No. 37 Date:
Star Lane/Dierberg
10月14日、朝7時にサンタ・マリアのホテルを出る。8時にサンタ・イネズ・ヴァレーのハピー・キャニヨンにあるスター・レーンのブドウ畑を訪れるため だ。大きな朝日が昇り始めていて、州道101は光輝いている。道の方向によっては車線を見つめて走るしか手がないほどにまぶしい。ソノマでオレンジ色の夕 日が真っ赤に燃えて落ちていくのを見ながら、やっぱり道が良く見えずに不安だったのは経験しているけれど、朝日がこんなに大きく輝いて登っていくのを見な がら運転するのは初めて。壮大だ。光を受けて明るい畝が作り出すくっきりした陰影は息を呑むほどに美しい。
サンタ・イネズ・ヴァレーの東の大きな山、サン・ラファエル山脈に向かって走る。メイン道路を左折して曲がりくねった、でも道幅の広い道に入る。大きくて リゾートホテルのゲートかと思ってしまう豪華な農場が道の両側に並ぶ。丘に向かって車を走らせるとハピー・キャニヨンに入った。手入れの行き届いた広大な ブドウ畑が続く。その畑のひとつ、ヴェゲルザングが左に見える。ブランダーとかフィールドヘッドのソーヴィニヨン・ブランがこの畑のブドウから造られてい る。
スター・レーンのゲートに着いたら、カートが待っていてくださった。朝早くから案内してくださって恐縮する。門から見渡す限りブドウ畑、そして茶色の裸の 丘陵地、瀟洒な建物が丘の麓に見える。この土地はサンタ・イネズ・ヴァレーの最東端に当たる。北東に横たわっていて、パッチワークのようにさまざまな斜面 に畑がきれいに並んでいる。多くの畑が南向き斜面にあるという標高地213-472m。寒いと思って上着を羽織ってきたのだけれど、もう20℃はあるだろ うか。暖かい。海の影響がないと、そうここは南カリフォルニア。太陽の熱が感じられる。
広大なブドウ畑は終わりに近づいてはいるけれど、ブドウ摘みの真っ最中だった。小型トラクターや小型ボックスを担いだ作業員たちが忙しく動いている。朝の 4時から8時ころまで摘み取り作業をする。気温が9℃以上になったら作業をやめるのだという。門の近くの低地に植えられているソーヴィニヨン・ブランは8 月末に摘んだ。それから10月の中旬までブドウの摘む作業が続く。
高地にある広大なブドウ畑。急勾配の斜面にパッチワークのように畑がある。徹底的に手入れがされているブドウ樹の畝が整然と並んでいる、全てが半端じゃな い。1619ヘクタールという広大な土地に建設中のワイナリーと101ヘクタールのブドウ畑。1996年に土地を買った。畑ではない土地は禿山風の丘陵地 がうねっている。カートがそれを指差して「買ったときはああいう状態だったんですよ」という。それを開墾してブドウ畑にしたのだ。もっとも森林を開墾して ブドウ畑にする作業に比べると、多少は容易かもしれない。この畑は主にボルドー品種を栽培している。シラーは5-7ヘクタールほどで、750ケースほどし か生産していない。
こんな高地で裸山みたいなところでいかにも水がないように見える。カートいわくユニークな土地で泉が湧いているのだという。水の質が良くて、今のオーナー がこの土地を買う前はエアフランスがここの水を買っていたとか。建設中の5階建てのワイナリーはその水を利用して水力発電でワイナリーの熱源をまかなう。
この地区では夏は平均32-35℃と暑い。西へ行くと海の影響で21℃になる。
一番高い箇所にボーリューのジョージ・デ・ラトゥールの穂木で台木も同じというカベルネが植えてあった。そこからの見晴らしは「絶景かな!」
オーナーの一族は1800年代からファーストバンクを所有。ボードのメンバーで1年のうち60%はミズーリ州、残りはワイナリーに時間を費やしている。
カーヴは天井が高く幅も広い。これは完成。現在建設中の5階建てのワイナリーは年内に完成予定。全てワインの移動は重力で行う設計になっている。ワイナリーは7年間かかっている。
スター・レーンのブドウ畑があるこの土地に建設中のワイナリーで、ディバーグのラベルで出しているピノ・ノワールとシャルドネも造る。ピノ・ノワールと シャルドネの畑はサンタ・マリア・ヴァレーとサンタ・リタ・ヒルズに所有。混乱するのは2004年初ヴィンテージのシラーはスターレーンで、2005年か らはディアバーグで出すことにしたという点。
サンタ・マリア・ヴァレーのブドウ畑も65ヘクタールと広大だ。サンタ・リタ・ヒルズにも32ヘクタールの畑を持つ。スターレーンの土は痩せている。ブド ウ樹の幹がとても細いので若い木?と聞いたら樹齢10年。逆にサンタ・マリア・ヴァレーはスターレーンと比べるとやや肥えているので、すくすくブドウ樹が 育っているという。
テイスティングルームは246号線からドラム・キャニヨンという道を入ったところにぽつんと立っている。かわいい納屋のような建物だ。
サンタ・バーバラ・カウンティ、特にサンタ・リタ・ヒルズに拠点を置くワイナリーはソノマやナパが研究実験して得た結果を、今は容易に知ることが出来る。 その情報を元に、土壌、クローン、マイクロクライメット、栽培品種、台木の組み合わせを見極め、急激に質が向上している。賢いと思うのは、試行錯誤はして いても、自分のワイナリーのスタイルというのを追求していることだ。サンタ・バーバラ・カウンティにナパと同じように富豪がワイナリーを建て始めている。 と同時に小さなワイナリーというかラベルが急激に増えている。数年間で100くらい増えたとカート。才能と情熱があって、でもお金はない、でも自分のラベ ルでいいワインを造りたいという若者が、ロンポックという町のはずれのワインゲットーと呼ばれている倉庫地帯に、小さな醸造施設(ワイナリー)を持ち、少 量のワインを生産している。ホットなワイン産地として注目されている。
テイスティングノート
スター・レーン
★2006年ソーヴィニヨン・ブラン
麹を想わせる香り。マロラクティック発酵はしていない。3分の2がステンレス、3分の1がニュートラルのオーク樽で発酵。発酵中、ボディを出すために澱をかき混ぜている。酸がきれい。$20
★2006年メルロー
ふくよかで香りに深みがありエレガント。ペトリュスのクローン。しなやかで優しい。$36
★2005年カベルネ・ソーヴィニヨン
カシス、ダークフルーツ。複雑な味わいと深み。リッチでも重くない。しなやかでふくよか。ほんの少しのアニスの味がアクセント。$50
★2005年アストラル(カベルネ・ソーヴィニヨン99%、プティ・ヴェルド1%)
スター・レーンの畑のベストのカベルネ・ソーヴィニヨンをベストの樽で熟成。風味がびっしり詰まっている。ベルベットのような口当たり。こなれたタンニン。長いフィニッシュ。しなやかなワイン。$100
ディアバーグ
★2005年シャルドネ
主に新フレンチオーク樽で14ヶ月間発酵と熟成。10℃のカーヴで自然酵母で発酵。程よいボディと品を備えた、ミネラルが感じられる辛口の高級シャルドネ。まろやかなフィニッシュ。$36
★2005年ピノ・ノワール
サンタ・マリア・ヴァレーのある160エーカーの自社畑のブドウを使っている。スパイス、深い香り。程よいベリーの味を伴うまろやかな口当たり。長く心地の良いフィニッシュ。$42
★2005年シラー
サンタ・イネズ・ヴァレーの広大な自社畑のブドウを使っている。
ブルゴーニュワイン用の底が丸く膨らんだボール状のグラスと、すっと上背があるボルドーワイン用のグラスと二つのグラスに注いで出してくれた。
ブルゴーニュワイン用グラス:
香りは印象に残る香りはあまりない。でも口当たりがソフトでフルーティ。よく熟したフルーツの味わい。酸が利いた長いフィニッシュ。
ボルドーワイン用グラス:
香りが閉じている。引き締まったワイン。タンニンが感じられる。フレームがきちんとある構成のいいワイン。
今、飲むならブルゴーニュワイン用グラスのほうが美味しいとまず感じられる。このことを知っているので、カートはブルゴーニュワイン用のグラスで出すとい う。ひとつのワインのためにグラスを2つ洗わなければならないし、手間がかかるけれど、お客さんに美味しく味わってもらうために、そして興味をもってもら うために手間を惜しまずに2つのグラスで出しているという。
ラベルがフランスっぽく、上品でちょっと地味かもね。シャルドネとカベルネの生産で高く評価されているデイヴィッド・レミーがコンサルタント。注目したいワイナリーのひとつ。