No. 32 Date:2007-12-22
シフレット(Shifflett)
ソノマでワインビジネスにかかわる友人が、とてもいいワインを造るユニークなワイナリーがあるから行こうと誘ってくれた。
ワイナリーの名前はシフレット。ジェフリー・シフレットという男性が一人でワインを造っている。瞳に深みがあって優しくも怖くもあるという50代半ばくら いの小柄な白髪の男性だ。ジェフリーさんはナパで税金関係の弁護士と裁判官を務めていたのを退職して、祖父が放牧場として買った土地の一部(60エー カー)にブドウを植えて、ワインを造り始めたのだ。地区はオークノル地区。
29号線の西側、なだらかな丘の麓にブドウ畑に囲まれて、納屋というかセラーというか、木造の建物があった。丘に家族が住む家が点在している。
しとしと小雨が降って、ちょっと寒い。セラーの中に招き入れてくれて、タワー形式のレストランで庭によく置いてあるランプのようなガスストーブに火をつけ てくれた。テーブルを囲んで、ワインの試飲。ワイン造りが楽しくてならないという感じで、自分の子供のことを話すように「どう?おいしいでしょう?」とな んども無邪気に話しかける。
発酵タンクは0.5トンのプラスチックの箱で、基本的にはオープンタンクで発酵しているという。最近、ステンレスのバスケットプレスを購入したと、その写 真を嬉々として見せてくれた。裁判官、弁護士という乾いた世界から、ブドウ栽培ワイン造りに入って、このライフスタイルを楽しんでいる様子が伝わってく る。
年間生産量は1000ケースほど。生産量の半分はこのワイナリーを知っているファンが買っていく。1本45ドルで売っているというからお買い得。日本は大のお得意さんだと、またにっこり。
カベルネ・ソーヴィニヨンとボルドーブレンド、レッド・ワインの2種類を生産。7年前からカベルネ・ソーヴィニヨンを100ケースほど造り始めた。このワ イン用のブドウは購入している。これは1本100ドルとナパ価格だ。ボルドーブレンド、レッド・ワインを造り始めて4年目。900ケースほどを生産してい る。
栽培農家としてダックホーンとかケーキブレッドとかフランシスカン等にブドウを売っている。 将来のプランは生産量を17000ケースまで増やすこと。そしてもうじきカーブを掘る。
2001年レッド・ワイン(メルロー52%、カベルネ26%、カベルネ・フラン20%、プティ・ヴェルド2%)
カシス、黒系フルーツ、スパイス(オーク)の華やかな香り。口当たりはふくよかでしなやかな。空気に触れているうちにフィニッシュに甘味が加わって、美味 しい。グレートと叫ぶタイプのワインじゃないけれど、理屈抜きに美味しくて、よく出来ているワイン。45ドルというのが、なんといってもうれしいけれど、 間もなく値上げになりそう。
もし祖先がブドウ栽培にふさわしい土地を持っていて、社会的地位のある仕事をこなして、その後、エネルギーに満ちて、こうして良いワインを造って暮らしていけるというのは、多くの男性が夢見る人生かもしれない。「未発見という存在が好き」と言って微笑んだ。
こういうワイナリーを発見して歩くというのも楽しいかもしれないね。