ブドウのオーガニック栽培
春先にワインカントリーのブドウ畑が並ぶ道を車で走っていると、オーガニック栽培のブドウ畑と通常の栽培方法でブドウを育てている畑の違いがはっきりとわかる。
オーガニックの畑は一見雑草のように見える下草がぼうぼうと生えていて、なんだか見捨てられたブドウ畑みたいだ。通常栽培の畑は草ひとつなく、土が見えてきれい。土が見えるのは除草剤をまいて植物を枯らしているからだ。草ぼうぼうの畑は栽培農家が怠け者で手を抜いているわけではない。
オーガニック栽培として認定されている畑は、ブドウを支える棒も含めて化学物質の使用が法律で厳しくコントロールされている。
オーガニック栽培は、より健康なブドウ樹を育てることに集中。健康なブドウ樹は害虫に対する抵抗力があって、自然に栄養分を吸収することが出来るからだ。人間も同じで健康だと、食べ物の栄養分を効率よく吸収できるし、ちょっとくらいの風邪なら体力で吹き飛ばすことができる。
健康なブドウ樹を育てるためには、まず健康な土壌にすることが必要だ。それから生態系のバランスをキープすること。一方通常の栽培法はブドウ樹に害を与えかねないものを殺虫剤で殺してブドウを保護する。
生きている土
自然の土というものは生きている。健康な土は大切なブドウ樹に栄養分を与える。
下草を耕してオーガニックの堆肥を与える。通常の栽培法だとブドウ樹に栄養分を直接散布するから、土が健康であることはそれほど重要ではない。
多様な棲息物
通常の栽培によるブドウ畑はいってみれば単一文化だ。ひとつの農作物、ブドウ樹だけが畑に存在する。棲息物は殺されてしまうか、棲息物が住み着けない環境なのでいなくなってしまう。
オーガニック栽培ではブドウ畑がより自然な環境になるので、ブドウ樹とともに他の植物や鳥、小動物が生息している。そして生存している棲息物同士が格闘する。例えば鷹やフクロウがモグラやねずみを漁るし、益虫が害虫を食べてくれる。オーガニック栽培の畑にはフクロウや鷹が住む箱を設置したり、益虫が好む下草を植えて、益虫を呼び寄せている。
単一の農作物だとたった一種類の害虫や病害で短期間に破壊されてしまう。生態系がうまく機能している畑だと、新しい害虫がやってくるのは困難だし、害虫がブドウ畑を完全に制覇するのは困難だ。
下草
ブドウ樹とブドウ樹の畝に植えられている植物を指していて、下草は次の3点で役に立つ。
益虫が住み着く
ブドウ樹に害を与える害虫をおびき寄せて、ブドウ樹を守る
窒素を取り入れる(マメ科の植物が多く植えられている)
下草は耕して土を豊かにするために土と混ぜることもある。下草を刈るけれど、耕さない畑も見かける。