ローレル・グレンが新ワインリリース
ソノママウンテンの中腹にあるカベルネ・ソーヴィニヨンだけを造る小さなワイナリー、ローレル・グレンが「2012 Lurel Glen Vineyard Lot 44」と名付けた新しいワインをリリースしました。ネーミングの理由はローレル・グレンの畑に初めてカベルネ・ソーヴィニヨン種が植えられて、2012年で44年になることからつけられたもの。
長い熟成の可能性がある8樽をオーナーのベティナ・シセル(Bettina Sichel)と醸造責任者ランドル・ワートキン(Randall Wartkins)で選びました。
選択基準は
- 構成がしっかりしていること
- エイジビリティの可能性が高いこと(30年もつもの)
- タンニンのキメが細かいこと
- エレガントで磨かれたワインであること
なぜこのワイン?
古くて新しいコンセプトです。
ローレル・グレンの畑で育ったカベルネ・ソーヴィニヨン種(ローレル・グレン・クローン)は長期熟成可能なワインになるブドウとして知られています。1982年からワイン生産を始めていますが、1985年、1986年が、まだ生き生きとしています。ちなみに私は1982年を飲む機会があったのですが、その素晴らしい熟成に本当に感激しました。
ローレル・グレンは2011年から新しいオーナー、ベティナ・シセルになりました。彼女の父親、ピーター・シセル(Peter M.F.Sichel)は1980年代にブルー・ナンの知名度と売り上げを世界トップに導いた人物として知られています。またその波乱に満ちた人生は本となって話題になりました。
ベティナは栽培方法を少しだけ変えたと話してくれました。
「ケイン(主枝?)の数と房の数を少しだけ落としました。密植度も少しだけ高めにかえました。ゴールは風味を少し凝縮させることと、ブドウを少し熟させることです。でもこの結論が長期熟成の可能性につながるかどうかは時間がたってみないとわかりません。ローレル・グレンの畑にとって良い結果と出るのかどうか、しっかりと観察していきます。オーガニック栽培に切り替えました。ローレル・グレンの畑が持っている素晴らしい個性とその可能性を継続していきたい」と謙虚です。
生産量は180ケース。
3本入りの木箱セットもあるけれど、インポーターには12本入りのケースで送っていますとのこと。小売価格は1本125ドル。
2012 Lurel Glen Vineyard Lot 44
上品なカシス、ブルーベリー、ブラックラズベリー、この畑独特の墨汁香、スパイス、洗練されている。自然感のある酸。しなやかな味わいと口当たり。理屈なしに美味しい!
2006年と似ているということで、2006年も試飲させてくださいました。
2006 Lurel Glen Vineyard
少しだけ出てきている熟成香と墨汁香が綺麗に溶け合ってより複雑味が生まれている。果実風味が消えて大人のワインに変化。Lot 44は更に磨きがかかって洗練されている。
2012 Lurel Glen Vineyard
ロレル・グレンのレギュラーのワインは華麗というよりやや男性的な感じの仕上がり。コクがあって墨汁香もくっきり。味わいはより凝縮されていて、酸味とこなれたタンニンも存在感がある。
現代人が好むタイプの若くてもアプローチしやすいワイン(カウンター・ポイント)と、伝統的なブドウ畑を大切に守り、30年寝かせておけるワインの生産と、両方を継続しています。
希少価値と超高額に設定してショック療法で注目を浴びる戦略ではなくて、誠実に畑を守っていこうというベティナから、ヨーロッパの伝統的なワインビジネスを知っているなあ感じました。そしてそれを着実に実現していくベティナの姿勢に敬意を払いたいと思います。