No.36 ザカ・メサ(Zaka Mesa)

No. 36 Date:2008-09-24



9月5日にザカ・メサ・ワイナリーを訪れた。前日からシャルドネの収穫が始まったという。収穫時期がソノマ、ナパより少し遅い。
春先の霜害について聞いてみた。シラーが植えてある畑の1ブロックが害を受けたけれど他は大丈夫だったという。
この地区は9月が一番暑いそうだけれど、折からの猛暑がカリフォルニアを襲っていたから、すごく暑かった。でも海からの風がひんやりしている。夏のサンフ ランシスコは霧の影響で10度から20度ほどの気温が続く。その涼しいサンフランシスコが、なんと30度近くまで気温が上がったと朝のテレビで言ってい た。「暑さになれていないサンフランシスコの住民はばててるだろうなあ」、南カリフォルニアにいて考えた。
ザカ・メサはサンタ・バーバラ・カウンティのサンタ・イネズ・ヴァレー北部にある。サンタ・イネズ・ヴァレーがユニークなのは、ヴァレーが東西に横たわる 形になっていることだ。そのため海の影響を一面ではなく、2面から受ける。カリフォルニアの海岸沿いに近い栽培地区は南北に縦長に伸びているので海の影響 を受けるのは西側1面からで、畑によっては海岸線に沿って伸びている小高い山が海からの直接の影響を防いでいるケースも多い。
サンタ・イネズ・ヴァレーだけでなく、サンタ・マリア・ヴァレーも、サンタ・リタ・ヒルズも、遠くから見るとどの畑も白っぽい。ずうっとむかし海底だった のが隆起して形作られたからだ。きめの細かい砂地に石ころが混じっている。砂地だから潅水をしなければ何も育たない。
「この地区は潅水をしなくても育つ植物があるのですか?」
案内してくれたブルックは「オークツリー(カシワ?)だけ」といって笑った。
ザカ・メサは1973年からブドウを栽培している。そのころはカベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、リースリング、ジンファンデル、シャルドネと一般的に 知られている、そして売れ筋とされている品種を植えていた。それをローヌ系の品種がこの土地には向いていることを学んで、シャルドネ以外は1978年から ローヌ系品種に切り替えた。ザカ・メサの自社畑がある位置は、日中、暑い日は32-35度、夕方になると25-28度ほどになる。
サンタ・バーバラ・カウンティは涼しいから、ピノ・ノワールとピノ・ノワールの栽培に適しているといわれていた。その証拠として、この地区のカベルネ・ ソーヴィニヨンとかメルローは涼しい栽培地区、独特のピーマンとかアニスの香りがするカベルネ・ソーヴィニヨンが多いといわれていたし、実際にそういうカ ベルネやメルローが多かった。今はその説が全ての地区に当てはまらない。カベルネやメルローが野菜っぽい香りと味がしたのは、栽培技術が今ほど発達してい なかったことと、栽培する地域の天候を含む栽培条件を細かく把握していなかったからだ。例えば比較的温暖な土地にカベルネやメルローを植えて、房に十分に 太陽が当たるように房周辺の葉を取り除く等の作業が行われる畑のブドウは、野菜の香りも味もしなくなっている。
ザカ・メサの畑のようにサンタ・イネズの北部に当たる位置はピノ・ノワールの栽培には暖かすぎるのだ。この畑の気温は例えばソノマに比べると、暑い。ソノ マは猛暑が来ると30度を越えるけれど、それは通常ではないし、日が落ちると10度、寒いときには夏でも気温が10度以下に落ちる。
サンタ・イネズ・ヴァレーに初めてローヌ系品種を栽培したのは1975年、ファイヤー・ストーンだという。サンタバーバラ・カウンティでは1971年にサンフォードが初めて、ローヌ系品種を植えている。
ブドウ畑に案内してくださった。Zaka はインディアンの言葉で平和な土地、Mesaはスペイン語でテーブルという意味だそうで、ブドウ畑全体は高地(標高457メートル)にあるのだけれど、見 渡す限り平らだった。一見、低地にいるような錯覚を覚えてしまう。マウンテンヴィンヤードというとあちこちに急勾配の畑がパッチワークのように広がってい るのが普通だ。
「高地の畑だけれど、マウンテンの畑のように栽培が大変ということがありません。高地にあって平らなのでトラクターも使えるし栽培作業がやりやすいです。 ここの畑はあそこに見えるシースモークの畑より高い位置にあるのですよ。」と指差して言った。
「えっ、信じられないですね。前にシースモークの畑へ行きましたが、山のてっぺんというイメージでした。」
「そうですね。畑が斜面にあるからそう感じるのでしょう。でもこの畑のほうが高い位置にあるんですよ。霧の上にあるので、ブドウの色が濃くなってくれま す。高地だけれど地下水は十分にあります。潅水の際の水が不十分ということを心配せずにすみます」
シラーの畑を見る。房を見ると粒が密着していない。「皮が厚いので、育てやすいです。雨が降ってもすぐに乾きます。」降雨量は457ミリ。11月から3月にかけて降る。
ブルック・ウイリアムズは5年前からこのワイナリーの社長を努めている。その前はケンダル・ジャクソンに働いていた。ケンダル・ジャクソンは、この地区に 広大なブドウ畑を所有しているから、彼はこの地区について十分に学んだのだろう。誠実で賢い経営者と見た。ここのワインは質が向上することはあっても、落 ちることはないだろう。
自社畑のブドウは他のワイナリーに売ることなく、全てここのワイナリーのワインとして生産している。「自社畑のブドウが持っているユニークさを大切にして いるので、その個性を売りたくないのです。そして他の畑のブドウも買いません。ヴィンテージによっては苦労することもありますが、ブレンドすることによっ て、品質を守っています」
ユニークな品種、グルナッシュ・ブランを栽培している。赤ワイン用の品種であるグレナッシュが突然変異で生まれたもので、その穂木をタブラス・クリークから買った。
ここのワインは平均価格が20-25ドルと目の玉が飛び出るほど高くない。もちろん高いワインも造っているけれど。
年間生産量は3万5000ケース。所有している土地は304ヘクタール。自社畑は81ヘクタール。

★2007年シャルドネ
かんきつ類の香りがさわやか。それにミネラルが加わる。ぱりっとした酸味のフィニッシュ。マロラクティック発酵はしていない。ステンレスタンクによる発酵とオーク樽による発酵が半分ずつ。グッドヴァリュー。($18)
★2005年Zキュヴェ
ムールヴェドル、グルナッシュ、シラー、サンソーとローヌ系品種をブレンドしたワイン。香りは閉じている。土、海草を想わせる味わい。クリーンなフィニッシュ。($20)
★2005年Z スリー(THREE)
シラー、ムールヴェドル、グルナッシュの3品種をブレンド。ダークフルーツの味わい。美味しい。($40)