No.20 ロシアン・リヴァー・ヴァレー探訪(2)

No. 20 Date:2005-11-01

ユニークで個性があって、ワインの質も高いワイナリー

Martinelli
マーティネリ ワインコンサルタント、パーカーが常に高い点をつけるワインを造るヘレン・ターリーが醸造を担当。彼女が造るタイプのワインについて好き嫌いはあるにして も、はっきりとした個性が出ているし、レベルの高いワインを間違いなく造っている。古きよき時代のワインカントリーを未だに残してるなと思うのは、古い納 屋を改良した床がみしみしと音を立てるようなテイスティングルームで、かなりの数の試飲をただでさせてくれることだ。今時、ただのテイスティングができる ワイナリーは高級、並ワイナリーの中でもとても珍しい。

2004年ソーヴィニヨン・ブラン

あ まりクリーンではないユニークな香り。口に含むとオイリーとろみがある。多分15%というアルコール度から来ているのだろう。パワーがあってほのかな甘味 のあるしっかりしたワイン。凛とした酸味のきれいなタイプの白ワインではないので、好き嫌いがはっきりでるワイン。$26

2001年ドライ・セレクト、ギヴゥルツトラミーナー
きれいなギヴゥルツラミーナー香。酸も程よい。辛口ではあるものの、15%というアルコール度がほんのりとした甘味を加えている。$26

2000年マーティネリ・ロード,シャルドネ
バ ニラ、オークの樽香。口当たりは滑らかでオイリー。おっとりしてふくよかで大柄の女性みたい。$40 2001年ロシアン・リヴァー・ヴァレー・ピノ・ノワール なめし皮、チェリーの焦点の定まった香り。湿った落ち葉の香りが少し。涼しい感触。程よい酸味。ふにゃふにゃしていなくて、きちんとしたピノ・ノワー ル。$35

2000年マーティネリー・ヴィンヤード、リザーヴ・ピノ・ノワール
マーティネリ家の息子が所有栽培している畑。メリー・エドワードも、ここからブドウを買ってピノ・ノワールを生産しているそうだ。ビーツ、りんごの皮、黒いフルーツの深くてコクのある香り。口当たりは滑らかでスパイシー。程よい酸味。長いフィニッシュ。美味しい。$40

2003年ジョセピー&ルイザ、ジンファンデル
ビーツ、ベリーの香り。 色は薄い。アルコール度が17%と半端じゃない。レイト・ハーベストのワインの甘味。デザートとして楽しみたい。隣で試飲していたフランス人の若いカップ ルが「ワーオ!」と声を上げて、私にウインクした。1940年代から同じラベルだそうで、オレンジっぽい赤と黄色が目に入る鮮やかなラ ベルは、どことなくアンティーク風。$42

2004年ジャッカス・ヒル、マスキャット・アレクサンドリア
味わいが凝縮していて、甘味、苦味、酸味がハーモニーとなって、オレンジマーマレードの味。レイトハーベストでこちらはデザートワイン。ハーフサイズで$28

Rochioli ロキオリ
2004年エステート・シャルドネ
シトラスと甘味を感じさせるけれど、清々しい香り。杉+酸+甘味のフィニッシュ。$32

2004年エステート・ギャメイ
きれいなギャメイ香。ふっくらとして、よく熟したした味わい。酸味とのバランスもいい。ピクニック用に8月にリリース、お一人さま1本と限定。$14

2003年エステート・ピノ・ノワール・スペシャル・キュヴェ
チェリー、なめし皮、濃い目の色。しなやかで美味しいフィニッシュ。丘陵地と昔川底だった畑のブドウをブレンドしたもの。$32

Gary Farrel ゲリー・ファレル
デイヴィス・バイナム・ワイナリーの醸造家責任者を務めながら、1982年に自分のワインをゲリー・ファレルのラベルでリリース。ついに自分のワイナリー を建てた。しかしフランスの会社フォーチュン、リカー&スピリッツ部門に売却。経営に頭を痛めずにワイン造りに専念できるから悪い決断ではないかも。

2004年ソーヴィニヨン・ブラン
ほうずき香ほど良い甘味とグレープフルーツの苦味が面白い。押さえ気味のフルーツの甘味と切れのいい酸の長いフィニッシュ。ユニークで美味しいソーヴィニヨン・ブラン。$24

2003年シャルドネ
シトラス、口当たりが滑らか。フィニッシュは美味しい酸が長く後に続く。樽香がやや強め。$30

2003年ピノ・ノワールStarr Ridge Vineyard
ゲリー・ファレル氏所有のブドウ畑 黒系フルーツ、ライプ。深みパワー、程よい酸。少し寝かせておきたい。$45

Marimar Torres Estate マリマー・トレス・エステート
海が近いことを感じさせる涼しい風(海から10マイル)が吹く。ロシアン・リヴァー・ヴァレーのサブ・アペラシオンであるグリーン・ヴァレーにある。スペ インのワイナリー、トレスの長女、マリマーさんが設立したワイナリー。60エーカーの畑でピノ・ノワール(30エーカー)とシャルドネ(30エーカー)を 栽 培。2003年からオーガニック栽培に切り替えている。1986年にブドウを植え、89年にシャルドネを初リリース。生産量は平均1万2000ケース。マ リマーさんはスペイン料理の本を出版。ワイナリーもスペイン風。フルーツの甘味が抑えられた、ちょっと冷たい感じのタイプのワインをカリフォルニアで造り 続けてるというところがユニーク。

2002年シャルドネ Doumiguel Vineyard
シトラス香。フルーツ、美味しい酸、ミネラル。オークの味と香りが、もう少しある方が、深みが増すかな。30ドル以下で、このシャルドネなら嬉しい。$28

2002年シャルドネ Dobles Lias
樽セレクト、豊かなボディ、口当たりはオイリー。ふかみがある。ほんの少しの甘味のが加わった長いフィニッシュ。$40

2001年ピノ・ノワール
湿った落ち葉の香り。口当たりが優しい。スモモ、梅干の酸。まだ硬くて、表情に乏しいけれど、料理に合うだろう。一般的になってしまうけれど、カリフォルニアのピノ・ノワールとしては、ちょっと異質なところがユニーク。$35

2002年ピノ・ノワール Cristina(娘の名前)
色は濃い。湿った落ち葉+複雑な香り。色の濃い熟したスモモの深い香り。少しのパワーと深み、抑制された美味しいフルーツの味わい。フィニッシュはまだ発展していない。$47

ワインの質はいいけれど、大池の小魚になるより、小さい池の大魚でいたいワイナリー

Merry Edwards メリーエドワード
ソノマカウンティでは名の知れた女性醸造家だ。1970年代初期からワインを造っている。15年以上も前に小さなワイナリーを設立したけれども、うまくい かなかった。その後ワインコンサルタントとしても活躍。現在、サンタ・ローザの郊外にある工業地区の倉庫の一角をワイナリーとして借りている。彼女のピ ノ・ノワールはもう少しパワーがあると思っていたのだけれど、意外に軽やかだった。シラータイプのちょっと濃い目のピノ・ノワールではなくて、レースタイ プの エレガントなピノ・ノワールを目指しているようだ。でもエレガントさにうっとりするワインまではまだ到達していない。いい畑があるようだから、樹齢がもう 少したつと、エレガントでありながら、味わいが豊かなワインを造りだすのかもしれない。美味しいけれど、味わう人に強いインパクトを与える個性は感じられ なかった。
帰り際に日本に輸出しているのかと聞いたら、ご主人が出てきて、アメリカ国内でもホールセーラーは通さない、ダイレクトメールで売りさばいている。レスト ランやワインショップにも出さない。レストランでもうちのワインがほしい人はメールでオーダーしていると鼻息が荒い。「それでもワインが足りないんだよ。 輸入会社やホールセーラーなんか通していられるかい」と強気だ。その勢いに押された私はああそうですか、でも将来2万5000ケースの生産量に増やしても メールオーダーでビジネスが成り立つのかなと思ったけれど、余計なお世話だと思って黙っていた。ビジネスが波に乗っているときは謙虚ではない人もいるわよ ね。メールーオーダーでビジネスを繰り広げると仲介業者を通さないから、ワイナリーが得る利益は大きい。

2002年ピノ・ノワール、ソノマ・コースト
色は薄め。赤系フルーツとベリーの香。甘味と酸味のバランスがいい。ちょっと軽すぎ。$27

2003年ピノ・ノワール、ロシアン・リヴァー・ヴァレー
前記のピノ・ノワールより凝縮感がある。ジャミー,熟れた梅干、スパイス。複雑味に少し欠けるけれど、おいしいフィニッシュ。$32

2002年ピノ・ノワール、クロップ・ランチ
濃い色。過熟はぎりぎりで抑えている。他の2つよりコクがある。$48

Hartford ハートフォード
しゃれたワイナリー、良質なワイン、生産量は2万ケース。ケンダル・ジャクソン傘下だから、インターナショナルなワイナリーなのかと思ったけれど、意外にも地元出身のオーナーは、国内だけでいいんじゃないという意思らしい。

2003年シャルドネ、ソノマ・コースト
良質なフルーツ、程よいフルーツの甘味、凛とした酸の長いフィニッシュ。でもオークが強すぎて、フルーツが押され気味。$23

2003年シャルドネ ストーン・コート
単一畑。良くできている。フィニッシュも長いけど、樽からくる焦げっぽい味が気になる。$36

2002年ピノ・ノワール、ソノマ・コースト
エナメル香。口当たりはソフトでもややシンプル。飲みやすい。$25

2001年ピノ・ノワール Velvet Sister(アンダーソン・ヴァレー)
ラズベリー、デリケート。美味しい酸。ロシアン・リヴァー・ヴァレーのピノ・ノワールとは確かに特色が違う。ちょと高いけれど美味しい。$50

2003年ジンファンデル Dina's
ラズベリー、ライプ、インクの香り。よく熟している。バランスのいいワイン。残念ながら、テイスティングルームでしか売っていない。$39

良質ワインだけど、飛びぬけた印象はないワイナリー

Sapphire Hill サファイア
小さな家族経営のワイナリー。1997年に設立。ジンファンデル以外は1989年に植えた32エーカーの自社畑のブドウを使用している。

2002年シャルドネ
辛口タイプ。口当たりがクリーミー。シトラス。一部マロラクティック発酵、酸味が豊か。ボディは中位。$23

2002年ピノ・ノワール
スモーキー。 涼しい地区のピノノワールらしく、口の中がクールな感触。ディジョン・クローン。スモモ、梅干酸。自然酵母、ろ過、清澄作業はしていない。ブドウ樹が成長したせいか、以前に比べるとややこくがでている。$38

2003年シラー
シラー特有の動物香。ふくよかなワイン。でも口に含んだときの味わいがちょっと弱い。涼しい地区らしいシラー。将来を期待したい。$24

Camellia Cellars カメリア(ワイナリーはドライクリークーにあるのだが、テイスティングルームが隣にあった)
造り手がイタリアワイン好きらしく、良くも悪くも酸が豊富で、畑がもたらすバクテリア香を含めてイタリアワインを想わせるワインが多かった。

2003年サンジョヴェーゼ
湿った土っぽい香り。イタリアワインによくある香りだと言ったら、畑(土)からくる自然のバクテリアで、意図的に処理をせずに残していると醸造家が説明してくれた。口当たりはソフトで優しい。酸味が程よく軽い。$24

2002年カベルネ ソーヴィニヨン Lencioni Vineyard
ド ライクリーク・ヴァレーらしいソフトで飲みやすいカベルネ。ハーブ、アニス、フルーツの甘味。滑らかな口当たり。長いフィニッシュ。40ドルをの価値があ るかどうかはむずかしいところ。でもナパ以外のタイプのカベルネの味わいを楽しみたい人には面白いワインかも。 $40

お値打ちワインのワイナリー

Rodney Strong ロドニーストロング
1959年に設立された古いワイナリー。70年代にダンサーだったロドニー・ストロング氏が買い取って、ワイナリーを建て替えた。1989年に現所有者クレイン・ファミリー・ヴィントナーズが買い取っている。大型ワイナリー.

2003年ピノ・ノワール、エステート
スモモ、湿った落ち葉の香り、とても軽いのだけれど、口に含むと味がある。フィニッシュも美味しくて長い。お買い得。$19

2001年シラー、ソノマ・カウンティ
クリーンな香りではなくて、生の青いハーブっぽい香りが加わっている。好き嫌いはあるだろうけれど、19ドルならいいかなと言う人もいるかもしれない。軽いけれど、フィニッシュはいい。$19

2000年シメタリー・レッド・メリタージュ
変わった香りだ。アメリカンオークの新樽(73%)から来ているのかもしれない。少し青いハーブがかった香り。口当たりはしなやか。酸とタンニンがしっかりしていて、まだタイトでフィニッシュは短め。55ドルはちょっと厳しい。