No.42 二つのワイナリー

No. 42 Date:2009-11-02

Ridge


9月末、ひさしぶりに、ソノマ・カウンティのドライクリーク・ヴァレーを訪れた。今年の収穫は4分の3が終わっていた。「出来は?」とたずねると、どこの ワイナリーも「うん、なかなかいいよ」とにっこり。まあ、ひどい雨でぶどうが無残にダメージを受けていない限り、「うーん、悪いなあ」とは言わないよね。 ということから悪い年ではないことがわかる。どのくらいの出来なのか、これからボツボツと声が聞こえてくるだろう。(*その後、雨が降ったけれど、雨の前 に摘み取ったところは良い出来のようだ。雨が降った後に摘んだ畑でもカベルネのように果皮の厚いブドウの場合、被害はそれほどでもない)
とってもいいお天気だった。まさにインディアンサマー。夏のように暑いのだけれど、風はひんやりしている。
ドライ・クリーク・ヴァレーはナパに比るとまだまだワイン造りって農業なんだよねと思わせるのどかな農産地帯の雰囲気が残っている。平穏な田園(ブドウ畑)風景が目に優しい。
数ワイナリーを訪れた。その中で印象に残ったのがリッジ。
干草を中に入れて建てたワイナリー。広々としたテイスティングルーム。葉が赤くなった株造りのジンファンデル樹がポーチから見える。その向こうのなだらかな丘陵地がジンファンデル樹で埋め尽くされている。

2006年シャルドネMonte Bello $60
毎年は造らないとのこと。ほろりと甘いユニークなシャルドネ。

2005 年ジンファンデルBuchignani Ranch $30
樹齢80年のブドウ樹。ボトルをオープンして時間がたっているためか、このワインがそうなのか、わからないけれど、アロマはとても控えめ。フルーティで軽やか、フィニッシュに程よい酸味が感じられるバランスのいいジンファンデル。

2006年 Gegserville $35
昔はジンファンデルとラベルに記載して出していたのだけれど、混植の畑をチェックしたら、ジンファンデルの他にプティ・シラー、カリニャン種が混じって植 えられていること気がついた。そこでラベルはガイザーヴィル。軽やかなベリー風味とスパイス、程よい酸味を伴う長いフィニッシュ。中位のボディ、それでい てしなやか。

2006 年Lytton Spring $35
樹齢115年。80%がジンファンデル。私はまだリッジがこのワイナリーを買収するずうっと前から、ここの畑を知っている。その当時に比べるとより洗練さ れたジンファンデルが造られているけれど、ベリーとニッキとリキュールをミックしたような個性的な香りと味わいは、今も残っている。この畑が産み出す個性 なのだろう。その昔はたっぷりと濃いワインだったけれど、今は、誰もがもっともっと濃いワインを造っているから、軽やかに感じられた。

2007 年ジンファンデルEast Bench $30
スパイス、ライプ、シガー、パワフルなワイン。若いブドウ樹から造られたジンファンデルとのこと。

2006年 Monte Bello $145
香りは前にも書いたとおり、すでにオープンしてあるボトルからのテイスティングなので、控えめなのがこのワインの特色なのか、オープンして時間がたってい るからなのか良くわからない。スパイシー。とてもデリケートなボルドー風の味わい。今風の風味がすごーく凝縮したスタイルと一線を引いている。

2006 年カベルネ・ソーヴィニヨンSanta Cruz Mountain $40
シガー、スパイス、フルーティで軽やか。エレガント。こなれたタンニン。モンテ・ベロになりきれなかったワインがここに詰められている。

Westwood
年間生産量が1100ケースの小さなワイナリー。今、流行の最近設立されたバーチャル・ワイナリーかと思って、ソノマのプラザにあるテイスティングルームを訪れた。
ところがオーナー兼醸造家のジョン・ケリーは17年前からワインを造っているとのこと。スタグス・リープ・ワインセラ-、ソノマ・カトレア等でワイン生産 にかかわっている。1984年に設立されたウエストウッドというワイナリーを、ジョンが2002年に買い取った。ジョンはUCデイヴィス校卒業の生化学者 で、半年だけど北海道大学に留学したという。
生産ワインはピノ・ノワールとシラー、ローヌ系品種のブレンド。自社畑Annadel Estate Vineyard はソノマ・ヴァレー、ケンウッド村の北にある。

2005年 Red Four $23
シラー、ムルヴェードル、グルナシュ、タナットの4品種をブレンド。赤肉、黒系フルーツのコクのあるアロマからよく熟した密度の濃いワインかなと想像。口に含むとアロマの印象とは違って、意外に軽く、酸味がややシャープ。

2006 年Red Four $23
赤肉、黒系フルーツのアロマ。ボディは軽い。

2005年 Syrah$28  
深みのあるアロマ。涼しい地区のシラーが使われているので、口に含むと軽やか。こってりタイプのシラーが好みの人は拍子抜けするかも。

2004 年Pinot Noir Los Carneros$45
ベリーの香りと味わいが印象的なエレガントなスタイルのピノ。酸味が利いていて引き締まっているので、ふんわりしたタイプのワインが好きな人向きではないかもしれない。

2004年 Pinot Noir Nicolson Ranch $45
スモーキー、スパイシー、キャラメル、少しタンニン。エレガントで軽やかだけれど、フルーツよりはスパイス系の味わいが強いので、好き嫌いがはっきり出るワイン。

◎2005 Pinot Noir Haynes Vineyard $45
畑の特色であるふくよかな風味とボディ。上品で飲みやすい。スパイシーなフィニッシュ。

◎2007 Pinot Noir Annadel Estate Vineyard $45
2007年は良い年。チェリーキャンデー。自社畑なので、これと思うクローンを植えることが可能。それでディジョン・クローンのピノを植えた。フルーツの 甘味。ここでようやくモダンスタイルのワインが登場。醸造家はディジョン・クローンだからだと言った。美味しい酸味の長いフィニッシュ。1年後にリリー ス。楽しみかも。

◎2006 Pinot Noir North Coast$15 
HaynesとAnnadelのふたつのブドウ畑のピノをブレンド。十分に熟していて、チェリーキャンデー、バラの花びらの香りもして美味しいワイン。小売価格が15ドルでこの質のピノが飲めるのは嬉しい。12月にリリース

1998 Pinot Noir Haynes Vineyard
ニッキの香り。まろやかな口当たり。瓶熟による疲れは、まだ出ていない軽やかなワイン。

全体の印象
今のトレンディなスタイルである、ライプ、高いアルコール度、風味の凝縮感とは異なるタイプのワインなので、パーカーやスペクテーター誌のレーダーから外 れている。軽やかでエレガント、フィニッシュの長いタイプのワインを生産。料理と合わせて楽しめるタイプのワイン。いわゆる濃いワインにちょっと疲れたな と思ったときに、軽やかでほっとさせてくれるワイン。2007年は温暖な年だったせいもあるだろうけれど、醸造家がもう少し熟したブドウを使いだしたのだ と思う。シャープな酸味が利いたワインから、程よいフルーツを強調したワインに調節していると感じた。もう数年、ここのワインを飲んでみたい。
このワインを飲んでみたいなと思ったら、小さなワイナリーなので、このワイナリーのウエブサイトへ行ってネットでオーダーするのが、手っ取り早い。

    • バーチャル・ワイナリーというのは、ワイナリー(セラー)の建物を所有せず、カスタムクラッシュ専門の設備を持ち、醸造を担当する人員がいるところでワインを生産。畑は所有している場合もあるし、していない場合もある。ワイナリーとして登録されている。
    • 良いと思ったワインに◎をつけました。