No.35 7&8 Vineyard

No. 35 Date:2008-06-18

7&8 Vineyard


4月末、快晴の午後スプリングマウンテンのほぼ頂上にある小さなワイナリーを訪れた。
隣にバーネット・ヴィンヤーズ、ちょっとソノマよりへ行くとプライド・マウンテン・ヴィンヤーズがある。
6月のナパ・ヴァレー・チャリティーオークションにやってくるゲストを招待するというので、新築中のワイナリーの完成を急いでいる時期だった。2006年 のヴィンテージから、このワイナリーで生産を開始。訪問客を接待する広間はテーブルとソファが到着するのを待っているということで、皮製の椅子がダイニン グテーブルの到着を待って整然と並べられている。円形の窓から自社畑、遠くにバーネット・ヴィンヤーズが見える。
接待用広間に通じる大きなドアは銅をバーナーで焼いて色を変えたというユニークなもの。シャンデリアも銅だった。「なぜ銅を?」「ユニークでありながら自然の色を使いたかった」「なぜ7&8ヴィンヤードなの?」
ステフェン家の父親はフィナンシャルの分野の仕事をしている。中国や日本ともビジネスの縁が深いそうで、ラッキーナンバーは7と8ということからネーミン グしたという。ステフェン家は息子ウエスリー(ワイナリーマネージャー兼醸造アシスタント)を除いて、今もニュージャージーのプリンストンに住んでいる。
父親がいつかワイナリーを持ちたいという夢を持っていて、パートナーと共に、この土地に出会って購入。息子がその夢を実現。
息子のウエスリー・ステフェン氏は2006年から、ワイナリーのマネージャー兼醸造アシスタントを努めている。ニューヨークにあるCIAの本校を卒業後、 フレンチランドリーで働いた。2002年にハーランの醸造家、ボブ・レヴィー氏の元でハーベストのインターンとして働きはじめ、その後、4年間ハーランで ワイン生産を学ぶ。
ルック・モレー氏が昨年の6月から醸造を担当。2007年のワインは彼が100%手がけたワインとなる。その前はシャトー・ラフィット等のコンサルタント をしているクリスチャン・エルソメル氏がコンサルタントとして、年に2,3回やってきていた。このワイナリーのワインのスタイルは彼がプログラムを作成。 そのプログラムを引き継いだモレー氏がベターなワインにし、個性を加えていくことが期待されている。2004年はクリスチャン・エルソメルが手がけたもの で、2005年と2006年はルックが、引き継いだ形で造られたという。クリスチャン・エルソメル氏がよくないということではなくて、年に2,3回だと十 分ではない。やはりいつもテイスティングが必要なときにできるという距離にいるほうベターだからといっていた。
年間生産量は約1800ケース。シャルドネ(300-500ケース)とカベルネソーヴィニヨン(1400ケース)を生産している。
シャルドネは自社畑(4エーカー)のものを、カベルネは今のところ隣の畑から購入したブドウと自社畑(10エーカー)のを使っている。カベルネは増植中で 総面積が15エーカーになる。土壌の2つの主な土は粘土と火山性の土だ。シャルドネの畑は北東の斜面にあった。外に出ると日差しは強いけれど、山頂独特の クリーンで涼しい風が吹いていた。ここは標高616m。もちろん霧の上に位置している。シャルドネは1980年と81年に、カベルネは82年と83年に植 えられている。これを栽培していた栽培農家からこの土地を買った。
ボトルは母親がデザインした。広間はアットホームにしたいという父親の意向を入れて、広々としていて、自然なムードで気持ちが開放される。円形の窓からワイドで景色が見渡せる。
3面が地下になっている清潔で効率的に設計されたセラーに小型のステンレスの発酵タンクが並べられている。小さな規模のワイナリーにしては発酵タンクの数 が多い。少量ずつ、ブドウが熟したら摘んで発酵できるようにということなのだ。モレー氏が設計した選別機を使う。モレーの氏スタイルで徹底したブドウの品 質管理が行われて、品質の高いワイン造りを目指しているのがよくわかる。
1999年にこの土地を購入。2001年にワインを造った。カベルネは2002年、2003年にも造ったけれど、マーケティングを意識して本格的にリリー スしたのは2004年のヴィンテージから。2004年がこのワイナリーのファーストリリースと考えているとウレスリー。
小さなワイナリーだけれど資本は小さくない。新品の小型のステンレスの発酵タンクを揃えたセラー。樽が1列に並ぶ長いカーヴ。スペースを倹約して重ねて樽 が積んであるところはなかった。清潔で全てが整然としている。そしてスペースもゆったり。高級感を演出して気取ったところがない。案内してくださったウレ スリーも育ちのよさが気持ちよく出ていてとっても気さくだ。私のジョークに声をあげて笑ってくれる。高級ワイナリーとして世界的に位置づけられることを目 指しているのは明らか。インターナショナルになりたいときっぱり。ワイナリーがどのように成功するのかによって、このワイナリーの位置づけが決まる。その 日を待ちたい。
2004年“8”シャルドネ$50
ミネラル、フルボディ、口当たりはとてもオイリー。100%樽発酵。新樽使用率は50%、あとの50%は1年使用した樽を使っている。8-12ヶ月。樽香 は抑制されている。大人の複雑味のあるエレガントなシャルドネ。ルックが手がけたシャルドネは、ニュアンスが違っていると思うので、期待したい。
2004年“7”カベルネ・ソーヴィニヨン$90
100%カベルネソーヴィニヨンが使われている。新樽使用率は85%。もちろんフレンチオーク。26ヶ月樽熟成。カシス、エキゾチックなスパイス、ブラッ クベリー。構成がしっかりしていて、マウンテンブドウらしいマッチョ(男性的)なワインでありながら、複雑味がある。少しのなめらかなタンニンが心地よ く、フィニッシュにフルーツと共に長く美味しい味の印象を持たせてくれる。