懐かしのGundlach Bundschu

懐かしのGundlach Bundschu

このワイナリー、Gundlach Bundschu(http://www.gunbun.com/)の発音は想像するのがちょっと難しい。みんなが呼んでる音をカタカナで書くとグンラック・バンチューと聞こえる。

ドイツ移民の2家族の名前をつけたもの。ソノマ・ヴァレーにある家族所有のワイナリーだ。今から20年以上前に、相棒の親友がこのワイナリーの醸造家責任者だったことから、雇ってもらって、カリフォルニアワインを身近に知ることができた思い出のワイナリー。カリフォルニアでの私の仕事を決定した。そしてずうっとワインについての情報を発信し続けている。

本当に久しぶりに立ち寄ってみた。

グンラック・バンチューは長い歴史(カリフォルニアでは)をもつワイナリーだ。ドイツ移民だったジェイコブ・グンラックが400エーカーの土地を買って、ラインファームと名づけたのが18583月。その年の7月にドイツへ戻って幼馴染のイヴァと結婚。ハネムーンでドイツとフランスを回って台木を買ってソノマへ帰って、ブドウを植えたという。初ヴィンテージは1861年。現在、ラインファームは320エーカーという広大なぶどう園になり、153年がたっている。

片方の家族はというと、ドイツからやってきたチャールズ・バンチューが1868年にワイナリー経営に参加。7年後にジェイコブの長女と結婚している。ジェイコブが76歳で死亡したときに、グンラック・バンチュー・ワイン・カンパニーと名づけた。

私が働いていたときはジム・バンチューが経営に当たっていたけれど、今は6代目のジェフ・バンチューの代になっている。カーヴェが掘られ、ピクニック設備も充実させて、歴史をバックにさりげなく近代化をして、訪問者フレンドリーのワイナリーになっていた。ミュージック好きのジェフはサンフランシスコのインディを招いて、毎年コンサートを開いている。

ワイナリーだった建物は1906年のサンフランシスコ地震で一部破壊されたけれど、修復されて、現在、テイスティングルームとして使われている。

テイスティングルームに歴史を偲ばせる写真やボトルが飾られている。歴史的由緒のあるワイナリーはいろいろとあるけれど、同じ家族が続けて経営しているワイナリーは少ない。例えばベリンジャーなどのように、古いワイナリーでも所有者が何度も代わっているのがほとんど。

月曜日の午後だというのに、テイスティングルームのカウンターは試飲者で一杯だった。フレンドリーで手際の良い男性がてきぱきと試飲者を裁いていくので気持ちがいい。

リムジンをチャーターしてやってきたグループもある。これはいいアイデアだと思う。7,8人で借りて割り勘にするとそれほど高くないだろうし、酔っぱらい運転で警察に捕まる心配もない。

大きな人工貯水湖と、その向こうに広がるブドウ畑を眺めながらピクニックを楽しんでいるグループが目に入った。気持ちがよさそう。この次はグループでピクニックにきたいな、と思わず独り言。

ワインの全体的なイメージが変わっていた。2010年と2011年という涼しいヴィンテージのせいもあると思うけれど、酸がパリッと利いた過熟味なしのスタイルになっている。ちなみにこのワイナリーのワインは自社畑、ラインファームのブドウから生産されている。

2012年ゲヴェルツトラミーナー($22.50

オレンジの花の香りがきれいに立ち上がってくる。甘味が強いのかなと一瞬思ったけれど、パリッとした酸味があって甘さは感じられない。オイリーな口当たりなのに、こってりしていない。この品種のワインにしたら決して安くないけれど、楽しく飲めるワイン。サンドイッチ持参で、池(人工貯水湖)を眺めながら、このワインを飲みながらピクニックランチがしたいな。友人が醸造責任者だった時代から、このワイナリーのゲヴェルツトラミーナーはきれいな香りが立ち上がっていた。

2011年シャルドネ($27

青リンゴ、レモンと火打石の香り。口当たりが滑らか。樽香の利いたこってりタイプではないシャルドネ。やはり酸がパリッと利いている。

2010年メルロー($30

カシス、ブラックベリー、ダークチョコレートの深い香り。口に含むと香りと同じ味わいがある。ここのメルローは昔から知る人ぞ知るワイン。お買い得。これがナパのワイナリーなら倍はすると思うよ。

2011年ジンファンデル、$45

ソノマ・ヴァレーのジンファンデルに共通している黒コショウの香りとべりーの香りがする。ボディが中位のきれいなジンファンデル。アルコール度が高くて、よく熟したブドウから造ったジンファンデルではないタイプを好む人にぴったり。このワイナリーの旗印のワインなのだろう。ジンファンデルにしては高い。

このワイナリーでカリフォルニアワインと出会って、ワイン情報を発信することを一生の仕事とした。そのころ、ゲヴェルツトラミーナーとジンファンデルとメルローが好きだったのを記憶している。そして今とは違って、歯がぎしぎしするようなオークの味わいが好きだった。

私の味覚も変わった。そしてワイナリーの代もスタイルも変わった。スペクテーター誌やワインアドヴォケートのレーダーからはずれているけれど、きちんとした納得のいくワインを造り続けている。それはここだけではなくて、他にもそういうワイナリーが多く存在する。

きちんと経営している6代目ジェフ・バンチューに敬意を表したい。