オーガニック栽培
オーガニック栽培が生まれた背景:
1940年代から70年代にかけてGreen Revolution(グリーン革命?)と呼ばれる動きが活発になった。人口が急増した国の食料供給を十分に生産するための解決策として注目されたもので、グリーン革命の父と称されるNorman Borlaugが高収穫量を得られる穀物の品種改良、灌漑設備の改良、農作業の機械化、交配した種、化学肥料と殺虫剤を農家に供給した。農産業の近代化で、虫食いで穴だらけの野菜や果物が消えて、大きくてきれいな野菜や果物が、そこそこの値段で、お店にたくさん並んだのだから、画期的だと思ったはず。私も幼心に「いいね、タネのあたりから虫が出てくるかなあ何て心配しなくてもいいのだから」とほっとした記憶がある。
現在、グリーン革命と聞くと、新エネルギー源開発、排気ガスの量を少なくするといった流れを想像するけれど、この当時はそういうコンセプトで、グリーン革命と呼ばれたわけではなかったんだよね。
1968年に アメリカの国際開発機構のディレクターであった William Gaudが
「農産業の世界において新しい革命が起こっている。これは暴力でなされたRed Revolution(赤い革命)と呼ばれたソ連の革命や White Revolution(白い革命)と呼ばれたイランの革命でもない。私はこれをグリーン革命と呼ぶ」と宣言し、初めてグリーン革命という言葉が使われたそうだ。
そして高生産量、低価格の農産物が人々に共有できる農業、栽培方法が一般化されていった。
やがてこの栽培方法は長期的には問題があると憂慮する人々が出てきた。農産物は低価格で供給されるけれど、生態系にとって長期的には割があわないと指摘。石炭や石油の使用による空気汚染、合成肥料使用による土の変質、合成肥料と殺虫剤使用による生息地の破壊、空気と地下水の汚染が起きていった。また大規模の農業会社経営に太刀打ちできず小規模の農家が減っていった。
やがて先に述べた栽培法に代わって、合成肥料、殺虫剤、除草剤を使わないオーガニック栽培が普及し始めた。でもこの栽培方法に付加価値を加えて価格を高くすることが出来ると考える人たちが出てきて、マーケティングとして利用されてオーガニック栽培の農作物が通常栽培の作物より高く売られ始めたのだ。
娘が生まれた1984年ころ、ソノマの町にビタミン剤や栄養補助食品を売るお店が出来て、そこでオーガニック栽培の野菜も売られ始めた。鮮度が落ちた(まだオーガニック栽培の農産物用の流通機関が発達していなかったのだろう)形のゆがんだ果物や、生育不良のように見えるニンジンなどの野菜が、すごく高い値段で並んでいた。
それに自己流のオーガニック栽培の解釈で栽培された農産物も市場に出てきた。今でもNatural Farming と記載したものが良く見られる。これはオーガニック栽培ではないのだけれど、一見、オーガニックかもと思わせる。
こういった状況に危機感を感じ始めたオーガニック栽培のグループが連邦政府に働きかけ米国農務省が全米オーガニック・プログラムを作成した。その中にオーガニック認定が規定され、オーガニック栽培が成分化された。
通常栽培との違いが明確化され、全米オーガニック・プログラムに基づいて米国農務省が規制している。オーガニック認定はブドウを含む農作物だけではなくオーガニック食品についても規制するもの。
国によって認定基準が異なるし、米国内でのオーガニックワインの表示は複雑であることを数回にわたって掲載しました。
(続く)