No.23 サンタ・クルズ・マウンテン

No. 23-7 Date:2006-06-29

6月の週末にヴィントナーズ・フェステバルが開催されていた。サンタクルズ・マウンテンはなかなか行く機会がなかったので、今回思い切って出かけることにし た。最初の週末はこの地区の東サイドにあるワイナリー、翌週末は西側に位置するワイナリーと2週末にかけて行われる。娘がサンタクルズの大学を第3週末に卒業するので、私は3週末続けてサンタ・クルズに通うことになってしまった。でも娘が卒業とともにこの町から越してしまったら、多分、ここへ来たいという 気持ちが弱まると思うので、この際、良い機会だと思って通った。
この地区の印象はくねくねと曲がった道が山間を走っていて、ほとんどがアメリカ杉に囲まれているということだ。お天気が良かったので、楽しいドライブではあ るけれど、ブドウ畑は道路からはぜんぜん見えない。ソノマやナパのように広大なブドウ畑が続くというワインカントリーの光景とは全然違っていた。
道路からはほとんど見えないけれどこの地区には60ほどのワイナリーがある。AVAsとして認定されたのは1981年。栽培地の面積は35万エーカーと広 い。2週末にわたってイベントを開くというのも納得。でも栽培面積は1500エーカーほどと少ない。ほとんどが斜面のこの地区ではブドウ畑の開発はお金も 手間もかかって大変なことが容易に想像できる。標高地は西側が400フィート、東側が800フィート。(資料によっては最も涼しいのは太平洋沿岸に近くて 標高地が低い箇所。低いところで標高800フィート、この畑は海風、霧の強い影響を受ける。多くの畑が標高2000フィートにあるという。)家族経営の小 規模なワイナリーがほとんどだ。栽培生産している主なブドウ品種はシャルドネとピノ・ノワールが多いというのも当然。カベルネ・ソーヴィニヨンやシラーは 東側の高地で栽培されている。ご存知のようにその代表的なワインとワイナリーはリッジだ。この地区は山地であること、土壌が痩せていること、海に近いこと が特徴だから、カベルネ・ソーヴィニヨンを栽培できる畑は霧の上に位置する畑で、比較的海から離れている場所でなければ栽培は難しい。そのために今回もカ ベルネ・ソーヴィニヨンが出されていたのは2社ほど、それからシラーが出ていたのも東サイドのワイナリーでほとんどが軽めでややシンプルだった。
シャルドネは軽やかなタイプのものが多く造られている。カリフォルニアの典型的なタイプとされているオーキー(オークの香りと味が利いた)でトロピカルフルー ツ、バタリー(バターっぽい風味)な味と香りが特色のシャルドネは少なかった。シトラス系のフルーツが特色のやや深みに欠けるけれど料理に合わせやすい飲 みやすい20‐25ドルほどのシャルドネが多かった。ピノ・ノワールもやはり軽やかなタイプのものが多い。ちょっと熟した味わいのピノ・ノワールは、この 地区のブドウではなくて、ロシアン・リバー・ヴァレーとかモントレーなど、他の地区のブドウを使用してワインを造っているワイナリーがほとんど。
この地区の山地を開発するだけの資本金が入ってこないこと、気候、痩せた土壌等からいっても栽培が難しいことが予測できる。あるワイナリーではかなり広い空 き地があるのに、そのままに放置してあった。これがソノマやナパなら絶対にブドウ畑になっているはず。でもこの地(もちろん厳選された土地でなければなら ないけれど)でじっくりと時間をかけてピノ・ノワールを栽培すると、ブルゴーニュタイプのピノノワールができる思う。長い目で注目したいワイナリーに巡り 会えたのも収穫。

ナパやソノマの裕福タイプに属するワイナリー
David Bruce Winery
ゲー トを通過して急勾配のブドウ畑を眺めながら、手入れの行き届いた庭を通って階段を上り、広いテイスティングルームに入るとモダンな服装をした裕福層の男女で一杯だった。ワイナリーによって客層がここまはっきりと分かれているのを見るのは初めてと変なところで感心。全体的にちょっと固めのワインがここのハウ ススタイルとみた。
2003年ピノ・ノワール(Santa Cruz Mountain)$35
かりん、ベリー、スパイスの香り。口当たりは比較的ふくよかでスパイス。ぱりっとした酸味が特色で山地のピノ・ノワールという感じ。エレガントさはない。まだ若い。もう少し待って飲みたい。

応援したいワイナリー
Pleasant Valley Vineyards
2003年シャルドネ(Brittany Morgan)$25
シトラス、ミネラル、程よいフルーツと酸味。小粒だけれ優しい。楽しく飲めるシャルドネ。
2004年ピノ・ノワール(Dylan David)$85
ス パイス、バラの花びら、ダークフルーツキャンディ、味わいはなめし皮、熟するちょっと前の少しすっぱみのあるスモモ。ちょっと硬さがあるブルゴーニュっぽ いピノ・ノワール。希少価値だから85ドルなのだろうが、その値段分の価値があるかどうかは別として、興味を持たせるピノ・ノワール。奥さんがブドウ栽 培、ご主人がワイン造りを担当する小さなワイナリー。樹齢が10年だということで、もう少し年数がたつと面白いかも。
McHenry Vineyard
ア メリカ杉の森の中にあるでこぼこ道に入ると、痩せたブドウ樹が植えられた畑が見えた。今にも崩壊しそうな年季の行った納屋から人の声が聞こえたので、テイスティングをしているセラーだとわかった。決して広くないセラーはカジュアル(スタイリッシュではなくて)な服装をした若者と人懐っこい中年カップルたち で賑わっていた。数個のオーク樽の上に1996年から2002年のピノ・ノワールが並べられていた。2000年までのヴィンテージはカーネロスのブドウを 使ったピノ・ノワールで、ワインの造り方に欠陥が感じられた。2001年と2002年は自社畑のピノ・ノワールを使って造られていて、特に2002年は誠 実そうで人のよさそうな造り手の人柄が出ているようなワインで応援したくなった。
2002年ピノ・ノワール(エステート)$19.50
色は薄め。なめし皮香。深みはないけれど美味しい、軽いタイプのピノ・ノワール。ラズベリーといい感じの酸味が残る。
Cinnabar
2004年シャルドネ$25
梨、シトラス、フルーティで酸味も十分。オーキーでないのが嬉しい。 「やっぱりいいね!」のワイナリー Ridge 2003年ジンファンデル(Buchingnani Ranch、アレキサンダー・ヴァレーにあるブドウ畑でATPというメンバーに出しているようだ)$26 滑らかな口当たりと程よいコショウ。思ったより軽めだけれど長いフィニッシュの理屈ぬきに美味しく良くできたワイン。
2003年シラー(Lytton Spring West、ATPにだしているワイン)$39
スパイス。滑らかな口当たり。長いフィニッシュ。深みと気品を備えたシラー。

Testarossa Vineyards
サンタ・クルズ・マウンテン地区のロス・ガトスという裕福な町の丘の上にある閉鎖されていた古いスパークリングワイン生産ワイナリー、Novitiateを買収。モントレー、サンタ・バーバラ、ソノマ・コーストのブドウを使っているので、純粋にサンタ・クルズ・マウンテンのワイナリーとは、まだ言えないけれど、いいワインを生産している。
2004年シャルドネ (Sleepy hollow Vineyard、モントレー・カウンティ)$39
ミネラル、フリンティ、オーク。程よいフルーツの味わいがありふくよか。長いフィニッシュ。辛口。
2004年Novitiate
ピノ・ノワール$19 スパイス、なめし皮、紅茶、チェリー、軽やかで美味しい。グッドヴァリュー。このワイナリーのセカンドワイン。ノヴィシェットと発音するのだそうだ。 Bonny Doon Vineyard オーナー、ランドール・グラム氏は奇抜なマーケティングのアイデアで話題になることが多いので、ワインから関心がはずれがちだった。実際に数種類のワインを飲んでみて、認識が変わった。手ごろな値段で、きちんと造られたワインを出しているからだ。10ド ル以下のワインだし、大手だから、ダイエットコークのような甘苦いワインを出していると独断し(独断はいけませんね。反省!)ていたけれど、実際はきちん と酸を利くかせて、甘さも抑えて出している(例外もあったけれど)。チョコレートで作られた小さなカップにラズベリーのリキュールを入れてデザートとして 最後に出すなど、楽しく飲ませるテイスティングルームだ。 2004年Pacific Rim Dry Riesling $9 フルーティでシンプル、飲みやすい。香りはリースリングよりシェニン・ブランに近い。シロップのようにこってりしていないのが嬉しい。 2003Le Cigare Volant$32 葉巻の香り。滑らかで軽やか。フルーティなのだけど甘すぎず、フレッシュな酸が十分。ヨーロッパ風なタッチのワイン。どてっとしてないのが嬉しい。