽いワインではない。このヴィンテージからマルベックもブレンド。前の年までは主にカベルネ・ソーヴィニヨン、それにメルロー、カベルネ・フラン、プチ・ヴェルドをブレンド。