No.51 Bucklin



Bucklin

イギリスからインポーターのジェイムスがやってきたので、我が家でディナー。ジェイムスは十代までカナダで育った。イギリス人の父親がイギリスに戻ることになったのでその後はイギリスに住んでいる。幼少時期をカナダで過ごしたからなのだろう。良くも悪くもイギリス的と一般的に言われる特徴がまろやかなのだ。やわらかな物腰、それでいてイギリス訛りの英語とちょっぴりと皮肉をまじえたジョーク、久しぶりにヨーロッパ人とのディナーを楽しんだ。

明日はRadio CoteauとBucklinを訪問するという。一緒に行きたいと言ったら、地元の人(私のこと)が一緒だと心強いからぜひ一緒に行こうということになって、翌日の朝、10時に迎えてきてくれた。

Old Hill Ranch という看板を目指して運転。なんと我が家から15分で着いた。農園は友人の家の向かい側だった。いつも看板は見ていたけれど、ここに歴史的なブドウ畑があるとは思っていなかった。門を通過して農場の中のほうへ入っていくと広いブドウ畑が続く。尻尾をふりながら遠くからほえる犬、その横を悠然と通り抜ける鶏。有機農法の世界だ。

ここにソノマ・ヴァレーの歴史的なジンファンデルの畑とワイナリーBucklin(バックリン)があった。

Old Hill Ranch は1851年にウイリアム・マクファーソン・ヒルが作り上げた農場で、カリフォルニアの古い畑のひとつ。ソノマで初めて、ミッション種ではない品種を植えた。その穂木はペルーから輸入したもので、多分、スペインから送られてペルーで栽培されていたものだという。この農場の一部は州立公園に指定されているジャックロンドンに1903年に売られた。

現オーナーが1981年に買い取ったときは、ブラックベリーの木やポイズンオーク(毒性のあるオークの木)の下にブドウ畑は埋まっていたという。UCDデイヴィス校のアドヴァイザーはブドウを全部引き抜いて新しく植え替えることを提案したけれど、この案には賛成できず相談したのが、レイヴンズウッドの元オーナーであるジョエル・ピーターソン。ブドウ畑を生き返らせて、1983年からレイヴンズウッドがOld Hill Ranch の畑名入りのジンファンデルを生産している。

中には1880年代のブドウ樹のあるという。畑にはフィールドブレンドといっていろんなブドウ品種がミックスして植えられている。その数は12品種以上で、Grand Noir, Lenoir という聞いたことのない品種も混じっている。

4ヘクタールは1998年に若い樹に植え替えた。若いブドウ樹も古い畑と同じようにフィールドブレンドで株作りだ。ジンファンデルの他にグルナッシュ、アリカンテ・ブシェット、プティ・シラー、ムルヴェードル、シラー、カリニャン、テンプラニーリョ等の品種をミックスして植えた。株造りのブドウ樹には鳥の巣があったり、ウサギがブドウ樹の下で休んだりしているという。この畑のブドウから生産したワインはバンビーノという名前で出している。

1982年からオーガニック栽培に切り替えている。

2000年にBucklin(バックリン)というワイナリーを設立。年間生産量が2000ケースという小さなワイナリー。

試飲ワイン:

2009 Old Hill Grenache

グルナシュが60%。カリニャンもブレンドされている。カリフォルニアで最も古いカリニャンのブドウ樹のひとつとか。酸味が少しシャープだけれど、それが長いフィニッシュとなっている。まろやかでタンニンもソフト。

2007 Old Hill Ranch Zinfandel $34

ソフトな口当たり。フィールドブレンドされているので、ベリー系が一気に出てくるジンファンデルとはちょっと違って、ソフトな口当たり涼しい感覚が口の中で広がる。ほどよいジンファンデルのフルーツの甘味。自然酵母で発酵。フレンチオーク樽を使用。

★2009 Bambino Old Hill Ranch Zinfandel $24

植え替えたブドウ畑なので、選んで品種をフィールドブレンドしている。涼しい赤系のフルーツ。味わいが他の2つより凝縮している。グッドヴァリュー。

3つのワインに共通しているのは口当たりがとてもソフトなところ。

ジェイムスは「イギリスのお客さんはこの畑のストーリーに関心を持つだろう。それに価格が手ごろなところもいい。これはイギリスで売れるから輸入したい」と話していた。