スパールリングワインでパーティ

Date:2006-12-21

12月初旬、スパークリングワイン生産ワイナリー、グローリア・フェレアを訪ねた。テラスから眺める収穫が終わった黄金のブドウ畑は絶景。
ソノマ・ヴァレーサイドのカーネロスの小高い山の麓に立つスペイン風の建物。コードニュを始め、フランスのシャンパンハウスでも撤退を余儀なくされたワイナリーが多い中で、グロリア・フェレアは親会社であるスペインのフレシネのイメージから独立し、フランス系のシャンパンハウスの高級イメージから少し距離を置き、でもカヴァほどフレンドリー価格ではない、良質なスパークリングワインを手ごろな価格で供給し続けるという堅実な経営で成功している。
副社長のイヴァ・バートランさんがあちこちで実行して好評のスパークリングワインと食べ物の相性についての、わかりやすいプレゼンテーションをしてもらうのが目的。
二人は異文化からカリフォルニアへ移り住んで、2つの文化を経験しながら、子育てもしているというので、話が弾んで2時間も話し込んでしまった。カリフォルニアと日本より、スペインと日本のほうが(多分、西ヨーロッパを含めて)生活習慣は近いということで意見が一致した。どのようにして2つの文化を子供たちに教えながらアメリカ人として育てるのか、私はほぼ終わったけれど(成功、不成功は別として)、彼女は男の子2人を今、育てている真っ最中で、文化比較論にも話題が広がり会話が弾んだ。
スパークリングワインに関することでは、ヨーロッパでは男性同士の席でもスパークリングワインを飲むことから、夕食や集まりが始まる。実際、スイスのワイン祭りに行ったときに私はそれを見ている。豪華な由緒あるホテルのロビーで多くのテーブルで男性がシャンパンを飲んでいるのを見て、キャンペーンかと思ってしまった話を書いたことがある。イヴァも、スペインでは男性だけの集まりでもスパークリングワインを飲んでいる、特別に女性に良い印象を与えようという場面だけで飲んでいるということはないと話す。それがアメリカ人の男性はシャンパン、スパークリングワインを飲むのを敬遠している。結婚式、お祝いの席、デートに彼女が喜ぶからというので飲むけれど、自分からは決して飲まない男性が多い。なぜかしら?という話になった。答えは出なかったけれど、男っぽい、マッチョでなけれればならないアメリカ人の男性にとっては、逆イメージになってしまうからかなというクエスチョンマークで終わった。日本の男性はどうなのかしら?
アメリカではスパークリングワインの売り上げの50%は、11月と12月に売れる。イヴァはスパークリングワインが特別な席ではなくて、どんな場でも楽しめるということをあちこちで一般消費者や業界の人を対象にセミナーをしている。セミナーの後の一般消費者の方たちの感想は「スパークリングワインはスペシャルなオケージョンに飲むものだと思っていたけど、いろんな食べ物に合うのですね」といってくれるとか。
プレゼンテーションはシンプルで効果的だった。
「スパークリングワインというと一つのタイプしかないと思っている人も多いけれど、スタイルが違うものがあるということを知ってもらいたい。2つのスパークリングワインの甘さ(ドサージュ)は同じ。シャルドネはアメリカではナンバーワンの白ワイン、それにバイザグラスでもよく出る白ワインですが、食べ物にフレンドリーなワインでは、必ずしもありません。シャルドネをこのプレゼンテーションに加えているのは、それをこのプレゼンテーションでテストしてみているというわけです」と話す。

ワインはソノマ・ブリュット、ブラン・ドゥ・ノワール、シャルドネの3つ。
前菜の一般的な味の要素を6つ、プレートに用意。レモン(酢)ポットチップ(脂肪と塩)オリーブ(塩)パルメジャンチーズ(うまみと塩)チリペッパーをまぶしたチキン(スパイス)洋ナシ(フルーツ)
まずワインを一口飲んで、次に食べ物を味わって、それから再びワインを一口飲んで口の中での変化を観察する。このドリルは前回、報告した2つのワイナリーの料理とワインの組み合わせと同じ。
*ソノマ・ブリュット
ピノ・ノワール(87%)とシャルドネ(13%)のブレンド、1年半の熟成。
クリスプで程よい甘味、飲みやすい。デリケートな洋ナシとほんの少しのアーモンドの香り。シトラス、トースト、心地よいクリーミーな泡、程よい甘味が親しみやすくカジュアルに楽しめるスパークリングワイン。$20
*ブラン・ドゥ・ノワール
ピノ・ノワール(92%)とシャルドネ(8%)のブレンド、1年半の熟成。色とフィニッシュにクリーミーな感触を出すために、コールドソークをしたピノ・ノワールの果汁(5-7%ほど)がベースワインにブレンドされている。そのためソノマ・ブリュットよりピノ・ノワールの個性が少し出ている。イチゴの香り。フルーティ、コカコーラの味わいが少し。ソノマ・ブリュットよりややボディがあり、フィニッシュは辛口。$20
*2003年シャルドネ
100%樽発酵、マロラクティック発酵は16%、フレンチオーク樽での熟成は10ヶ月。アルコール度13.5%
トレンディな過熟スタイルではなく、酸味の利いたミネラルが感じられる抑制されたシャルドネ。口当たりはオイリーで辛口。特に個性のあるシャルドネということではなけれど、料理にマッチしやすいように造られていることと、スパークリングワインと同じ価格で出しているのが嬉しい。$20

★レモン(酸)
ソノマ・ブリュット:レモンを噛んだ後でもスパークリングワインの程よい酸味がだれていないので、驚いた。酢、レモン、トマトを使った料理にもよくマッチする。例えばカラマリ(イカを油で揚げた料理にスパオスやレモンを振りかけた一皿)などは、このタイプのスパークリングワインで楽しめる。
ブラン・ドゥ・ノワール:ソノマ・ブリュットほど酸味をカットしてくれない。フィニッシュに少し苦味が感じられるけれど、絶対に合わないということはない。
シャルドネ:ワインが水みたいに感じられる。酸味は口の中に残る。これは予想どおりマッチしない。カリフォルニアのシャルドネとしては酸味が利いているタイプだけれど、それでもレモンの酸味にはマッチしないとイヴァ。

★ポテトチップ(脂肪と塩):ちょっとした集まりにはカリフォルニア(アメリカ?)では必ず出される一般的なスナック。塩と脂肪はアメリカで最も一般的な前菜(フレンチフライ、カラマリ、クラブケーキ等)に出てくる料理のエレメントだとイヴァ。
ソノマ・ブリュット:塩味と脂肪をきれいに口の中から消してくれる。よくマッチしているので、楽しい気分。気軽なパーティならこれで行けると思わずにっこり。娘には教えないことにしよう。食べすぎ、飲みすぎになるに決まってるから!!「1袋のポテトチップスとスパークリングワインで行こう!キャビアは忘れよう!」と二人で大笑い。
ブラン・ドゥ・ノワール:ワインの味がより美味しくなるので、これも嬉しい驚き。ポテトの味も悪くない。
シャルドネ:一口はまあ、悪くないかなと思ったけれど、脂肪分がだんだんと舌に溜まっていて疲れてきた。口の中をきれいにするために水がほしくなる。シャルドネとポテトチップは絶対に合わないということではないけれど、スパークリングワインのほうがマッチするというのが結論。「シャルドネはマッチする料理がとても限られているということを私はセミナーで話します」とイヴァ。

★オリーブ(塩):このオリーブは特に塩味が強いものだった。塩味はワインの最大の敵とイヴァ。
ソノマ・ブリュット:口の中がメタリック(金気?)な感じになって、スパークリングワインの美味しさが消えてしまった。
ブラン・ドゥ・ノワール:2口目だとブリュットよりは合う。スパークリングワインの甘さが消えた。甘塩だと(例えばキャビア)、このタイプのスパークリングワインで大丈夫なのだろう。
シャルドネ:シャルドネの味が水っぽくなった。これは合わない。

★パルメジャンチーズ(塩、脂肪、うまみ): かなり質の良いチーズだった。
ソノマ・ブリュット:チーズがより美味しく感じられたけれど、スパークリングワインのほうは存在が薄くなってしまった。イヴァはワインとチーズが手と手を取り合っているという意見。
ブラン・ドゥ・ノワール:チーズよりスパークリングワインのほうが強くなってしまう。でも2口目のワインだと悪くない。パルメジャンチーズをたっぷりかけたシーザーサラダやパスタだと、このワインがいいとイヴァ。
シャルドネ:チーズの味とシャルドネの味の要素がうまくかみ合わないので、よくマッチしているとは言いがたいけれど、合わない!というほどではない。

★スパイシー・チキン(スパイス):チリペッパーとパプリカがたっぷりとまぶしてあった。
ソノマ・ブリュット:スパークリングワインがチリの辛味を消してくれるが、それ以上の発展がない。マッチしているとは言いがたい。イヴァは20年間、カリフォルニアに住んでいるけれど、スパイシーなメキシコ料理はまだ苦手、でもウニが大好きだという。
ブラン・ドゥ・ノワール:スパークリングワインを飲み込んだ後でも、まだ辛さが口に残る。でもこちらのほうが合う。スパークリングワインのフルーツの甘さが感じられる。
シャルドネ:オークの味と甘味が感じられるけれど、楽しく食べて飲むことにはならない。スパイスをカットしてくれない。ここでもシャルドネの守備範囲の狭さを確認。

★洋ナシ:甘味が豊かなよく熟した梨だった。
ソノマ・ブリュット:スパークリングワインのフルーツが味わえる。個人的な意見としてはフルーツはフルーツとして味わいたいので、スパークリングワインと一緒に飲むことは少ないけれど、フルーツソースなどを使った料理を想定すると、全くマッチしないということはないかもしれない。デザートワインにデザートを合わせると甘さのレベルを合わせようとするので、デザートがかなり甘いものになってしまう。スパークリングワインとフルーツならそれがないとイヴァ。
ブラン・ドゥ・ノワール:ワインの酸味が強く感じられた。
シャルドネ:オークの味が強くなり、ワインのフルーティな味は消えてしまった。イヴァはペインフル(苦痛?)と表現した。

いろんなタイプの料理が並ぶパーティでは、特にスパークリングワインがその威力を発揮することを納得。
ワインと料理は100%マッチすることはあまりないし、100%マッチしなければ楽しめないということでもないので、気楽に試して楽しむのがいいと思う。いろんな料理を持ち寄って(ポットラック・パーティ)テーブルに並べて、ブリュットとブラン・ドゥ・ノワールを用意して、適当にマッチするなと思うほうを飲んでみるというのがいい。シャルドネは予想通り守備範囲がとても狭いワインだ。マッチする料理が限られている。フーフーワイン(女々しいワイン?)だといって、スパークリングワインを敬遠するマッチョな男性が出席する席なら、イヴァはピノ・ノワールも出しておくという。
ホリデーシーズンのアメリカではあちこちでちょっとしたパーティが開かれている。日本では忘年会、クリスマスパーティが開かれる季節。ビールではなくて、でも気取らずにスパークリングワインをさりげなく飲むパーティも楽しいのでは?ホリデーシーズンはクリスマスの買い物、ディナーの用意ととても忙しいので、イヴァはいろんな前菜を用意してスパークリングワインを出すという。誰もストレスを感じる必要ない。アメリカのクリスマスは家族が一緒に食卓を囲むというほかに、それぞれがプレゼントの交換をするので、大家族だとそのプレッシャーは大きい。だからアメリカの友人の中には感謝祭のほうが好きという人が多い。この日はプレゼントの交換はなくて家族友人が食卓を囲んで純粋に食事を楽しむ日だからだ。

大晦日の過ごし方に話が飛んで、鐘を聴きながらスペインではブドウを食べるという話になった。12回鐘がなるので、12個のブドウを食べるのだそうだ。初めの一粒、1粒はいいけれど、12個目になるとかなりきついと、目を白黒させてジェスチャー入りで説明してくれたので大笑い。最後のほうになるとカヴァでブドウを飲み込むというのでまた大笑い。