No.24 久しぶりのナパ・ヴァレー

No. 24-6 Date:2006-08-18

8月の第2週に久しぶりにナパへ行った。平日は思ったより空いていた。夏休みもそろそろ終わりでちょうど空いている日だったのだろう。でも金曜日の午後にな ると29号線は車の長ーい列。ナパで週末を過ごす人たちがやってきた。これから収穫期にかけて、また大勢に人がこのヴァレーを訪れる。なんせディズニーラ ンドに次いでツーリスト数が多いのがこのヴァレーなのだから。
オパス・ワンへ行った。ツアーと地下のファンシーなガラスの壁越しにきれいに樽が一列に並んでいるセラーを見ながらテイスティングをして終わる有料ツアー コースを予測していたのが、ツアーは無料、テイスティング希望の方はテイスティングルームでどうぞというポリシーに変わっていた。テイスティング料は25 ドル(ロゴの入ったグラスの底から4分の1くらいのところに線が入っていて、その線まできっちりと注ぐ)。グラスを持って階段を上ってテラス(展望台?) へ行って、29号線の向こう側に見えるモンダヴィとオパスワンの前庭にあるブドウ畑とオリーブの木々が並木道のように並ぶゲートまでの道を眺めながら飲む ワインは美味しさが倍増する。
2002年は暖かい年だったことと、90年代とはスタイルを変えて、よりナパらしい濃い目のワインに変えていることから、90年代のオパスワンはしなやかさ、華麗 さを特徴としていたのに比べると、よりボディがある華麗さに少し野性味を加えたワインになっていた。赤肉、カシス、スパイス、オークの香りが力強い。口に 含むとふくよかで香りの印象より軽やかだった。タンニンはよく熟していてよくこなれている。全体の印象はソフトクリームシェイプ。真ん丸いソフトクリーム が乗っている部分が香りでソフトクリームの殻の下の部分は細くなっている、そういう印象だった。まだ若いからフィニッシュは熟成とともに出てくるのかもし れない。値段($170)を考えないとなかなか美味しかったヨ。

ダリウッシュというキンキラキンのワイナリーがスタグスリープ地区に建ったので、行ってみた。オーナーはイラン出身、ロスアンゼルスでスーパーのチェーン店 を展開して成功、ナパに豪勢なワイナリーを建てた。土曜日に行ったら、テイスティングルームは試飲客で一杯だった。スタグスリープ地区にもツーリストの メッカができたということだ。ワインは前に一度飲んだことがあって、今はやりのこれでもか!という感じの過熟スタイルのワインだったので、今回はどんな風にかなと思っていた。誰にでも好かれる華やかでフルーティで過熟ではあるけれど、前よりは押さえ気味で、エレガントさもちょっと出ていて、建物の印象に負 けてしまわない一般受けのするワインだった。どちらかというとゼラチンワイン(フィニッシュがちょっと短めで骨格がふわふわとしている)だけれど、今飲む と美味しい。価格($34‐68)は決して安くはないけれどナパにしてはバカ高ではない。
フォー マンの2002セカンドラベルChateau La Grande Rocheのカベルネは構成が良く、バランスが取れていて、印象に残った。晴れの日に着飾って飲むワイン(にもなるけれど)ではなくて、こういうワインを ハウスワインにして我が家で飲めたら幸せだろうなと思う。デモ1本が$30だから、我が家ではちょっと無理。猛暑は本当にすごかったようでリックは思い出 すのもつらそうな顔で「ひどいものだったよ110度にはなっていた。表土の浅い箇所のブドウはちょっと打撃を受けた」と話していた。でもその後生き延びた ブドウは順調で、例年通りの成長具合だそうだ。

レストランで2002のハーランを飲んだ。深みのある黒系フルーツに杉、スモーキー、鉛筆の芯などが加わった深みのあるハーラン独特の香り。2002年とい うナパ・ヴァレーのヴィンテージを表現していて、とても濃くて味わいがびっしり詰まってフルボディ。でも重さを感じず気品さえある。だけど私の体力では1 グラスかな。
ドリップで落としたコーヒーとエスプレッソがあるように、あるいは煎茶とお手前のお濃茶があるように、ワインにもその二つのスタイルとその真ん中のスタイル がある。ハーランはお手前のお濃茶、エスプレッソの世界の最高峰に位置するワインだ。でもこのタイプを味わうのには体力がいるネ。私も体力を落とさないようにがんばらなくちゃ。
イギリスのライター、スティーヴ・スプリアーが体型によってワインの好みが違うという理論を打ち立てた。スリムでectomorphs(外胚葉型。体型分類 の一つ、痩せた体型)な人は、例えばシャンパン(ブラン・ド・ブラン)のようにデリケートなワインを好み、大きくて頑丈なmesomorphs(中胚葉 型。体型分類の一つで筋肉の発達を特徴とする。パーカーのように)な人は大きくて筋骨たくましいワイン(体格がワインにマッチする)に引き寄せられるとい うもの。当たっていなくもないかな。

我が家の近くのブドウ畑のピノ・ノワールの色がかなり濃くなっている。向かいの畑のカベルネも色付きが始まっている。いよいよ緊張と興奮の収穫期に向かっての時間の読みが始まった。