No. 31 モンテ・ロッソ・ヴィンヤード(Monte Rosso Vineyard)

No. 31 Date:2007-10-28

モンテ・ロッソ・ヴィンヤード(Monte Rosso Vineyard)

この畑の名前はずいぶん前から耳にしていた。我が家の裏庭から見える山の中腹に あって、古くからあるブドウ畑であることも聞いていたので、いつか行ってみたいなあと思っていた。ある日、モンテ・ロッサ・デイと称して、プレスを招くイ ベントの招待状が舞い込んだ。この畑のブドウからワインを造っている13のワイナリーが参加するので、そのワインもテイスティングできるというもので、張 り切って出かけた。
12号線からMoon Mountain Driveで右折、山道を登って行く。 指定時刻、9時45分に到着。すでに、どんぐりの木の下にちらほら参加者が集まっていた。広報担当の女性が「ここへ来るのに苦労しましたか?」と聞いてく れたときに、即、「とても簡単に来れました」と答えたら、感心してくれた。ナパヴァレーの山にある栽培地区の記事を書くために、マヤカマス・マウンテンを 回っていたので、比較的道幅が広く歩道されていて、標識もきちんとあるこの畑へたどり着くのはたやすかった。都会は運転が恐ろしい私なのだけれど、山道は 結構なれてきている。
地元のラジオ局の女性が10時30分にやってきた。この女性が来るまで時間通りに集まった人たちは待たされたってわけだ。せっかちの私は待ちくたびれてしまった。
それでもようやくジープで畑を回ることになった。土埃が鼻腔に流れ込んでくるわ、髪の毛は土埃にまみれるわで、ちょっと冒険気分を味わうことができた。 モンテ・ロッソ・ヴィンヤードという畑は1880年にエマヌエル・ゴールドスタインという人物が買い、ピスガ・ヴィンヤードと呼ばれていた。1886年に 3階建ての石造りのワイナリーが建てられ、ワインの生産がされていたのだが、禁酒法で閉鎖され、長い年月放置されていた。カリフォルニアの古いワイナリー の典型的な不運な歴史だ。ブドウ畑はそのまま栽培を続け、家庭用のワイン生産にサンフランシスコへブドウを送っていた。
1938年にルイス・マーティニがブドウ畑を買い取り、モンテ・ロッソ・ヴィンヤードと名づけた。1940年にかけてマーティニ家はカベルネ・ソーヴィニ ヨンやジンファンデルを植え、ブドウ畑は250エーカーまで増やしている。3年前にガロが買い取っているが、運営栽培はマーティニ家のマイケルが担当して いる。マイケルは「ガロもイタリア移民で親同士よく知っている仲だったし、伝統をキープするというので売る決心をした。ただのコーポレーションには売らな かった」と話す。
ブドウ畑は山の上、マヤカマス山の南西に面している。標高は700フィートから1,240フィート。天気のよい日は山の頂上からサンフランシスコ湾が見渡 せる。私が訪れた日も、遠くに霞んではいたけれど、サンフランシスコ湾が見えた。そして畑のてっぺんに立つと太陽に近いという感じ。でも風は涼しかった。 この日は予想していたよりもずうっと気温が低くてしのぎやすかった。 土壌は多様だ。火山性、沖積土、隆起によって海底の土質が押し上げられたものも混じっている。畑の箇所によっては赤い土が目立つ。これは鉄分が含まれた火 山性の土壌だ。
このぶどう園の入り口に見えた畑は、手入れの行き届いた最新栽培技術を駆使したブドウ畑を見慣れている目には、昔風で素朴、ちょっと荒れた畑という印象 だった。でも古くに植えたブドウ樹はいろんな病害を乗り越えた生き残りだ。山の奥のほうの畑はヴァーティカル・トレリスと呼ばれる整枝法が使われており、 数本のワイヤーを張って枝が上に上げられていて現代的なブドウ畑だった。モンテ・ロッソ・ヴィンヤードはブドウ栽培法の博物館だ。
13のワイナリーにブドウを売っているが、ブロックで売るという。「同じブロックを毎年同じワイナリーに売るのですか?」と聞いたら、「いや年によって違 う」という。「同じブロックを2つのワイナリーがほしいといってけんかになることはありますか?」と聞いたら、「いやない。でもそういう場合は銃を持たせ て決闘させる」とユーモアたっぷりの答え。
土埃にまみれて山の中腹の畑の一画へ着く。カベルネ・ソーヴィニヨンの畑だ。病害、山火事と戦い抜いた戦士のよ うなブドウ樹たち。この畑のブドウから造ったワインは個性があるんだとマイケル。この畑の横でこの畑のカベルネ・ソーヴィニヨンから造られた2つのヴィン テージをテイスティング。赤土の傾斜面にある畑、病害に打ち勝ったブドウ樹、ワインの関連が実感できる。

2003年モンテ・ロッソ、カベルネ・ソーヴィニヨン
畑は赤土。果汁の香りがして、軽やか。酸味は十分。エレガント。「病害と戦っているブドウ樹(程度はあるけれどとマイケル)は糖度が上がりすぎずに酸味を保ちながら物理的に成熟する。そして個性がある」と話す。100%カベルネ・ソーヴィニヨン。

2004年モンテ・ロッソ、カベルネ・ソーヴィニヨン
同じ畑だけれど、これがヴィンテージの差なのだ。もう少し熟していて、2003年よりもボディがある。これはカベルネに2%のプティ・ヴェルドがブレンドされている。凝縮感はそれほどないけれどふくよかでおいしい。

テイスティングで印象に残ったワイン。ここでテイスティングしたすべてのワイン はモンテ・ロッソ・ヴィンヤードで栽培されたブドウから造られている。よく造られているジンファンデルはソノマ・ヴァレー特有の白コショウの味わいと香り があって、きれいなベリー風味が特色だと思う。今まで名前を聞いたことがない小さなワイナリーのワインのテイスティングができて興味深かった。

アローウッド(Arrowood Vineyards & Winery)
2003年カベルネ・ソーヴィニヨン カシス、クロスグリのきれいな香り。程よく熟したフルーツの甘味。酸味とフルーツのおいしくて長いフィニッシュ。カリフォルニアらしい華やかなカベルネ・ソーヴィニヨン。500ケース

ビアリー(Robert Biale Vineyards)
2005年ジンファンデル
赤いベリー系の軽やかな香り。口に含むとベリーにコショウが加わる。山腹にあるブドウ畑のブドウの個性を生かした造りな のだろう、流行のこってりしたタイプではなくて、軽やかでエレガントなジンファンデル。この畑のジンファンデルを1995年から造っている。$45

ランチョ・ザバコRancho Zabaco Winery
2005年ジンファンデル(Toreador)
フルーツの熟した甘味とコショウと酸味がうまく溶け合っている、今風のいいワインだ。$50 200ケース

ジンファンデルでも$50、$60というものが出されていた。少量生産なので、好きだ!という人だけが買うワインということなのだろう。