私みたいに古い人間はワイナリーを訪れてテイスティングするというと、テイスティングルームのカウンターへ行って、立ったまま試飲というのが一般的でした。そして試飲料はタダ。
今もそういうワイナリーも存在しますが、単にワインを試飲するだけでもテーブルで担当の方の丁寧なワインの説明を聞きながら試飲するのというのが多くなりました(もちろん有料です)。
さらに最近はワインショップには出さず、レストランにもほぼ出していなくて、輸出もしていない、ワイナリーで試飲して購買、あるいはメンバーになってワインを手に入れるというビジネス形態のワイナリーが登場しています。
そんなワイナリーの一つがRam’s Gate です。
ワイナリーの規模が極小なのでディストリビューターが扱ってくれないから、ディレクトセールをしているというのとは、また形態が異なります。
サンフランシスコから州道101号線を北上、37号線から121号に左折するとカーネロス地区に入ります。なだらかな丘陵地が続いて心が和みます。最初に右手にブドウ樹で埋まった丘陵地の頂上にあるワイナリーRam’s Gateが目に入ります。
2011年に設立。当初はメンバー以外は入れてくれないと言う話を聞いてましたが、今は予約を取るとメンバー以外の人もテイスティングができます。
私が見たのではメンバーのみの部屋が2部屋と,テラス、大きなカウンターがあるバー風の部屋がありました。どの部屋も豪華でスペースがたっぷりの空間が心地いいです。ワインの質も決して悪くありません。単一畑のシャルドネ(7種類)とピノ・ノワール(8種類)、数種類の他の品種も少量生産。価格も安くありません。
イースター休日の前日、金曜日だったせいもあるかもしれませんが、若くてお金に余裕がある(そうに見える)グループやカップルがテーブルについて楽しそうに過ごしています。テラスからの見晴らしも素晴らしいです。
私は”Palate Play’ Food & Wine Pairing” というのを試させていただきました。
2014 Chardonnay Ram’s Gate Estate, Carneros ($76)
2014 Chardonnay Durell Vineyard, Sonoma Coast ($74)
2015 Roberts Road Vineyard, Sonoma Coast ($72)
2014 El Diablo Vineyard, Russian River Valley ($72)
2014 Vent de Colline ($76)
6つの各ワインにマッチするように料理されたお皿がワインと共に出てきます。シェフがいてかなり凝った料理です。
例えば2015 Robert Road Vineyard, Sonoma Coast (香りはやや閉じ気味ですが、チェリーの風味と酸のバランスが良く、長いフィニッシュ)のピノ・ノワールに合わせて、Braised Pork Sugo, Wild Mushroom, Carrot, Squid Ink Spaghettini, Goat’s milk Butter, Chiveとメニューに書かれてます。
意外だったのが、ローヌ品種のブレンド2014 Vent de Colline(60%のシラーに35%のグルナッシュ、5%のグルナッシュ・ブランをブレンド。軽めのボディできれいな酸が特徴) にレモンアーモンドクッキーとベーコンチョコレートクッキーが出されました。ワインの酸味とレモンの酸味がマッチしてななかなかなものでした。
料理はメンバーはオーダーできますが、メンバー以外の訪問者はチーズプレートとワインだけオーダーできるとのことでした。
アシスタント醸造家のルーク(Luke)がワイナリーと畑を案内してくれました。
「単一畑のワインばかり造るのは作業も大変だし、消費者は名前を覚えるだけでも大変だと思うんだけど、、、」と私。
「ブレンドしてしまうと畑の個性が消えてしまう。畑の特質を生かしたいから」とルーク。
シャルドネの樹が随分と低く仕立ててあります。
「わあ、ブドウを摘む人は大変だね」というとにっこり笑って否定せず、「カーネロスは風が強いから低くしないとダメージを受けることもあるから」とのこと。
セラーではタンクは台の上にのっていて、注入口?は高い位置にありました。ルークの背丈に合わせてあるので、腰を曲げずに作業ができる設置になっているのを、茶目っ気たっぷりに指差してくれました。
年間生産量は1万1000−1万2000ケース。大きなワイナリーではありませんが、すごく小さなワイナリーでもありません。自社畑は28.5エーカー、あとは良い畑を見つけてブドウを購入しています。ほとんどがソノマ・カウンティの畑です。
売り上げの80%がメンバー、10%がテイスティングルーム、10%がディストリビューター。
「ワイナリーへ来てもらって、試飲だけではなくて、ワイン&フードのマッチング、仲間たちとの楽しいひと時を過ごすといったように、試飲プラスの体験をしてほしい」とルーク。
ワイナリーをあとにして駐車場へ向かう途中、数グループがワイナリーへと向かっていました。
豪華な空間、限定醸造の高級ワイン、クラブのメンバーの特権を満喫させる条件を整えた、新形態のワインビジネス。成功してます。
広々として心地よいテイスティングルームでひと時を過ごして、ゆったりとリフレッシュされた気持ちでRam’s Gateを後にしました。