No.40 ケラー エステート

No. 40 Date:2009-06-30

Keller Estate


5月末、まだ霧がかかっている朝、ケラー・エステートを訪れた。ワイナリーの看板を見逃して、ダァーッとかなり車を飛ばして、あせって戻ってきてようやくたどり着いたら、霧が晴れて、涼しい風が吹く美しい1日になっていた。
ペタルマ川の近く、牧草地帯、放牧場とワインカントリーというより、農場地帯の景色。でも気がつくとブドウ畑が多くなっていた。ここに豪華なワイナリーがひっそりと建っているとはよもや思わなかった。
ようやくたどり着いて電話をいれて、ゲートを開けてもらって敷地内に入ると手入れの行き届いた美しいブドウ畑、庭、石造りのワイナリーと別世界。
お金持ちがワインカントリーにはたくさんいるけれど、ナパから遠く離れた(ソノマの有名産地からも離れた)ところに広大な敷地を所有して本格的なワインを生産するワイナリーがあることに正直驚いてしまった。
ケラー・エステートはケラーファミリーが所有。ソノマ・コースト地区の南端に位置している。ペタルマ・ヴァレーに最初に設立されたワイナリーだ。カーネロ ス地区に面しているサンパブロ湾(サンフランシスコ湾の一部)がすぐ南にある。丘の上から曲がりくねって流れるペタルマ川を眺める。川といっているけれ ど、カーネロス地区の隣で、サンフランシスコ湾の一部だという。カーネロス地区より涼しい。
263ヘクタールという敷地(まあ山ひとつと思ったらいい)にブドウ畑のほかにオリーブの木、私宅、ユニークなデザインのワイナリーとテイスティングルーム、カーヴがある。敷地の最も高い場所は標高152メーター。
1983年にこの敷地を買って、1989年にシャルドネを植えている。現在ブドウ畑は40ヘクタール。シャルドネ、ピノ・ノワール、シラー、ピノ・グリ、ヴィオニエを栽培。
この地区にブドウを最初に植えたのは、多分このワイナリーだろう。このあたりに存在するのはこのワイナリーはここだけ。地区としてはソノマ・コーストにな る。でもソノマ・コーストは広大な地区で太平洋沿岸の栽培地区全体を指しているので、涼しい地区ということ以外、特定した情報はあるようでないといっても いい。
オーナーは日本車を初め世界の車のインテリアを売っているという。それが本業なので、ワイナリーの敷地にある丘の上に立つ豪華な家はサマーハウスらしい。
風が強いので、防風林のように木を植えてある。塀だと美観を損ねるからだという。
気温は暑い日だと24-27℃になるけれども、涼しい日だと10-16℃と気温差が激しい。
ペニンスラホテル専用のシャルドネとピノ・ノワールも生産している。
敷地内にラ・クルス・ヴィンヤードとエル・コロ・ブロックの2つのブドウ畑がある。ラ・クルス・ヴィンヤードはこの敷地内の低地の傾斜面にあり、シャルドネ、シラー、ピノ・グリ、ピノ・ノワールを栽培。土壌はミネラル分を含んだ粘土質。サンパブロ湾の海底だった。
エル・コロ・ブロックは7つのクローンのピノ・ノワールを栽培。高地にあるので、太平洋の海風、ペタルマ・ギャップを通って入る霧の影響を受ける。ローム 質の粘土と火山性の土壌。8ヘクタール。7つのクローンのそれぞれの特色を生かしてブレンドする。エル・コロはスペイン語でコーラスのことだそうで、畑の そばに合唱団の彫像が飾られているのがほほえましい。
ワイナリーはリカルド・レゴレッタが設計。揚子江の川底の石灰岩が使われている。ベージュを基調とした微妙な色が静寂な印象を与えている。
セラーはシンプルで小型のステンレスの発酵タンクが多く設置されている。ブロックごとに少量ずつ収穫して醸造発酵をして、ブレンドを自由にするためだ。

ワイン
2005年シャルドネ La Cruz Vineyard $29
ミネラル、火打石、上品、スケールの大きい偉大なワインではないけれど、飲みやすい。今トレンディのバタリーでオーク風味たっぷり、トロピカルフルーツの 典型的なシャルドネとは一線を画しているので、お宅たちのハイプのレーダーからはずれているかもしれないけれど、上品な料理に合うワインを探している人に 好評。静かなファンが存在すると予測できる。

2005年ピノ・ノワール La Cruz Vineyard $40
ブルゴーニュ風の香り。スパイス、美味しい梅干、ざくろの酸。バランスのいいワイン。酸味とフルーツが長く後に残る上品で程よい味わいとボディ。
カリフォルニアのピノ・ノワール、特にロシアン・リヴァーとカーネロスのピノ・ノワールはチェリーキャンディの味がぱっと出てくるけれど、このピノはそうではないところがユニーク。畑の個性と造り手の個性が組み合わさってのことなのだろう。

2008年ピノ・グリ La Cruz Vineyard $30
清々しい花の香り。ステンレスと使いこなしたオーク樽で半々ずつ発酵。ほろりとした甘味がいい。ピノ・グリというと手ごろな価格で、気楽に飲むワインとい う位置づけが私の頭の中にあるので、30ドル?と少し驚いた。よく造られたピノ・グリだけど、真剣に30ドル分味あわなくちゃいけないの?という感じ。

2008年ロゼLa Cruz Vineyard $28
さわやかな香り。このロゼは1時間のスキンコンタクトをして、炭酸ガスで新鮮さを保って、色を出し発酵させてと、正統派?の方法で造られている。チャーミングなロゼ。

ペニンスラホテルのシャルドネとピノ・ノワールを生産している。
2007年シャルドネ
ケラ-エステートのラベルで出しているシャルドネより、もう少しライプでオークも決して強すぎはしないけれど、エステートよりきかせてある。ミネラル分が感じられる特色は同じで口当たりがオイリー。程よい酸とパワー。

2007年ピノ・ノワール
香りは控え目で、少しだけなめし皮の香りがある。ふくよかな優しい口当たり。